借地権の権利金とは?相場や支払い不要なケースを紹介|借地権の基礎知識
借地権の権利金とは?相場や支払い不要なケースを紹介
目次
借地権を取得する際に、地主から権利金の支払いを求められる場合があります。権利金とはどのようなお金であり、そもそも支払う必要があるのか、提示された金額が適正なのか、借地権を手放す時返金されるのか、知りたい方もいるでしょう。
当記事では借地権の権利金について、概要と相場を詳しく解説します。借地権を取得しようとしている方や、借地権の権利金に対して疑問をお持ちの方はぜひ当記事を参考にしてください。
1.借地権の権利金とは?
借地権は、土地の所有者である地主から借りた土地を使用し、建物を建てる権利です。そして借地権における権利金とは建物の所有目的で土地の借地契約を結ぶ場合に、借地権設定の対価として借地権者(借地人)が地主に支払うお金を指します。
借地権は借地借家法という法律で手厚く保護された強力な権利であり、地主が所有する底地権よりも高い財産的価値が認められているため、権利金の支払いという慣例が成立しています。ただし、権利金は法律に定められているものではなく、支払いが必要かどうかは地主と借地人の交渉・合意によって決まります。
※「権利金」は借地権取得時の“購入代金”や“売買代金”といえるでしょう。
出典:国税庁「No.3111土地を貸し付けて権利金などをもらったとき」
1‐1.権利金と礼金の違い
権利金と礼金は契約時に一時金として支払われる点や、契約期間満了時に返還されない点で共通しており、混同されるケースがあります。しかし、権利金と礼金には性質上の違いがあります。礼金は、賃貸物件の貸主に対する「お礼」として支払われるのが特徴です。一方、権利金は事業目的などで建物を借りる際、建物が存在する土地における「対価」として支払われます。そのため、住居としての物件賃貸では、通常、権利金という概念が存在しません。権利金は、礼金と同じく契約が満了しても返還されませんが、賃貸契約期間中に貸主の都合で途中解約となった場合は例外です。地主の都合で途中解約になった場合は、未経過の借地期間に相当する額の権利金が返還されることがあります。
2.借地権の権利金の相場は?
借地権の権利金の相場を知りたい場合は、借地権価格(借地権の売買価格)を目安にしましょう。
借地権価格の計算方法は以下の通りです。
- 借地権価格=土地価格×借地権割合
土地の借主は、「土地を利用する権利」という価値あるものを所有することになります。土地全体の価値(土地の所有権の価値)に対する借地権の割合を借地権割合と言い、土地の価格に借地権割合を掛け合わせて算出されるのが借地権価格です。
例えば、土地価格が9,000万円で借地権割合が7割であれば、借地権価格は6,300万円(9000万円×0.7)です。適正な土地価額を調べたい場合は、不動産鑑定士が土地の査定を行っている不動産会社などに査定を依頼しましょう。
借地権割合は、国税庁ホームページで公開されている路線価図で確認できます。路線価図には、道路に面する土地の1平方メートルあたりの価格と借地権割合がセットで表示されています。路線価図に借地権割合が記載されていない地域の場合は、同じく国税庁ホームページにある評価倍率表で借地権割合を確認することができます。
ただし、中には、相場よりも高い権利金を請求されるケースがあるため、注意しましょう。請求された権利金が借地権価格より高い場合は、権利金の金額設定が適切でない可能性があります。
高い権利金を支払った場合でも、地主都合による途中解約でなければ、後から取り戻すことはほぼ不可能です。トラブルを防ぐためにも、事前に適正価格を知っておくことが大切です。
3.権利金を支払わないときの認定課税とは?
権利金の支払いは、土地を貸し借りする際の通例です。しかし、地主と借地人が親族または同族会社など、近い関係性である場合は権利金を収受しないパターンも珍しくありません。
通常は権利金を収受する慣行があるものの、上記のような経緯で金銭を収受しない場合は、権利金の認定課税が行われる可能性があります。権利金の認定課税は、権利金に相当する額の贈与があったと見なして課税されることを言います。
借地権の認定課税については、下記でも詳しく解説しています。
借地権の認定課税とは?権利金との関係やケースごとの課税について解説
3‐1.権利金の認定課税が行われないケース
借地権の認定課税は、地主や借地人が個人か法人かといった立場の違いや、届出の状況によっても取り扱いが変わります。ここでは、権利金を支払っていなくても、認定課税が行われない2つのケースについて解説します。
相当の地代を支払っているとき
権利金を支払う代わりに、相当の地代を払っている場合、権利金の認定課税は行われません。相当の地代と対比されるのが通常の地代です。借地契約時に権利金として借地権の対価を支払っているため、土地全体から借地権を除いた底地部分の相当額を「通常の地代」として支払います。
- 通常の地代=土地の価格×(1−借地権割合)×6%
権利金を支払っていない場合でも、通常の地代に借地権の対価を上乗せした「相当の地代」を支払えば、認定課税が回避できます。相当の地代を表す計算式は、次の通りです。
- 相当の地代=土地の価値×6%
計算式を比較すると、通常の地代では底地価格を対象に算出するのに対し、相当の地代では借地権部分も含めた土地全体を対象に算出することが読み取れます。
出典:国税庁「No.5732相当の地代及び相当の地代の改訂」
土地の無償返還に関する届出書を提出しているとき
「土地の無償返還に関する届出書」は、借地人が将来無償で地主に土地を返還する旨を税務署と約束する書面です。法人が借地権の設定などにより他人に土地を使用させたとき、借地権設定契約書などで将来借地人が土地を無償で返還する内容が記載されている場合に提出できます。
当事者が連名で土地の無償返還届出書を提出した場合は、税負担が発生しません。ただし、土地の無償返還に関する届出書を提出しても、土地賃貸借契約を交わしていたら、借地借家法が優先されて無償返還が認められないケースもあるため注意しましょう。
4.権利金以外にも!借地権取得時に必要な費用
地主と借地契約を結ぶ際には、権利金以外にもさまざまな費用がかかります。ここでは、地代(借地料)や手付金、保証金の3つの費用について解説します。
下記のほか、借地権を取得した際には登記簿への建物登記が必要になるため、登録免許税などの登記費用がかかることも理解しておきましょう。
4‐1.地代(借地料)
地代は、地主に土地の使用料として支払うお金であり、借地料とも呼ばれます。地代(借地料)は、借地権が普通借地権なのか定期借地権なのか、借地上に建っている建物が居住用なのか事業用なのかによって金額相場が変わります。定期借地契約における地代(借地料)は、居住用建物では土地価格の2〜3%、事業用建物では土地価格の4〜5%が一般的です。
普通借地権の地代(借地料)は、固定資産税の3倍程度とされていますが、大体土地の価格の1%未満となるため、定期借地権に比べると低額の価格です。普通借地権の場合は、地代が低い代わりに権利金の支払いがあることでバランスを保っています。
普通借地権と定期借地権どちらの場合でも、地代(借地料)の支払い期間や方法は地主と借地人の契約内容で決められており、ほとんどの場合、家賃のように毎月一定金額を支払います。
4‐2.手付金
手付金は、借地契約の成立を証明するために支払う費用です。土地の引渡しと代金の支払いには時間差があるため、手付金を支払い取引の意思を明確にします。手付金の支払いは契約成立の意思表示となり、住宅ローン審査中に地主が別の方に土地を売却するといったリスク回避にもつながります。借地契約締結時に、契約金(権利金)の5〜10%程度を手付金として支払うのが一般的です。
- 契約金(権利金)=手付金(5~10%)+残金(95~90%)
また、手付金には契約解除権の留保という役割もあり、契約書に種類の明記などがなく「手付金」とだけ記載されている場合は、原則「解約手付」を意味します。解約手付の場合、借地人が手付金を放棄するか、地主が手付金の2倍の金額を借地人に支払うことで契約解除が可能です。
4‐3.保証金
保証金とは、契約を守ることを担保するために支払うお金を言います。借地契約で保証金を支払うことで、借地人に地代の滞納などの不履行をしないと約束できます。
※借地契約で授受される保証金は、賃貸借契約上の「敷金」と同じ性質を持ちます。
権利金とは性質が異なり、契約終了に至るまで地代の不払いといった不履行がなかった場合、保証金は借地人に基本全額返還されます。ただし、全額返還せず1〜3割償却される場合もまれにあります。通常は、普通借地権の契約当初に権利金が支払われ、定期借地権の契約開始時には権利金と保証金のいずれかが支払われます。
まとめ
借地権を取得するときに支払う権利金は、土地に借地権を設定することへの対価として地主に支払うものです。相場は借地権価格が目安となりますが、地主と借地人の話し合いによっては権利金を支払わないケースもあります。権利金は保証金とは異なり、途中解約以外では返金されないお金となるので注意が必要です。
借地権の売買は、費用の問題や必要な手続きが複雑になりやすく、また地主とのトラブルにも発展しやすい傾向があります。借地権の売却でお困りの方は、ぜひ中央プロパティーにご相談ください。借地の専門家が高値での売却をサポートいたします。
この記事の監修者
代表取締役 /
宅地建物取引士
CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。借地権を始めとした不動産トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。