連帯債務者の一人についての法律行為の相対効・絶対効基礎知識
連帯債務者の一人についての法律行為の相対効・絶対効
これは連帯債務者がいる場合、一人の連帯債務者に一定の事由があった場合に他の連帯債務者にはどのように影響を及ぼすのかという問題です。
例)AはBCDに900万円を連帯して貸し付けていました(負担部分はそれぞれ300万円)。
原則として下記の事由以外は他の連帯債務者には影響を及ぼしません。
相対的効力の原則
民法440条:「…連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。」
下記の6つについては、他の連帯債務者に対しても効力が及びます。(絶対効)共通点として債務が減少する点があります。それぞれ見ていきましょう。
1. 履行の請求
(連帯債務者の一人に対する履行の請求)
民法434条:「連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる。」
連帯債務者の一人に対して請求すると、全員に対して請求したのと同一の効果が生じます。この請求は裁判外の請求でも、裁判上の請求でもどちらでもよいとされています。
例)AはBCDに900万円を連帯して貸し付けていました(負担部分はそれぞれ300万円)。
- AはBに請求しようと、C、Dに請求しようと、誰か一人に請求すれば、全員に請求したとされます。
2. 更改
(連帯債務者の一人との間の更改)
民法435条:「連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。」
- 更改とは、1.(契約)当事者が、2.(旧)債務の要素を変更する契約、であり、(旧債務は)更改によって消滅します。
連帯債務者の一人と債権者との間に公開が行われた時は他の債務者は債務を免れます。
3. 相殺
(連帯債務者の一人による相殺等)
民法436条1項:「連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。」
同条2項:「前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者が相殺を援用することができる。」
連帯債務者の一人がする相殺も債務者の出捐を伴い、債権者に実質的な利益を与えているため、他の連帯債務者に対しても効力が及びます。さらに、2項にあるように、連帯債務者の一人が債権者に対して反対債権を有している場合にその者が相殺を援用しないときは他の連帯債務者はその債務者の負担部分につき相殺権を援用できます。
AはBCDに900万円を連帯して貸し付けていました(負担部分はそれぞれ300万円)。BはAに対して300万円の債権(反対債権)を有していました。
- BがAに対する300万円の債権で相殺すると、CDにもその影響が及ぶということです。
- また436条2項にあるように、Bが相殺権を行使しない場合CやDも相殺を援用することができます。なお、自己の負担部分についてのみですので、CDの負担部分が100万円ずつで、Bが700万円の場合にはCDが行使できるのは100万円までの額になります。
4. 免除
(連帯債務者の一人に対する免除)
民法437条:「連帯債務者の一人に対してした債務の免除は、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者の利益のためにも、その効力を生ずる。」
この規定も求償の循環を避けるためにあります。連帯債務者の一人が免除された場合は他の連帯債務者に対してその効力が及びます。
5. 混同
(連帯債務者の一人との間の混同)
民法438条:「連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。」
- 混同とは、債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する場合のこと。
連帯債務者の一人と債権者との間に混同が生ずると、その債務者は弁済したものとみなされ、他の債務者に対して求償権を取得します。
AはBCDに900万円を連帯して貸し付けていました(負担部分はそれぞれ300万円)。例えば、ABは親子で、Aが死亡し債権者としての地位をBが相続した場合、債権債務が同一人に帰属したことになり、消滅(混同)します。その上で、Bは債権者として連帯債務者CDに債権の請求をすることが可能です。
6. 時効の完成
(連帯債務者の一人についての時効の完成)
民法439条:「連帯債務者の一人のために時効が完成したときは、その連帯債務者の負担部分については、他の連帯債務者も、その義務を免れる。」
AはBCDに900万円を連帯して貸し付けていました(負担部分はそれぞれ300万円)。例えば、債務者Bの消滅時効が成立したとして、時効を援用したとします。そのような場合、Bの債務は消滅するので、他のCDに影響が及ぶことになります。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で借地非訟手続きや建物買取請求権の行使など今社会問題化しつつある借地権トラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。