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借地上の建物と通謀虚偽表示(最高裁平成12年12月19日)|弁護士Q&A

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作成日:
コンテンツ番号:923

借地上の建物と通謀虚偽表示(最高裁平成12年12月19日)

Aは本件土地を賃借していたが、前妻との間の子であるBの名義で建築確認をし、Bの名義で固定資産税を支払い、課税台帳への登録を承認していました。 その後、Aの知らない間にB名義の所有権保存登記がされ、BからCへ売買を原因とする所有権移転登記がされ、Dを抵当権者とする抵当権設定契約がされました。 Dが抵当権を実行し、Yが本件建物を競落しました。 他方、Aは妻である Xに対し、本件土地の借地権を贈与しました。 Xは、本件土地の賃借権に基づき、本件土地の所有者の所有権に基づく返還請求権を代位行使して、Yに対し、本件建物収去土地明け渡し等を求めましたという事例です。

借地上の建物と通謀虚偽表示の図

判決

判例要旨(まとめ)「不動産競売手続きにおいて建物の競落人が民法94条2項、110条の法意により建物所有権を取得しても、敷地の賃借権自体についても上記の法意により保護されるなどの事情のない限りその敷地の賃借権を取得しない。」とし、本件ではYにそのような事情が無いと判断しています。

一つずつ詳しく見ていきましょう。

民法94条2項について

民法94条1項:「相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。」

同条2項:「前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。」

簡単に言うと嘘の外観を信じた善意の第三者は保護されなければならないという規定です。この規定は、実は直接適用されるよりも類推して適用されることが多くあります。特に不動産の登記関係で上記規定は良く出てきます。94条2項は、広く取引の安全を図るという場面で使われ、重要な機能を果たしています。

民法110条

次に110条について見てみましょう。

民法110条:「前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。」
※民法109条:「第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。」

とあります。本条における正当な理由とは、代理権の有無につき「善意・無過失」のことを指します。

法意によってとは

判例では、「…民法 94条2項、110条の法意により建物所有権を取得しても、敷地の賃借権自体についても上記の法意により保護されるなどの事情のない限り…」

ここでは適用でもなければ、類推適用でもありません。「法意により」となっているのは条文を適用や類推することはできないが、その条文(法律)の意味(例、取引の安全が趣旨)を参照したい場合に使われます。
すなわち、「善意の第三者を保護し、取引の安全をはかる110条や94条2項の法律の意味に照らし」というような意味です。

その他、本件について等

本件のように、土地賃借人が、土地上に所有する建物について抵当権を設定した場合には、原則として、抵当権の効力は当該土地の賃借権に及び、右建物の買受人との関係においては、右建物の所有権とともに土地の賃借権も買受人に移転するものと解されています(最判:昭和40年5月4日判決)。

しかしながら、建物について抵当権を設定した者が、その敷地の賃借権を有しない場合には、この抵当権の効力が敷地の賃借権に及ぶと解する理由はなく、右建物の買受人は、民法 94条 2項、110条の法意により建物の所有権を取得するとなるときでも、敷地の賃借権自体についても右の法意により保護されるなどの事情がない限り建物の所有権とともに敷地の賃借権を取得するものではないというべきである、としています。

借地権は抵当権の目的物になりますが、抵当権設定者が土地を利用する権利が無い場合には、当然、借地権に抵当権農耕力は及びません。

この記事の監修者

塩谷 昌則シオタニ マサノリ

弁護士

弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。借地非訟、建物明渡、賃料増額請求など借地権や底地権をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。

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