松原昌洙がよくある借地権問題第2章を解説
借地権の専門家【松原昌洙】がよくある借地権問題第2章を解説!
目次
相続や更新料の支払いといった、借地権のトラブルでお困りではありませんか?
2章では、借地権のよくあるトラブルについて解説します。不動産や借地権の知識を深めたい方や土地の貸借に興味がある方は、ぜひご覧ください。
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借地権のよくあるトラブル
借地権でよくあるトラブルを、Q&A形式で詳しく解説します。
借地権を相続放棄したら土地を更地にする義務はあるのか?
通常、被相続人(亡くなった人)の借地権を法定相続人(被相続人の家族など)が引き継いだ場合は、土地を返還するときは更地にする(原状回復義務を負う)必要があります。
しかし、相続放棄をした場合にその義務はありません。「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と民法339条で定められてます。そのため、相続放棄をした人に被相続人からの権利義務は一切発生せず、同時に土地も更地にする必要はありません。
しかし、相続放棄は被相続人の財産すべてを放棄することであり、財産の一部である借地権のみを手放すことはできないため、注意が必要です。
借地権の相続に地主の承諾は必要なのか?
借地人が死亡した時、法定相続人である配偶者(妻もしくは夫)や子どもが借地権を相続します。借地権の相続に地主の承諾は必要なく、また法定相続人が土地を相続することを地主は拒否できません。
しかし今後のトラブルを避けるために、相続したことや借地人が変わったことを内容証明郵便などで地主に知らせておく必要があります。
借地権を返還する際に土地を更地にする必要はあるのか?
借地契約が終了するなどして土地を地主に返還する際、土地上の建物を取り壊して土地を更地にするのが原則です。更地にするのが面倒な場合は、借地借家法13条1項で定められている建物買取請求権を使い、地主に時価で建物を買い取るよう要求できます。
しかし、地代の滞納などで借地人に落ち度がある場合、建物買取請求権は無効になる可能性があるためご注意ください。
地主から高額の更新料を請求されたら?
消費者契約法10条に定められている「消費者の利益を一方的に害する条項の無効」に該当するため、高額の更新料は無効になります。
そもそも、借地契約で更新料の特約が定められている場合、借地人は地主に更新料を支払う義務があります。正当な理由がないかぎり借地契約の更新を地主は拒否できないかわりに、更新料を要求することが認められているからです。
しかし、消費者を守るための法律である消費者契約法10条では、「消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする」と定められています。この条項に違反していると認められれば高額な更新料は無効になり、借地人が支払う必要はありません。※この場合の消費者は借地人
借地人は借地権を無断譲渡できるのか?
借地権が設定されている土地上の建物を借地人が第三者に譲渡する例を考えてみます。
建物は土地なしでは存続できないため、建物を譲渡するには同時に借地権(権利)も譲渡する必要がありますが、その際には必ず地主の許可が必要です。したがって借地権を地主の承諾なく第三者に無断で譲渡することはできません。
「借地人が借地権を第三者に譲渡するには地主の承諾を得なければならない」「地主に無断で借地人が借地権を譲渡した場合、地主は借地契約を解除できる」と民法612条1項と2項で定められています。
借地契約が解除されると原状回復義務が発生し、借地人は土地を更地にして地主に返さなければなりません。最悪の場合、損害賠償請求されて訴訟になる可能性もあるため、無断譲渡は絶対にしないようにしましょう。
地主が承諾しない場合、借地権の売却はできないのか?
借地権の譲渡承諾を得る方法は、話し合いと法的措置の2つがあります。
まずは、地主に状況や譲渡の理由を説明します。「うまく売却できたら承諾料を支払う」などと地主にも利益がある交渉をすれば、地主が譲渡を承諾してくれるかもしれません。
話し合いで地主が譲渡を認めない場合は、借地非訟という法的な制度を利用してみましょう。「借地権が設定されている土地上の建物を借地人が第三者に譲渡する場合、地主が借地権の譲渡を承諾しない時は、借地人の申立てにより裁判所が地主のかわりに許可を出せる」と借地借家法19条で定められています。
法的措置をとれば、裁判所が地主のかわりに建物の譲渡を許可してくれます。
しかし、裁判になれば地主との関係が気まずくなる可能性があるため、話し合いで穏便に解決するのがおすすめです。借地非訟は専門的な手続きであるため、弁護士などの専門家に依頼しましょう。
地主がよく使う嫌がらせカード
地主がよく使用する嫌がらせカードは、以下の通りです。
- 高額な譲渡承諾料の請求(名義変更料ともいう)
- 地代の値上げ
- 更新料の請求
- 高額な建替承諾料の請求(条件変更ともいう)
地主がこのようなカードを出してきたら、1人で悩まずに弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。
地主の要求が不当であっても、「自分が間違っているかもしれない」と感じてしまうことが多くあります。専門家へ早めに相談すれば、地主の言いなりになって更新料や地代を多く払う、借地権を手放すなどの問題を防げるでしょう。
まとめ
2章では、借地権の相続放棄や無断譲渡などのトラブルを解説しました。このような問題を当事者間で解決できない時は、弁護士や宅地建物取引士などの専門家(第三者)に相談するのが最適です。
次の章では、借地権や相続のトラブルを解決する専門家について解説します。
この記事の監修者
代表取締役 /
宅地建物取引士
CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。借地権を始めとした不動産トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。