借地権の売買契約書に特約を追加したい場合|弁護士Q&A
借地権の売買契約書に特約を追加したい場合
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売買契約書のひな型と異なる特約は自由に行うことができますか?
原則、できます。
契約自由の原則
当事者が契約をする際、その内容は自由に決められるという原則が存在します。それを契約自由の原則と言います。誰がどのようなものをいくらで、どのような方法で売却するのかは自由ということです。
そのため、原則として、売主と買主(当事者)の合意により、売買契約書のひな型と異なる特約をすることができます。しかし、あくまで原則です。いくら当事者の合意があるからと言って、無制限に許されるわけではありません。
民法896条:「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」
1. 公序良俗に反する場合
民法90条:「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」
とあります。いわゆる、公序良俗に反する場合はいくら当事者が合意しても無効ということになります。
例:覚せい剤の売買契約や殺人などの売買契約
2. 消費者契約法に反する場合
消費者契約法は、「事業者」と消費者が契約する場合に適用されます。消費者は事業者よりも弱い立場にあるため消費者を保護しようという法律です。
- 「事業者」と「消費者」が対象であり、個人同士では適用されません。
この法律では、事業者の賠償責任を全て免除するような合意は、無効とされています。
消費者契約法8条:「次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項…」
例:事業者の瑕疵担保責任や債務不履行責任全てを免除する旨の特約が契約書に規定。
3. 宅地建物取引業法(宅建業法)に反する
宅建業法では、宅建業者と非宅建業者が契約を締結する場合に、宅建業者に有利な一定の合意を無効としています。
宅建業法40条:「宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、民法 (明治二十九年法律第八十九号)第五百七十条 において準用する同法第五百六十六条第三項 に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条 に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
前項の規定に反する特約は、無効とする
簡単に言うと、瑕疵担保責任の責任期間を買主に不利になるよう期間を短くして契約を結んだ場合は無効になるということです。
4. 強行法規に反する場合
例えば、借地借家法ではその契約期間が法定されています。
借地借家法3条:「借地権の存続期間は、三十年とする。…」
同法8条:「この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする」
とあります。10年や20年での特約は原則として無効となるということです。このように当事者で任意に変更できない条項を「強行法規」といい、これに反するような特約は無効となります。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。地代滞納、建物明け渡しなど借地権・底地権の案件へ積極的に取り組む。主な著書に「一番安心できる遺言書の書き方・遺し方・相続の仕方」「遺言書作成遺言執行実務マニュアル」など。