【弁護士Q&A】地主から借地を買い取りたいです|弁護士Q&A
【弁護士Q&A】地主から借地を買い取りたいです
定期借地権付き物件に住んでいます。
建物には、両親、長男である私と妻の計4人で住んでおり、建物登記は別々になっています。
父親と私の連帯保証で、主たる債務者は私です。完全所有権にするために、地主から土地を買い取ろうと考えていますが、売却金額を土地評価額100%の値段で提示されています。土地だけでこんなに高いことがあるのでしょうか?
どんな場合においても、不動産の売買価格は、当事者の合意によって決めるものですが、どの程度の価格が適正と言えるかについては、借地権が設定されている底地の場合、買い手が借地人かそれ以外かで、結論が異なります。
まず、借地人以外の第三者が底地を地主から買う場合、買主は、借地人がいる限り、地代収入は得られるものの、購入した土地を自由に使うことが出来ません。その地代も、土地の実勢価格に比べて低廉な設定額であることが多いです。
特に、借地権が普通借地権の場合は、地主からの契約の更新拒絶に正当事由が必要であるため(借地借家法6条)、地主の側からすると、借地人から土地の返還を受けることが非常に困難となります。
本件の場合は、借地権が定期借地権であるので、契約の更新がなく、契約期間が満了すれば確実に土地が返還される分、普通借地権と比べて、地主に対する制約は小さいと言えますが、残存期間が長期間に及ぶ場合は、やはり地主への制約は無視できません。
以上のような事情から、第三者が底地を買い取る場合は、地主側の土地利用の制約の程度を勘案して、更地価格よりも著しく低廉な価格で取引されます。この場合の取引価格を『正常価格』あるいは『通常価格』と呼びます。
これに対し、底地の買主が借地人である場合、底地を購入した借地人は、土地建物合わせて完全な所有権を取得することが可能となり、借地人としての義務や負担からも解放されます。このため、借地人が底地を購入する場合は、正常価格よりも高い水準の価格で取引されます。この場合の取引価格を『限定価格』と呼びます。要は、正常価格より上乗せした価格で買っても、買主側に経済的なメリットがある状態での取引価格です。
とはいえ、限定価格は、更地価格とイコールという訳ではありません。基本的な考え方は、更地価格と底地の評価額の差額の一定割合を、底地の正常価格に上乗せするという形で算定されます。
したがって、ほぼ更地価格そのものでの買取を提示する地主の提案は、不当に高いと思われます。
まとめ
- 底地を買い取るのが借地人である場合は、借地人以外が買い取る場合に比べて高額な限定価格が取引価格となります。
- 限定価格は、底地の正常価格をベースに一定の上乗せをするという形で算定されるものであり、更地価格とイコールではありません。
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この記事の監修者
社内弁護士
当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。