第三者からの建物買取請求権|底地の売却・相続
第三者からの建物買取請求権
地主の承諾なく、借地人が借地権(賃借権)と借地上の建物を第三者に譲渡したため、借地契約を解除したところ、その第三者から、借地上の建物を買い取るよう請求されました。建物を買い取る義務はあるのですか?(第三者からの建物買取請求)
原則あります。
無断転貸・譲渡の際の原則論
賃借人が賃貸人(地主)に無断で第三者に転貸(また貸し)・譲渡した場合には、その第三者は特段の事情が無い限り原則として地主に対抗することができません。
民法612条1項:「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」
同条2項:「賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。」
とあります。
それでは、無断転貸譲渡をされてしまった、その第三者は建物を取り壊し出て行かなければならないのでしょうか。
借地借家法の規定
借地借家法14条:「第三者が賃借権の目的である土地の上の建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を取得した場合において、借地権設定者が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、その第三者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。」
とあります。
第三者の建物買取請求権といいます。
地主さんからすると、借地権の無断譲渡に関与した第三者を過剰に保護しすぎでは?と疑問に持つと思います。
なぜなら、不動産は価値が高く、取り壊してしまうのは社会経済上妥当ではないという価値判断が根底にあるからです。
利用可能な建物をできるだけ存続させるべきだということです。
また高裁判決ではありますがその中で、「…建物買取請求権制度の趣旨、すなわち賃貸人に対する承諾の間接的強制、投下資本の回収を図るなどといつたこの制度の認められている趣旨から考えると…」と間接的に賃貸人に対して転貸の承諾を促すような意味もあるとしています。
地主が第三者の買取請求権を行使されないようにするには
まず、最初の賃貸借契約締結時に特約、つまり契約書に「建物買取請求権は認めない」と書いておいておけばいいと思う地主さんもいるかと思いますが、実はこのような特約は当事者が合意しても無効となります(借地借家法16条:強行法規性)。
借地借家法16条:「第十条、第十三条及び第十四条の規定に反する特約で借地権者又は転借地権者に不利なものは、無効とする。」
そこで「無断譲渡」がなされてことが分かったら直ちに「借地権の無断譲渡により賃貸借契約を解除する」のような通知を出すことです。
民法の規定上解除の通知は一歩的意思表示で足りる形成権とされているため、直ちに解除されます。
これにより、賃貸借契約は終了します。
そうすると、この解除通知以降は賃貸人(地主)賃借人(借地人)ではなくなります。
賃貸人と賃借人の関係がなくなるため、原則借地借家法の適用がなくなり、譲り受けた第三者は「建物買取請求権を行使できないと考えることができそうです。
これについては明確な解釈が出ていないのが現状です。
なお、可能性が無いわけではないので、無断転貸譲渡が発覚した際、後に問題となった際に上記主張ができるようにしておくためにも直ちに解除通知を出しておくことを推奨いたします。
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この記事の監修者
弁護士
弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。借地非訟、建物明渡、賃料増額請求など借地権や底地権をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。