借地人が地主の土地(隣地)に越境して建物を建築した場合|弁護士Q&A
借地人が地主の土地(隣地)に越境して建物を建築した場合
地主が所有していた土地を分筆し、片方の土地を借地人に貸したのですが、借地人が地主の土地に越境して建物を建ててしまいました。どういった手段をとることが考えられますか。
1. 越境部分の除去、越境された土地の明渡し請求
2. 借地契約を解除
詳細解説
1. 越境部分の除去、越境された土地の明渡し請求について
まず、地主がすべきこととしては、借地人に対して、越境部分の除去を求めるべきです。そしてこれに応じない場合や、越境が著しい場合には、明け渡し請求や、契約自体を解除するという順で検討していくべきです。
また、建築中に判明した場合は事前に借地人に指摘することや仮処分等の処置を早めに講じることも重要な手段です。地主としては状況を把握することが何よりも重要です。
2. 借地契約を解除について
- 賃借人の義務
賃借人は賃貸人に対して、賃料支払い義務や善管注意義務、そして用法遵守義務を負います。用法遵守義務とは、賃貸借契約や目的物の性質に応じた使用方法で目的物を使用収益しなければならない義務です。 - 用法遵守義務違反の場合
賃借人が用法遵守をしない場合には、その債務を履行しなかったとして、債務不履行となり、解除することも出来ます。ただ、賃貸借契約では直ちに解除できるわけではなく、信頼関係を破綻するだけの用法遵守違反が無ければなりません。
♦【最判昭28年9月25日】
判旨:「賃貸借が当事者の個人的信頼を基礎とする継続的法律関係であることにかんがみ、…賃貸借関係を継続するに堪えない背信的所為があったか…(債務不履行があっても)背信的行為と認めるに足らない特段の事情がある場合においては同条の解除権は発生しないと解するべきである」(信頼関係破壊の理論)。
としています。用法を遵守していない場合でも、それが著しい場合でない限り解除をするのは難しいと考えるべきです。円満にトラブルを解決するために、まずは状況を把握し、話し合いの場を設けることや、事前に越境が分かっている場合は出来るだけ早く措置を講じることが被害拡大には不可欠となります。
とや、事前に越境が分かっている場合は出来るだけ早く措置を講じることが被害拡大には不可欠となります。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。借地非訟、建物明渡、賃料増額請求など借地権や底地権をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。