既判力とは|用語集
既判力とは
意義:既判力とは、主に民事訴訟において、確定した終局判決に認められる拘束力のことです。
詳細解説
例えば、同一当事者間で同じ事柄が別の訴訟で問題になったとしても、当事者は確定した終局判決で示された判断に反する主張をすることはできなかったり、裁判所も確定判決に抵触する判決をすることはできなかったりする拘束力のことをいいます。同じ内容の訴訟を何度も行うのは当事者だけでなく裁判所にとっても面倒ですし、同じ内容のはずなのに判決が矛盾しては当事者も困惑してしまいます。
そのような事態を防止するために既判力という概念が存在することになります。既判力の内容については、1. 積極的作用と2. 消極的作用があるとされています。
1. 積極的作用
確定判決の訴訟物についての判断を後訴裁判所が覆すことはできず、確定判決の判断を前提として判断しなければならない作用をいいます。
2. 消極的作用
確定判決と矛盾する主張・証拠申出をすることを当事者が許されず、裁判所もそれについて審理することは許されない作用を言います。既判力の上記作用に抵触するか否かの判断を見てみましょう。
- 訴訟物(争っている、問題となっている裁判の対象のこと)が同一の場合
※訴訟物とは、裁判で審理の対象となる権利のこと(「AのBに対する100万円の貸金返還請求権」等)
例えば甲不動産の所有権確認訴訟で敗訴した原告が、再び同じ甲不動産の所有権確認訴訟を提起したとき、既判力の消極的作用により、原則として、裁判所は、請求棄却判決をすることになります。 - 訴訟物が先決関係にある場合
甲不動産の所有権確認訴訟で勝訴した原告が、さらに所有権に基づく甲不動産の明渡請求訴訟を提起したとき、既判力の消極的作用により、原則として、裁判所は、原告の所有権の存在を前提として判決をします。 - 訴訟物が矛盾関係にある場合
原告が甲不動産の所有権確認訴訟で勝訴したにもかかわらず、敗訴した被告が同じ甲不動産について自己の所有権確認訴訟を提起したとき、既判力の消極的作用により、原則として、後訴被告は、確定判決と矛盾する主張をすることが許されず、裁判所は、前訴原告の所有権の存在を前提として判決をします。
なお、既判力を有する裁判は、原則として確定した終局判決です。中間判決(民事訴訟法245条)は既判力を有しません。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。借地非訟、建物明渡、賃料増額請求など借地権や底地権をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。