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借地契約の解約と解除の違い

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コンテンツ番号:13934

借地契約の解約と解除の違いとは?

「地主から借地契約解除の連絡が来てしまった…」

「どんな条件で契約解除されるの?」

借地契約ではさまざまな取り決めがされますが、借地人も世代交代してしまえば契約内容を把握していない場合もあります。

意図せず契約違反をしてしまい、地主から解除を告げられた場合、どうしたらよいのでしょうか。

この記事では借地契約について、契約の種類や旧法・新法の違いちがい、地主が契約を解除をする場合の解除条件や、解除までの流れについて解説しています。

借地人は知っておくべき内容ですので、ぜひ最後までお読みいただき、参考にしてください。

<この記事でわかること>

  • 地主が契約を解除できる条件
  • 契約解除までの流れ
  • 契約解除を巡って地主とトラブルになった際の対処法

1. 借地契約の種類

土地を借りる場合、貸主(地主)と借主(借地人)は賃貸借契約(借地契約)を締結し、借地人は地代を支払いその土地に建物を建てる権利(借地権)を得ます。

借地権は強力な権利を有する地上権と、譲渡や転貸などには地主の承諾が必要な賃借権に分けられますが、この記事では賃借権を「借地権」として解説します。

借地権を定めた法令は、大正時代に制定された旧法(借地法)と、平成4年に制定された新法(借地借家法)です。借地権は、権利を所有した時期によって適用される法令が異なるのです。

まず、旧法借地権と新法借地権、それぞれの特徴や違いについて確認していきましょう。

1-1 旧法借地権

借地法は1921年(大正10年)4月に制定された土地の賃貸借契約を定めた法令です。同時に借家法も制定されており、当時は借地法・借家法の2本立てでした。

大正10年4月から新法借地権が定められる1992年(平成4年)8月1日より前までに得た借地権は、旧法が適用されています。

旧法借地権は、地主に比べ立場や経済面で不利だった借地人を手厚く保護する内容です。旧法での借地人の有利さは「貸したら二度とかえってこない」と表現されるほどでした。

旧法借地権の存続期間はコンクリート造などの強固な建物で30年以上、木造で20年以上です。

新法が成立してから30年以上が経過しているため、旧法での借地権は少ないと思われるかもしれません。しかし、現在も借地権の多くは旧法による借地権です。

地主から借地人への立ち退き請求や更新拒絶は、簡単に進められる問題ではありません。また土地賃貸借契約の更新時に新法への切り替え義務はなく、借地人の意思で更新され続けるため、現在も旧法での借地権を有する借地人が多いのです。

今は所有権の売買が一般的になり、新たに新規で締結される借地契約の数がそう多くはないのも、旧法での借地権が多い理由の一つです。

1-2 新法借地権

旧法はあまりに借地人に有利でした。貸したが最後土地が返ってこないとなると、当然地主は土地を貸し渋ります。そのような状況が土地の利活用の妨げになったため、地主側に配慮した新法・借地借家法が1992年(平成4年)8月より施行されました。

旧法と新法の大きな違いは定期借地権の新設です。

定期借地権は3種類あり、いずれも一定期間のみ土地を貸す借地契約です。一般定期借地権であれば、50年以上の存続期間で更新はなく土地は返されるなど、定期借地権は“存続期間の満了で借地権もなくなる”のが前提の借地権です。

また地主が借地権の更新を拒絶したり、立ち退きを求めたりするための「正当事由が明示」されています。

旧法では「どのような正当事由があれば借地権が契約終了できるのか」が定義されておらず、貸したら戻ってこない状況の原因となっていました。新法では地主自身が家を建てて住む強い必要性があるなどの正当事由で、立退料を支払えば契約解除も可能となりました。

このように、新法は旧法に比べ地主に有利となっています。

存続期間の違いについては、次に解説します。

1-3 借地権の存続期間

旧法と新法の存続期間の違いを下表で確認しましょう。

存続期間
旧法借地権新法借地権
構造初回2回目以降初回2回目3回目以降
木造20年以上30年以上20年以上10年以上
木造
※期間の定めがないもの
30年20年
鉄骨造・鉄筋コンクリート造30年以上
鉄骨造・鉄筋コンクリート造
※期間の定めのないもの
60年30年

旧法・新法ともに、原則として存続期間中の中途解約はできません。借地人にとって借地は、そこに住んでいるにしても、事業を行っているにしても生活基盤といえます。

また、地主にとっても地代が定期収入となっています。これらが突然失われるのは、どちらにとっても不利益なため、中途解約は原則認められていません。

ただし、借地契約を締結する際にあらかじめ中途解約の条項を盛り込んでおけば可能です。

借地権の解約については、以下の記事でも解説していますので参考にしてください。

2. 地主が借地契約が解除できる条件

原則として借地契約の存続期間中の解約はできず、更新時についても基本的に地主側からの更新の拒絶は実情としては難しいと言えます。しかし、借地人が借地契約に違反してしまい、借地契約が解除されるケースもあります。

それでは、地主からの借地契約の解除条件を確認していきましょう。

最初に「解除」と「解約」のちがいについて解説します。

2-1 解除と解約のちがい

解除と解約は法令用語で、どちらも契約関係を解消する点では違いはありません。しかし法的な効力については、意味が異なります。

契約違反などに加えて、地主と借地人の信頼関係の破壊があった場合に認められる強制的な契約破棄が解除です。解除には、解除しようとする側に「解除権」が必要になります。(解除権については第3章「催告解除の場合」で解説します)

解除では原則的に、契約関係を解消するまでにやりとりしたものを返還(原状回復)しなければなりません。しかし賃貸借契約(借地契約)など長期に渡る契約では、地代などを遡って精算するのは現実的ではないため認められていません。

よくあるケースで例えると、借地契約を契約違反によって解除する、もしくは契約違反などはないが、一方の都合で解約する場合がある、となります。

これまで説明したとおり、旧法借地権の解約は正当事由の定義がなく地主側から行うのは困難です。しかし、条件によっては解除が可能になります。

2-2 地主が借地契約を解除できる条件

地主が借地契約を解除するには、解除に値するだけの条件が必要です。借地契約は契約違反があったとしても、それだけで解除はできません。地主と借地人の信頼関係が破壊されたと認められる必要があります。

信頼関係が破壊したと判断される可能性のある解除条件を、一つずつ確認していきましょう。

2-2-1 地代の滞納

地代の滞納は借地契約の解除になる可能性があります。1ヶ月滞納したからといって、即座に解除にはなりません。目安としては、3~6ヶ月以上滞納された場合に解除になる可能性が高くなります。

旧法借地権が借地人に有利と言っても、借地権は地代の支払いで維持されています。万一、地代の支払いが遅れる場合は、地主に一報をいれ事情を説明しておきましょう。

 

2-2-2 借地権の無断譲渡・転貸

地主に無断で借地権を譲渡したり、また貸し(転貸)したりすると、重大な契約違反として解除に至る場合があります。

注意すべきは、建物は借地人が所有しているので、相続による名義変更や建物の貸し出し(貸家)に地主の承諾は不要とされている点です。しかし実際に建物の所有名義を相続発生前に親族などに移転したり、第三者に名義変更を行うと、借地権の移転となり無断譲渡になってしまうのです。

譲渡した相手が親族で、家業を引き継ぐなどのケースでは解除が認められない事例もありますが、裁判に至っています。信頼関係の維持には、承諾が不要の建物の転貸などであっても、地主に一報を入れるのが安心です。

2-2-3 土地の用法違反

居住用の用途として建てた建物で販売店などを経営している場合、土地の用途違反として解除になる場合があるでしょう。

自宅の一部のみを利用したハンドメイド作品の販売や、学習塾の開設など、居住がメインの場合は解除を回避できるケースもあります。地主に一報をいれておくだけで裁判沙汰にならずにすむ場合もあるため、報告は大切です。

2-2-4 増改築禁止の特約違反

借地契約には建物の増改築禁止の特約がある場合が多く、大規模な増改築やリフォームは契約違反となり、解除につながってしまいます。

建物が借地人の所有であっても増改築禁止を明記するのは、建物の寿命が借地権の存続期間に関わるためです。借地人が所有する建物であっても、建物に手を入れる場合は地主の承諾を得ておきましょう。逆に建物の寿命に影響がない程度の軽微なリフォームの場合は、地主の承諾は不要です。

3. 借地契約が解除されるまでの流れ

それでは、実際に借地契約が解除される場合、どのような流れで手続きが進むのか確認していきましょう。

まず、借地契約の解除の手続きは以下の2種類があります。

  • 催告解除
  • 無催告解除

催告解除とは、契約違反に該当する状況に対して、一定の期間内での改善を促したのちに行う解除の手続きです。

次に無催告解除は、特約として契約書に明記されている場合などに催告の手続きを行わずに契約を解除する手続きです。

それぞれ、詳しく解説します。

3-1  催告解除の場合

借地契約を解除する場合、原則は催告解除となります。(民法541条)

催告とは、借地人に対して、契約違反をしている旨や、対応期限が記載された通知です。具体的な流れは以下の通りです。

1)催告通知

地代の滞納の場合、3~6ヶ月以上の滞納で催告解除になる可能性が高くなります。一般的には1ヶ月でも滞納すれば、借地人による債務不履行の状況が発生しますので、借地人には支払いを促す催告の連絡が地主から入るでしょう。※裁判例では6ヶ月以上の地代滞納が契約解除の判断基準とされています。

2)催告解除の通知

「催告解除の通知」が借地人に届きます。内容証明郵便など、配達記録される方法で届くのが一般的です。通知には、状況を改善するための猶予期間が記載されています。期間は地主側で設定できますが、地代の滞納であれば7~10日、もしくは2週間程度の一般的な猶予期間が設けられます。

なお、無断で借地権を譲渡したり転貸したりした場合は、催促解除の通知が届かない場合もあるので注意しましょう。

3)解除の通知

催告通知を送付し、設定した期間が過ぎても状況が改善されない場合、地主には借地人に対する「解除権」が発生します。地主は、借地人に借地契約を解除する連絡を入れます。

催告や解除の通知方法に決まりはありません。しかし、その後の裁判では解除が適正に行われたかが判断される場合があるため、一般的に通知は配達記録郵便で届きます。

4)土地の明け渡し

借地契約の解除後、契約終了に基づいて土地の明け渡しを求めます。借地人が立ち退きを拒否した場合には、土地明渡請求訴訟を行います。勝訴後、強制執行の手続きとなります。

3-2  無催告解除の場合

無催告解除は、一定の条件に該当する場合、催告を行わずに即座に借地契約を解除できます。無催告解除が有効になるのは、民法542条の規定に合致する場合です。

催告によらない解除

催告によらない解除

一 債務の全部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。

 民法542条

もしくは借地契約を締結した際の賃貸借契約書に「無催告解除特約」が明記されていれば、無催告解除が有効になるケースがあります。

手続きは催告解除に比べ、シンプルです。まず内容証明郵便により、借地人に無催告解除の意思を告げます。その際は、無催告解除ができる法的根拠が明示されます。

そののち、土地の明け渡しが求められるでしょう。借地人が拒否した場合は、訴訟や強制執行の手続きが取られます。

4. 借地契約の解除トラブルの対処法

地主から借地契約の解除を求められると、借地人は戸惑い、焦ってしまうでしょう。しかしこのような場合、放置するのが最も悪手です。催告・解除通知が届いているのであれば、提示されている期間までに対応が必要です。無催告通知であれば、事態は差し迫っていると言えます。

ここでは、借地契約の解除トラブルの対処法として、借地権に強い弁護士への相談について解説します。

4-1 借地権に強い弁護士に相談する

弁護士に相談するのはハードルが高く感じますが、地主と借地契約の解除でトラブルが起こっている場合は、借地権に強い弁護士へ対応を依頼しましょう。

借地権に強い弁護士は、民法・旧借地法・借地借家法などに詳しく、不動産トラブルの対応経験が豊富な弁護士です。法律は膨大にあるため、すべての弁護士が借地権に詳しいわけではなく、それぞれ得意分野が異なります。

弁護士事務所のホームページで実績を確認すれば、どの分野に強いのかがわかります。また可能であれば実際に相談をし、自身の現在の状況を相談してみましょう。似た事例の取り扱いがあれば、安心感につながるでしょう。

借地権に強い弁護士の探し方は、以下のページで細かく解説しています。ぜひ参考にしてください。

まとめ

借地権は、借地人に有利な旧法・借地法と、地主に有利な新法・借地借家法があります。借地権は存続期間内の中途解約は原則、許されていませんが、契約違反をすれば地主から契約解除される場合もあります。

賃貸借契約書の内容を完全に把握している方は少なく、思いがけずトラブルになる場合もあるでしょう。

また、借地権の主な解除条件は、以下の4つです。

  • 地代の滞納
  • 借地権を無断で譲渡・転貸
  • 土地を契約とは違う用途で使用
  • 無断で増改築

借地権の解除でトラブルになってしまったら、速やかに借地権に強い弁護士に対応を依頼しましょう。中央プロパティーには、借地権トラブルを数多く解決に導いてきた弁護士がいます。催告通知が届き時間がない状況でも柔軟に対応できますので、まずは一度ご相談ください。

この記事の監修者

塩谷 昌則シオタニ マサノリ

弁護士

弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。借地非訟、建物明渡、賃料増額請求など借地権や底地権をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。

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