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定期借地権付き建物を相続するとどうなる?気をつけたいこと

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コンテンツ番号:17034

定期借地権付き建物を相続するとどうなる?気をつけたいこと

借地権とは、他人の土地を借りて自分の建物を建てる権利のことです。借地人(土地を借りる人)は地主(土地を貸す人)に対して地代を支払う代わりに、その土地を使用する権利を得られるという仕組みになっています。したがって、借地権が存在する土地と建物は、所有者が別々に存在しています。

そして借地権にはいくつか種類があり、その1つが定期借地権です。定期借地権は一般的な普通借地権とは少し異なった特性があり、相続を検討する際にはその特性を理解することが求められます。

今回は、定期借地権付き建物が相続の対象に含まれている人向けに、定期借地権について解説します。

定期借地権の基礎知識

相続のことを説明する前に、まずは定期借地権について解説します。定期借地権は、一般的な普通借地権とは異なった特徴があります。

定期借地権とは

定期借地権の特徴は、土地を利用できる期間が定められている点です。契約で決めた利用期間が終了すると、土地は地主に返還される仕組みになっています。定期借地権は、契約期間が終了しても契約の延長、つまり更新はできません。契約満了を迎えた時点で、土地は必ず地主のもとに返還されることになります。

なお、普通借地権は契約が終了しても再度契約を結ぶことができます。建物が存在する限り所有を続けられるのが、普通借地権の特徴です。

定期借地権の種類

定期借地権にはいくつかの種類があり、代表的なものとして、一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権の3つがあります。

一般定期借地権

一般定期借地権とは、特定の期間だけ土地を借りて使用する権利で、期間が満了すると自動的に契約は更新されません。

そして、一般定期借地権の権利が持続する期間(存続期間)は50年以上と定められています。したがって契約で定めた50年以上の期間が満了した時点で、借地人は借りていた土地を更地に戻し、地主に返還します。存続期間の決まりは借地借家法で定められているため、50年より短い期間の契約は無効です。

事業用定期借地権

事業用定期借地権は、事業を行う目的で土地の権利を得る場合に適用される借地権です。主に商業施設や工場などを建てる目的で利用されます。存続期間は10年以上50年未満で定められ、期間が満了を迎えたら土地は地主に返還されます。

なお、事業用定期借地権は必ず公正証書を作成して契約を締結しなければならない決まりです。

建物譲渡特約付借地権

建物譲渡特約付借地権は、期間満了を迎えたら建物を地主が買い取るという決まりが定められた定期借地権です。したがって借地人は建物を取り壊して土地を更地にする必要がありません。解体する手間が省ける点は、借地人から見たメリットです。

期間満了になると地主は建物を譲り受けるので、土地と建物の所有者が同じになります。したがって、混同により結果的に借地権は消滅します。

建物譲渡特約付借地権の存続期間は30年以上です。

定期借地権付き建物を相続することになった場合の注意点

定期借地権付き建物の相続は、通常の不動産相続と異なる点が多く、注意が必要です。ここでは、定期借地権付き建物を相続する際に知っておきたいポイントを解説します。具体的には以下のような注意点があります。

  • 途中解約ができない
  • 売却が難しい
  • 建物の利用状況にかかわらず管理責任を負う

途中解約ができない

一度契約を結んだ定期借地権は、存続期間中に解約することができません。たとえ相続で権利を引き継いだとしても、この原則は変わりません。相続で引き継いだ後も、契約で定められた存続期間が終了するまで地代を支払うことになります。

売却が難しい

定期借地権付き建物は、売却が難しいとされています。その理由は、定期借地権には存続期間が設定されているからです。一般定期借地権と事業用定期借地権は存続期間が終了すると建物を取り壊し、土地を元の地主に返還しなければなりません。建物譲渡特約付借地権は更地にする必要はありませんが、建物は地主のものになります。

つまり、契約期間の満了を迎えるまでの限られた間しか土地や建物を利用できないため、買い手が集まりにくいのです。したがって、定期借地権付き建物はあまり市場に出回っていません。

そして、売却する際にはもう1つ大きな障壁があります。それは地主の承諾を得なければならないという点です。定期借地権付き建物を売却する際には、まず地主に対して売却の意向を報告し、承諾を取る必要があります。地主が承諾しない場合、売却はできません。加えて、売却の際は地主から必ず承諾料を求められます。

建物の利用状況にかかわらず管理責任を負う

相続で借地権付き建物を引き継ぐことになった場合、建物の管理責任を引き継ぐのも相続人です。相続した借地に建っている建物を実際には使用しない場合でも、その建物の管理責任が発生します。したがって、建物のメンテナンスや修繕、必要に応じた改修などを行う責任を持つことになります。税金の負担義務もあり放置することはできませんので、その点もしっかりと理解しておきましょう。

定期借地権付き建物を相続する流れ

定期借地権付き建物を相続する際には、いくつかのステップがあります。スムーズな相続手続きを進めるためには、それぞれの手順を理解しておくことが大切です。

Step1.遺産分割協議

定期借地権付き建物を相続する際、まずは遺産分割協議を行います。複数の相続人がいる場合に、対象となる遺産をどのように分けるか決める必要があるからです。

相続人全員の同意を得て、遺産の分割方法や財産の配分を決定しましょう。

遺産分割協議は、相続人全員が参加し、全員の合意をもって成立します。したがって、1人でも同意が得られなかった場合、その協議は認められません。

遺産分割協議が成立した後は、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には、協議の内容や各相続人が受け取る遺産の詳細を記載します。

Step2.地主への報告

続いて、地主への報告を行います。借地権の相続は法律上地主の承諾を必要としないものの、地主との良好な関係を維持するために、相続したことを報告するのが慣習です。

報告の際は、借地権を相続した旨を示す書面を送付し、直接面談を行って契約期間や地代の支払いについて再確認を行います。事務的な要項の確認が主な目的ですが、お互いの信頼関係を深める目的もあります。

ちなみに、法定相続人以外の第三者に借地権を遺贈する場合には、地主の承諾が必要です。この場合には、承諾料の支払いや契約内容の変更が発生することがあります。

Step3.建物の名義変更

相続によって不動産の所有者が変わったときは、登記上の所有者を変更する手続きを行う必要があります。ここでいう不動産には、借地権も含まれます。そのため、定期借地権付き建物を相続した場合には、速やかに名義変更の手続きを進めましょう。

相続登記の手続きは建物が建っている場所の所在地を管轄する法務局にて行います。法務局では必要な書類を提出し、所有者の変更を正式に登録します。これにより、公的に相続による権利の移転が認められるのです。

相続登記による名義変更の手続きは、準備しなければならない書類が多く、手間がかかります。そのため、自分で手続きをするのが難しい場合や時間がないときには、登記の専門家である司法書士に依頼することも多いです。

定期借地権付き建物の相続の際は専門家に相談しよう

今回は、相続の観点から定期借地権付き建物について解説しました。定期借地権は、途中解約が不可能な点や売却が難しい点など、普通借地権とは異なる特性を持っています。

そして相続する場合は定期借地権の特徴や契約内容を十分に理解した上で、遺産分割協議や名義変更の手続きを進めましょう。

定期借地権付き建物について不明点がある場合や相続の手続きをスムーズに進めたい方は、専門家に相談することをおすすめします。借地権の場合に限らず、相続は複雑な手続きがいくつもあるので、専門家の力を借りることをぜひ検討してみてください。

この記事の監修者

松原 昌洙マツバラ マサアキ

代表取締役 /
宅地建物取引士

CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。借地権を始めとした不動産トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。

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