借地の地代の相場はいくら?計算方法と地代の値上げについて解説|借地権のトラブル
借地の地代の相場はいくら?計算方法と地代の値上げについて解説
目次
土地の賃借において発生する「地代」は、周囲の環境や個別の条件などさまざまな要素によって決まるものの、大まかな相場に関しては計算にて求めることが可能です。
計算のポイントは、自分が所有している土地の価値を正しく理解することです。税金の課税額や収益分析など5つの方法を基準としながら計算をし、地代相場や適正価格を把握しましょう。相場を知るために地代を計算するための方法について学びたい人は、ぜひ最後までお読みください。
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1.借地の地代相場の計算方法
地代とは、借地人が地主へ定期的に支払う土地の使用料のことであり、借地料や賃料と同じ意味の言葉です。
土地の持つ価値は、周辺環境の変化に比例して変動する上、土地の利用方法や面積によっても地価は異なるため、地代はいくらが適正なのか分からない人も多いでしょう。地代を適正な価格で設定することは、地主にとって非常に大切です。ここでは、地代の相場を正しく把握するための5つの計算方法を解説します。
1-1.公租公課を使って計算する
公租公課を使う方法は、自分が所有している土地に発生する税金を元に計算するもので、地代相場を求める際の最も基本的な方法です。
- 固定資産税評価額×固定資産税の税率×相場の倍率
固定資産税にかかる課税額に、相場となる倍率をかけることで地代の相場を計算します。
固定資産税評価額は、固定資産税納税通知書に添付の「課税明細書」に記載があるため、確認しましょう。税率は市区町村によって異なるため、住所地の役所やインターネットで確認します。
「倍率」に関しては明確な数字は定められていませんが、直近の平均値を利用することでおおよその相場を把握できます。日税不動産鑑定士会が算出している平均値によると、令和3年度の東京都の調査では、商業地系は4.05倍、住宅地系は4.32倍が平均倍率です。
出典:日税不動産鑑定士会「継続地代の実態調べ」
公租公課を用いる方法は、簡易的に相場を知りたいという方におすすめな一方、正確さを求める場合には他の計算方法とあわせて検討することが推奨されます。
1-2.更地価格を使って計算する
国税庁や国土交通省が設定している、土地の評価額を基準にして地代を計算する方法です。土地の評価額から更地だった場合の土地の価格を計算した後、相場となる1.5~3%をかけ合わせます。
更地価格を計算するためには、以下の2通りの方法があります。
- 公示価格(基準地価)×面積×1.5~3%
- 相続税路線価÷0.8×面積×1.5~3%
公示価格は国土交通省が調査し定めている土地の価格で、国土交通省のホームページで調べることができます。相続税路線価は、相続税や贈与税を計算するために国税庁が定めています。相続税路線価は国税庁のホームページから確認しましょう。
いずれも、計算したい土地そのものの価格ではなく、基準値・標準値・最寄りの大道路の価格を基準としているため、正確な相場とは言えない点に注意しましょう。
1-3.期待利回りを使って計算する
「積算法」とも呼ばれ、土地を投資用に購入した際に得られる予想収益を基準にした計算方法です。
- 土地買取価格×期待利回り+経費
期待利回りを参考にする計算方法では、土地の現在の買取価格を知る必要があります。期待利回りや土地の維持管理費についても、インターネットで正確な金額を調べることは難しく、専門的な知識が必要です。不動産鑑定士など、専門家に依頼して算出してもらうと正確な相場を計算してもらえます。
1-4.収益分析法で計算する
立地条件による付加価値や見込み収益を計算して地代を求めていく方法です。
- 年間の事業収益・立地条件による付加価値・経費・事業内容などから総合的に判断
年間の事業収益がいくらになるのか見込額を計算した上で、立地条件によって得られた利益額を予想するなど、すべての項目において専門的な知識が必要な計算方法です。
地主や借地人だけでは算出が非常に難しい方法である一方、借地で店舗を運営する場合は必要不可欠な方法でもあります。収益分析法をもとに適正な地代を把握するのであれば、不動産会社や専門業者を介して正確に計算をするようにしましょう。
1-5.周辺地域の地代を参考にして計算する
周囲の状況や、実際の近隣地域の地代・賃料相場などを参考に計算する方法です。
- 周辺地域の地代に個別の事情を加味する
周辺の地代に個別の事情を加味して増減させながら決めていく方法で、現実的かつ平均的な地代を計算するのに適した方法です。個別の事情とは、主に景観や地盤の状態、周辺建物との距離、利用制限、面積などを総合的に見て判断します。
また、周辺地域の地代を知るためにはできるだけ多くのサンプルを用意して比較・検討していくことがポイントです。不動産情報サイトを活用したり、専門家に相談したりして、周辺地域の地代を適切に把握しましょう。
2.地代の相場が変わる可能性はある?
地代は固定されているわけではなく、周辺環境の変化や経済情勢の変化によって変わる可能性があります。
すでに賃借契約を結んでいる土地の地代は、「地代等増減請求権」を請求することで価格の改定が可能です。ただし、すべてのケースで請求が可能という事ではなく、請求が不当であると判断される場合もあります。
地代の増減請求ができるケース
- 公租公課の増額
- 近傍類似の土地と比較した際、地代が過度に安価である場合
- 土地の評価額が上昇したとき
地代の増減請求ができないケース
- 賃借契約時に地代の増額をしない旨の特約がある場合
- 軽微な経済事情の変動
- 地主の経済状況の変化
地代等の増減の請求については借地借家法11条1項に定められており、原因を問わず、地代が「不相当」だと判断できる場合にのみ増減を請求することができます。
また、請求が可能なケースであっても地主の一存で金額の変更はできず、土地の所有権者と借主である借地権者の双方合意が必要です。合意が得られない場合には、調停・控訴と段階を踏み、裁判所に判断を委ねることになるケースもあります。
2-1.地代の増額があるタイミングはいつ?
借地契約を更新するとき
最も多いのは、借地権の更新時です。地主にとって、借地権の更新時は、条件変更等の提案がしやすいタイミングです。地代も含めて契約全体の見直しが入る可能性があります。
周囲の類似物件の地代が変動したとき
周囲の類似物件の地代に値上がりがあった場合、何らかの市場動向が影響している可能性があります。近隣の類似物件にくらべてあまりにも地代が安い、というようなことがあれば、近隣の類似物件に合わせた地代を提案される可能性があります。
税金や物価が上がったとき
固定資産税率の変更や都市計画法の改正など、社会情勢が変わるタイミングで、地代も影響を受ける可能性があります。地主としても土地を維持管理する上で、地代を増額しなければやっていけない、という状況であれば、増額請求をせざるを得ないでしょう。昨今では、税金以外に物価の高騰も地代に影響を与えることがあります。
土地の価値に変化があったとき
例えば、土地開発の計画が近隣で開始されるような場合、将来的に土地の価値向上が期待できます。土地の価値に見合った地代に増額請求される可能性もあるでしょう。
2-2.地代の減額ができる条件とは?
地代の減額請求は、法律上可能です。概ね地代の増額と反対の状況になった際に、請求できます。しかし、地代は借地人と地主の双方の合意によって決まりますので、あくまで両者での協議・合意が前提です。
以下のような場合に、地代が減額できる可能性があります。
不動産の価値が下がったとき
土地や建物の価値が減少した場合、地代の減額請求が可能です。たとえば、周囲の環境が悪化して景観や利便性が低下した場合などが該当します。
契約に変更があったとき
契約によって地代の条件が変更された場合、その変更に基づいて地代の減額請求ができることがあります。例えば、契約期間中に法律や条例が変更された場合などが該当します。
貸主の義務の不履行があったとき
貸主が契約で負うべき義務を果たさない場合、地代の減額請求が可能です。たとえば、貸主が修繕費用を負担することが契約で定められているにもかかわらず、修繕を怠った場合などが該当します。
市場の変動があったとき
地域の地代相場が下落した場合、これに基づいて地代の減額請求ができる可能性があります。ただし、市場の変動だけでなく、契約内容や物件の状態なども考慮されます。
3.地代増減請求の流れ
地代増減請求の流れは、以下の通りです。
- 当事者間で話し合いをする
- 話し合いがまとまらない場合、調停の申し立てをする
- それでも合意しない場合、調停(裁判)を行う
判決が出るまでの間、借地人は、相当と認める額の地代を地主に払います。地主が受け取ってくれない場合は、供託所に供託することで債務不履行とみなされることを回避します。
判決の結果、支払う地代に不足があった場合は、借地人は年1割の利息を付けて支払う必要があります。
地代によるトラブルは、借地権トラブルの中で最も多いです。早い段階で、弁護士や不動産会社などの専門家の力を借りる方が、円滑な解決が期待できます。
よくある質問
借地権付き(旧法)の家に住んでいます。 先日、地主が代替わりし、新しい地主が訪ねてきました。 そこで、地代の増額を請求されました。 これまで一度も地代の増額をされたことがなく驚きました。
地主から、一方的に地代の増額を請求された場合、応じなければならないのでしょうか。
- 地代は当事者の合意によって決められるものなので、一方的に増額することは出来ません。
- 借地借家法は、一定の要件のもと、借地契約の当事者双方に地代の増減額請求権を認めています。
地代は、借地契約の契約内容の一部であり、あくまで、契約当事者の合意によって決められるものです。
いったん合意した地代を、一方的に変更することは出来ません。
契約期間中は、双方とも合意した地代に拘束されます。したがって、地主が一方的に地代の増額を要求してきたとしても、それに応じる義務は借地人にはありません。
とはいえ、借地契約が長期間にわたるうちに、土地に対する租税公課の増減、地価の上昇下落を始めとする経済事情の変動、近隣類似の土地の地代と比較した場合に著しい差が生まれる等、当初合意していた地代の条件が不相当になってしまうという事態は当然あることです。
もし、そうなったときに一切地代の変更が認められないというのは、双方にとって不都合です。
そこで、借地借家法では、建物所有目的の借地権について、一定の要件のもと、借地契約の当事者に地代の増減額請求権を認めています(借地借家法11条1項)。なお、借地契約の中に、地代の増額請求をしないという特約があるときは、地主は地代の増額請求が出来ませんが(同条1項但書)、他方、地代の減額請求をしないという特約があったとしても、同条1項本文に基づき、借地人は地代の減額請求を行うことが可能であり、地代の減額請求を禁じる特約には効力はありません(最高裁平成15年6月12日判決)。この地代増減額請求権が行使された場合、その時点から将来に向かって、増減額の効力が発生するとされています。
しかし、請求された側が納得できず協議が整わなければ、裁判所で争われることになりますが、裁判所の結論が出るまでには時間がかかります。
そのため、もし、地主から、借地借家法11条1項に基づく地代増額請求を受けた際に、借地人が、地主の請求額を了解できないときは、裁判所で増額を正当と認める裁判が確定するまでの間は、借地人自身が相当と認める金額の地代を支払えばよい(この間は地代未払いの債務不履行にはならない)とされています(同条2項本文)。
但し、最終的に地主の増額請求が裁判所で認められた場合には、借地人は、不足額(裁判所で確定した地代の額と実際の支払額の差額)及びこれに対する年1割の利息を地主に支払う必要があります(同条2項但書)。
まとめ
地代を決めるには、まず「地代の相場」を把握してから、個別の事情を加味した計算を進めていくことが基本です。
借地権・底地の売却や土地活用問題を解決にするには適切な権利評価や査定ができる経験豊富な専門家の存在が必要不可欠です。正しい知識で心理的不安を解消し、最良の解決方法を見つけましょう。
この記事の監修者
社内弁護士
当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。