【弁護士Q&A】借地人が無断で建物を建てました|弁護士Q&A
【弁護士Q&A】借地人が無断で建物を建てました
底地を所有している地主です。
借地人と契約書はないですが、地代はきちんと毎年受け取っています。
最近、借地人が無断で借地上に倉庫を設置しました。
土地所有者として異議を述べたいのですが、契約書のない状況で何を根拠に異議を述べたらよいのでしょうか?
まず、本件では、借地契約に関して契約書が作成されていないため、そもそも借地契約が有効に存在するのか、という点をご懸念されるかもしれません。
この点については、民法上、賃貸借契約は諾成契約とされており(民法601条)、契約書を作成せずとも、当事者間で土地を貸す(借りる)こと及び対価として地代を受け取る(支払う)ことの合意があれば、借地契約は有効に成立します(但し、定期借地契約については、借地借家法のルールで、書面の作成が必要とされています)。
しかし、契約書が存在しないと、地代以外の契約条件を含めて、全ての条件が口頭での約束ということになりますので、合意の内容・範囲が不明確となり、借地人との間で紛争となるケースが多いです。
本件の場合も、ご相談者様は、借地人が無断で倉庫を設置したと主張したいところ、そもそも借地人との契約上、倉庫の設置が地主の承諾を必要とする行為に該当するのか(その旨の特約を借地人との間で合意していたのか)という点で借地人と争いになった場合は、最終的には地主であるご相談者様の側で、倉庫の設置には地主の承諾が必要であり、無断での倉庫の設置は契約違反に該当することを証明する必要があります。ですが、契約書というエビデンスが存在しないと、その立証が極めて難しくなります。
借地上に築造する建物の種類や用途を限定するためには、契約当事者間でその旨の特約を合意することが必要であり、何ら合意が存在しなければ、築造される建物の種類や用途に制限はないことになります(なお、『建物の所有』という範囲で合意した場合は、倉庫は建物に含まれますので、合意の効果としても、原則承諾は不要ということになります)。
むしろ、今回のような問題を機に、借地人には、異議を伝えるのと併せて、相手方が無断設置の非を認める認めないに関わらず、互いのために今後同種のトラブルが起きることを防止する観点から、契約書の作成を持ち掛けてみるのが最善かと思料します。
まとめ
- 契約書が存在しない場合でも借地契約は有効であるものの、契約違反の主張の前提となる合意・特約の存在・内容の立証が困難です
その他の借地人に関するご相談事例も紹介しています。詳しくは弁護士Q&Aを御覧ください。
この記事の監修者
社内弁護士
当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。