地代の効果的な回収方法とは?|底地の売却・相続
地代の効果的な回収方法とは?
目次
借地人が地代を滞納しており、困っている地主さんもいらっしゃると思います。
地代を回収する方法としては、大きく3つがあげられます。
- 交渉
- 支払督促
- 裁判の提起
1. 交渉
借地人が地代を支払わない場合、まずは、支払ってもらえるよう催促することが考えられます。借地人に証拠書類(振込記録等)を提示し、交渉するとよいでしょう。
しかし、この方法で回収ができるのであれば苦労しません。
交渉をしてもなかなか地代を回収できない場合には、公的機関(裁判所)の力を借りて回収せざるを得ません。
2. 支払督促
民事訴訟法:382条
「金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求については、裁判所書記官は、債権者の申立てにより、支払督促を発することができる。」
地代の請求も「金銭の給付を目的とする請求」に当たるので、支払督促を利用することが出来ます。
仮執行の宣言を付した支払督促は、申立ての際に証拠を付ける必要がないため、比較的簡易、迅速、低額に取得することができます。また執行文を得ることなく強制執行をすることもできます。
- 裁判所は、債務者である借地人への確認なしで支払督促を借地人に送ります。送達から2週間以内に異議申立がなければ、支払督促は確定判決と同一の効力を有することになり、強制執行が可能となります。借地人2週間以内でなければ異議の申し立てができません。
3. 裁判の提起
支払い督促を発しても借地人が地代を支払ってくれないといった場合、裁判を提起する必要が出てきます。
裁判は、訴訟費用や弁護士費用という費用がかかるだけではなく、訴訟に要する時間も非常に長く、手間になってしまうためあまりおすすめはできません。
最終手段として考えておくべきです。
裁判になった場合の注意点
ここからは裁判になってしまった際の注意点について解説していきます。
1. 訴えの提起について
訴えを提起する裁判所は、地主の住所か借地人の住所(土地のある住所)の管轄裁判所、もしくは事前に合意の上で決められた裁判所(専属的合意管轄)があればその裁判所である必要があります。
無関係な場所の裁判所で裁判を提起してしまうと訴えが無効になってしまう可能性があるため、注意が必要です。
2. 裁判の進め方について
裁判では証拠書類の作成方法や攻撃防御方法など、専門的な知識が非常に重要になります。民事裁判の場合は必ずしも弁護士を立てる必要はないのですが、やはり専門家への相談は欠かせません。裁判ではどのような証拠をどの程度用意すれば優位にことを進められるのかが非常に重要です。
仮に訴えを提起し敗訴してしまうようなことがあれば、時間が無駄になるばかりか、弁護士費用や訴訟費用も負担しなければなりません。状況が勝訴すべきようなものであったとしても、専門家のアドバイスの下、慎重に進めていく必要があります。
また訴訟手続をとった場合、証拠をそろえて提出する必要があるのはもちろんのこと、相手方を呼び出して反論がないかを確認しなければなりません。判決が出るまでにはある程度時間がかかるため、その間に借地人の財産が処分されてしまう可能性もあります。
そこで訴訟を提起する前に、借地人による財産の処分の効力を否定することができる仮差押えの手続をとっておくことが効果的です。
地代に関する弁護士費用の目安
裁判を提起する際に弁護士に相談、または依頼する場合、一般的に弁護士に支払う費用の種類としては、
- 着手金
- 報酬金
- 法律相談料
- 実費
- 日当
があります。
1. 着手金
着手金は弁護士に事件を依頼した段階で支払うものです。裁判に勝訴した場合はもちろん、敗訴になった場合も必要になってきます。
2. 報酬金
報酬金というのは勝訴に終わった場合に支払われる、弁護士への報酬です。ここでいう勝訴には一部勝訴の場合も含まれる点には注意が必要です。
3. 法律相談料
依頼者に対して行う法律相談の費用です。
4. 5. 実費、日当
実費と文字どおり事件処理のため実際に出費されるものです。印紙代や記録謄写費用、鑑定料などがその代表例です。出張等の移動が必要な場合については交通費、宿泊費、等の日当がかかります。訴訟の内容によってそれぞれの金額も異なるため、弁護士に依頼する際は総額でどの程度の費用が必要になるのかをよく確認するとよいでしょう。
参考:弁護士費用(報酬)とは(日本弁護士連合会ホームページ)
経済的利益 | 着手金 | 報奨金 | 合計 |
---|---|---|---|
10万円 | 10万円 | 1.6万円 | 11.6万円 |
30万円 | 10万円 | 4.8万円 | 14.8万円 |
50万円 | 10万円 | 8万円 | 18万円 |
70万円 | 10万円 | 11.2万円 | 21.2万円 |
100万円 | 10万円 | 16万円 | 26万円 |
150万円 | 10万円 | 24万円 | 36万円 |
借地契約解除の手順
さて地代を回収をしたいという一方で、地代を支払ってくれない借地人との契約を解除したい地主もいらっしゃると思います。しかしながら、借地契約を契約期間中に一方的に解除するのはそう簡単ではありません。これは借主側と貸主側のどちらの権利も保護するためです。
もちろん契約期間中でも絶対に契約解除ができないわけではありません。信頼関係が破綻したと認められるだけの事情があれば、契約期間中でも契約解除することは可能です。
「地代の不払い」であれば1度や2度の不払いでは信頼関係が破綻したとまでは言えないため、少なくとも半年以上の滞納が必要になります。
催告を内容証明郵便で行い条件が整ったら、解除通告を地主側から借地人側に送ります。これらの手続きには専門的な知識が必要なので、弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。
なお借地契約が途中で終了した場合には、借地人側は建物を取り壊して、更地にした土地を地主に返還する必要があります。
期間満了以外の途中解約や債務不履行に基づく解除の場合、借地人に建物買取請求権が発生しません。
売却したい底地に地代の滞納がある場合、そもそも底地を処分することはできるのでしょうか。
処分自体は可能ですが、買い取ってくれる人はなかなかいません。底地を買う人の多くは投資家です。地代滞納がある場合(地代を滞納するような借地人の場合)は底地を買うメリットがありません。滞納額が莫大な場合は、借地契約を解除し、借地契約がない通常の更地として売る方がよいでしょう。
借地権者の地代滞納を防ぐためには
地代滞納を防ぐためには、借地人とのコミュニケーションをとることが大切です。些細なコミュニケーションにより良好な関係が築ける可能性は格段に高まります。
また借地契約をする際、その契約書を公正証書にしておき、その契約条項の中に「地代支払いの履行を怠った場合は、直ちに強制執行を行う。」などの旨を記載しておけば、裁判等の手続をしなくても強制執行をすることが可能となります。
- 公正証書とは法律の専門家である公証人が公証人法・民法などの法律に従って作成する公文書のことで、高い証明力を持ちます。金銭の支払を内容とする契約の場合は、公正証書を忘れずに作成しておくようにしましょう。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。地代滞納、建物明け渡しなど借地権・底地権の案件へ積極的に取り組む。主な著書に「一番安心できる遺言書の書き方・遺し方・相続の仕方」「遺言書作成遺言執行実務マニュアル」など。