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土地や遺産の所有権を巡るトラブルとは?具体例と回避する方法

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作成日:
コンテンツ番号:17023

土地や遺産の所有権を巡るトラブルとは?具体例と回避する方法

遺産の所有権問題は、相続や購入時に発生しやすく、多くの人が遭遇する可能性があります。特に土地のような不動産はきれいに分割することはほぼできないので、余計にトラブルに発展しやすいと言われています。

本記事では、所有権に関するトラブル例とその具体的な回避方法を紹介します。

そもそも所有権とは?

所有権は、対象物を自由に使用し、収益を得て処分できる権利のことです。不動産の所有者には所有権が与えられており、所有権は法令上の制限の範囲内で、公共の福祉に反しなければ自由に行使できます。

ただし、所有権を有する地主は土地に他人の権利(抵当権・借地権など)が付着している場合、所有権はいくつかの制限を受けます。一方借地人は土地の上に建っている建物の増改築が自由にできないなどの制約があります。

【補足】
抵当権とは、住宅ローンなどを借りる借主に対して、購入する土地や建物を担保とする権利のことです。何らかの理由でローンの返済ができなくなった際は金融機関が土地と建物を差し押えて強制競売にかけられます。

借地権とは、建物の所有を目的に土地を借りる権利のことです。借地権が設定されている場合、土地と建物の所有者が別になります。

不動産の所有権にまつわるトラブル

不動産の所有権を巡ってトラブルが生じることも少なくありません。こうしたトラブルは、不動産の所有者に多大なストレスもたらすほか、経済的損失を被る可能性もあります。不動産の所有権にまつわる代表的な3つのトラブルは以下の通りです。

  • 所有権移転登記のトラブル
  • 土地の瑕疵トラブル
  • 境界トラブル

所有権移転登記のトラブル

土地を購入して所有権移転登記をする際にトラブルが起きるケースがあります。具体的には、売主が同じ不動産を複数の人と契約して譲渡してしまったときです。こうしたトラブルは二重売買(譲渡)と呼ばれています。

土地の所有者の権利を主張できるのは先に所有権移転登記をした人です。後から登記をしようとした人は「代金は支払ったのに土地の所有権が得られない」という状況に陥ります。

このようなケースが起きた場合、買主は二重売買が発覚した後に土地代の返還を売主に要求することが可能です。

ただし、認められるのは土地代の返還のみで、場合によっては購入しようとした土地の所有権が得られないこともあります。

土地の瑕疵トラブル

土地の瑕疵トラブルとは、購入前に知らされていなかった土地の欠陥や制約事項が後から発見されることで発生するトラブルです。土地の売買契約を締結する過程で、売主が土地の重要事項や欠陥の有無を伝えていなかったために発生します。

例えば、地中に埋もれている廃棄物や、有害物質が含まれている土壌、法律による建築制限の有無が明らかになっているのに伝えなかったケースです。


このような瑕疵トラブルが明らかになった場合、買主は売主に対して代金減額や損害賠償請求を求める権利があります。この際、売主は契約不適合責任を負うことになります。

境界トラブル

境界トラブルは相続の時に起きるトラブルです。隣接する土地同士の境界が曖昧になっていることが原因で起きます。特に、樹木や塀などが境界線を越えてはみ出していると、隣人との揉めごとに発展することがあります。このようなトラブルは「境界紛争」とも呼ばれます。このとき、境界を越えている樹木や構造物を勝手に撤去や処分することは認められていません。

境界紛争が発生する原因は、主に隣接する土地の境が不明確な場合や、境界が登記されていないときに起こります。つまり、どこまでが自分の土地で、どこからが隣人の土地かがはっきりしないことが問題を引き起こしているのです。
このようなトラブルを避けるためには、土地の境界を明確にする必要があります。そのためには、土地家屋調査士に依頼して正確な測量を行い、隣地所有者と共に境界立ち会いをして合意する必要があります。隣地所有者の立ち会いのもとで境界を確定し、証拠となる境界確認書を作成します。

【補足】
令和5年4月1日から改正民法第233条(竹木の枝の切除及び根の切取り)が施行され、竹木の所有者に切除を求めても、越境した枝が切除されない場合や、竹木の所有者やその所在を調査してもわからない場合等には、越境された土地の所有者が自ら切り取ることが可能になりました。

所有権にまつわるトラブルの回避方法

土地などの不動産の所有権に関するトラブルの多くは、事前に適切な対応ができれば未然に防げるものもいくつかあります。ここでは、所有権にまつわるトラブルを回避するための具体的な方法について解説します。

決済手続きは慎重に行う

土地を売買する際は、自分が不利にならないように決済手続きを行うようにしましょう。例えば、売買契約書の内容に不利な条項が含まれていたり、書面に不明瞭な表現があったりした場合は要注意です。一度サインしてしまうと契約内容を認めたことになるからです。

したがって、決済手続きは慎重に行うために、契約書の特約などに著しく自分に不利な内容がないことを確認して、自分の不利益を避けるよう努めましょう。

また、所有権移転登記と売買代金の決済は同時に行うことを強くおすすめします。同時に行うと取引(同時履行)の透明性と安全性を確保でき、トラブルを防げるからです。

購入する土地や物件に疑問点を残さないようにする

土地や物件の購入の際は、すべての疑問点を解消するようにします。購入後に発生するトラブルを未然に防ぐためには、事前の確認が不可欠だからです。

特に契約不適合責任に関する条項は重要な確認ポイントです。売主が責任を負う期間に制限を設けている場合、それが買主にとって不利に働く可能性があります。事前にしっかりチェックしておきましょう。

また、購入する土地や建物に関して不明点がある場合は、必ず売主に尋ねるようにしましょう。例えば、土地の境界線に関する疑問や建物の構造に関する質問など、不安を感じた点は何でも質問するべきです。

解決が難しい際は専門家の力を借りる

トラブルの内容によってはお互いが権利を主張して議論が進展しないことも考えられます。お互いが感情的になりそうな事案や、問題が複雑に絡んでいる事案は専門家に介入してもらうのも手です。

専門家は、法律に基づいた客観的な見解で問題を解決してくれます。弁護士や司法書士といった専門家のサポートを受けることも検討しましょう。

所有権を侵害された場合の対処法

もし所有権を侵害された場合は、賠償金の請求などを行う権利があります。ます。所有権侵害に対しては、以下の権利行使が認められています。

  • 物権的請求権の行使
  • 損害賠償請求
  • 不当利得返還請求

物権的請求権の行使

物権的請求権は、所有権が侵害された際に行使できる法的権利です。物権的請求権には、返還請求、妨害排除請求、妨害予防請求の3つの主要な権利があります。それぞれの請求の内容について詳しく見ていきましょう。

返還請求

所有権が不当に侵害された場合、所有物の返還を請求することができます。これは、所有者がその物を他人に奪われているときに認められる権利です。

返還請求によって、所有物を正当な所有者の手に戻すことが可能となります。返還請求を受けた者は、その物の占有を止め、所有者に引き渡さなければなりません。

妨害排除請求

所有物に対する妨害がある場合、その妨害を排除するよう請求することができます。この請求は、所有権の行使を妨害されているときに認められる権利です。

例えば、所有する土地に隣人がゴミを捨てているのが発覚した際には、妨害排除請求を行使してゴミの除去を求めることができます。

妨害排除請求を受けた者は、所有権を妨害している状態を解消しなければなりません。

妨害予防請求

妨害予防請求とは、自分の所有権が侵害されるおそれがある場合に認められる権利です。この請求は、所有権が実際に侵害される前の段階で行使できる点が特徴です。具体例を挙げると、隣地の所有者が工事を行った結果、自宅が損傷するおそれがある場合などに妨害予防請求ができます。

損害賠償請求

所有権侵害により損害を被った場合、損害賠償請求が認められます。

例えば、所有する土地に他人が無断で建設機械を持ち込み、その結果として土地が損傷したとします。このような場合では損傷を修復するための費用などを損害賠償請求によって補償してもらうことができます。

不当利得返還請求

不当利得返還請求とは、他人が不当に得た利益を返還するよう請求できる権利のことを指します。不当利得とは、法律上で認められた権利がないにもかかわらず、他人に損失を被らせて得た利益のことです。

例えば、隣人が土地を無断で利用し、その結果収益を上げた場合、それは不当利得とみなされます。このようなケースでは、不当利得返還請求を行うことで、隣人が得た収益の返還を請求できます。

所有権トラブルを回避するために疑問点は必ず解決しよう

今回は所有権を巡って起こる可能性のあるトラブルと、それらを回避するための方法について解説しました。

取り上げたトラブルは、発生する前に疑問点や不安に早めに気づければ回避できる内容も多くあります。違和感は放置せず、疑問は必ず解消するようにしましょう。

所有権にかかわるトラブルの際には、専門家の力を借りることも大切です。トラブルの内容次第では、当事者同士では解決が難しいケースもあります。

遺産を相続したり、土地を購入したりする場合は、まず専門家に相談し、所有権に関わるリスクをしっかりと把握しましょう。不動産の権利関係に強い専門家もいますので、困ったときは相談を検討してみてください。

この記事の監修者

岡田 卓巳オカダ タクミ

弁護士

弁護士。早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。地代滞納、建物明け渡しなど借地権・底地権の案件へ積極的に取り組む。主な著書に「一番安心できる遺言書の書き方・遺し方・相続の仕方」「遺言書作成遺言執行実務マニュアル」など。

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