借地権は勝手に売却できるのか?共有不動産の民法ルール|弁護士Q&A
借地権は勝手に売却できるのか?共有不動産の民法ルール
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ご相談内容
現在、母親A、兄弟(BC)3人の共有している借地権の相談です。
弟Cは過去に精神病で入院歴があります。
本件借地権を売却すると言い出し、母親Aの後見人に勝手になり、暴走しています。
私(兄B)には、「借地権売却に同意しろ!しないならどうなるかわからないぞ!」と半ば強迫まがいに言ってきます。
何をするのかわからない弟ですので、ものすごく不安です。色々不安で仕方ありません。どうしたらよいのでしょうか。何か良いアドバイスはありますか。
ご相談のポイント
- 共有の借地権の売却
- 後見人を外せるか
- 共有者の合意だけでは借地権は売却できない
◆共有の借地権の売却
借地権の売却とは、借地権付き建物を第三者に売却するということを意味しますが、借地権付き建物が共有であるときは、共有者全員の同意がないと、全体売却はできません(民法251条1項)。
現在、Cが母親Aの後見人に就任していることから、借地権の売却について、事実上A&C対Bという構図になってしまっています。
◆後見人を外せるか
Bの立場からは、CをAの後見人から外したいところです。
ですが、Bから見れば勝手なこととはいえ、Cは、後見開始の審判を経て、家庭裁判所の許可を得た上で、Aの後見人に就任しています。
そのようなCを後見人から外すためには、同様に、家庭裁判所を通す必要があります。
仮に、Cが成年後見人に就任して以降に、Aの意思判断能力が回復し、もはや後見人を付ける必要がなくなっているケースの場合は、家庭裁判所に対して、後見開始の審判の取り消しを求めることになります(民法10条)。
他方、A本人は未だに判断能力が不十分だが、Cの行動に問題があり、Aの後見人にふさわしくないことを根拠にCを成年後見人から外すためには、家庭裁判所に対して、後見人の解任を求めることになります(民法846条)。
◆共有者の合意だけでは借地権は売却できない
但し、仮に、A・B・C全員が借地権の売却について合意したとしても、それだけでは借地権は売却できません。
借地権を売却するためには、地主から譲渡承諾を得る必要があります(民法612条1項)。
地主の承諾なく借地権を売却してしまうと、地主に契約を解除され、借地権そのものが消滅する恐れがあります(民法612条2項)。
ご相談内容を踏まえると、Cに売却手続を任せた場合は、地主への説明すらなく売却を進めてしまうのでは、という不安がぬぐえません。
借地権売却で共有者全員が一致できる場合には、弁護士を共通の代理人に立てて、地主との交渉の窓口を一本化するのが理想です。
まとめ
共有の借地権付き建物を全体売却するには、共有者全員の同意が必要です。
さらに、地主から譲渡承諾を得る必要もあります。
なお、共有者に後見人が就いているが、その後見人に問題があり後見人として不適格であるという場合は、家庭裁判所に対して後見人の解任を求めることになります。
この記事の監修者
社内弁護士
当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。