地主が勝手に借地権の贈与契約を締結していた事例|弁護士Q&A
地主が勝手に借地権の贈与契約を締結していた事例
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ご相談内容
Aは地主Bと建物所有目的で甲土地を借りる契約を結びました。
その際、BはAにこんなことを申し出ました。
「あなた(A)は高齢で、亡くなった後親族たちに家を管理させるのは迷惑になる。Aが亡くなった後は私(B)が管理をしてあげます。もちろん、亡くなるまでは今の土地を利用してください。亡くなったら、私(B)に借地権を贈与するという特約(本件特約)を結んでおくだけで大丈夫です。」
AはBの言う通り、本件特約を結びました。
その後、Aは亡くなり、Aの子CDが相続を、と思ったところ、上記本件特約の存在が明らかになりました。
CDは許せません。Bに抗議に行きましたが、上記特約を根拠につき返されてしまいました。
どうにかならないものでしょうか。
ご相談のポイント
- 死因贈与とは
- 死因贈与の無効・取消を主張できるか
- 意思疎通が重要
◆死因贈与とは
今回、AとBとの間で締結された特約は、Aが亡くなった時点で借地権をBに贈与する=Aが死亡した時点で贈与の効力が発生する、というものです。このような合意を「死因贈与」と呼びます(民法554条)。
亡くなった時点で亡くなった人の財産を第三者に譲る制度としては「遺贈」がありますが、遺贈が遺言者が遺言書の中で行う一方的な意思表示(単独行為)であるのに対し、死因贈与は贈与者と受贈者との間の契約行為であるという違いがあります。
◆死因贈与の無効・取消を主張できるか
まず、死因贈与の時点で、Aが認知症等で意思判断能力を欠いている状態であった場合は、契約は無効になります(民法3条の2)。
また、BからAに対する詐欺あるいは強迫行為があった場合(民法96条1項)や、Aが錯誤に陥っていた場合(民法95条1項)には、契約は取消の対象となります。
あるいは、信義則違反(民法1条2項)、権利濫用(民法1条3項)、公序良俗違反(民法90条)といった一般条項を根拠に、契約の有効性を争う方法も考えられます。
しかし、いずれについても、直接の当事者であるAが亡くなってしまった後で、当時の経緯を知らない相続人であるC・Dにおいて必要な要件事実を主張・立証することは、非常に困難な作業であると言わざるを得ません。
◆意思疎通が重要
あくまでご相談内容からの推測になってしまいますが、今回、Bの思惑通りに事が進んでしまった要因は、AとC・Dとの親子間における日常の交流が薄くなっていて、今回の死因贈与の件についても、C・Dが生前のAから直接話を聞く機会が全くなかった、AもまたC・Dに死因贈与の件を一度も相談・報告をしようとしなかったためではないかと思われます。
今回のようなトラブルを未然に防ぐためには、家族間での日常的な意思疎通が重要となります。
まとめ
死因贈与は、贈与者が亡くなった時点で受贈者への贈与の効力が発生する、贈与者・受贈者間の契約です。
死因贈与の契約者本人である贈与者が亡くなった後で、贈与者の相続人が死因贈与の無効・取消を争う場合、主張・立証のハードルが非常に高いです。
死因贈与をめぐるトラブルを未然に防ぐには、贈与者の生前における贈与者との日常的な意思疎通が重要となります。
この記事の監修者
社内弁護士
当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。