借地権付き建物を解体するか売却するか悩んでいます|弁護士Q&A
借地権付き建物を解体するか売却するか悩んでいます
ご相談内容
実家が空き家で、6年になります。片付けに行く事も出来ません。
実家のインフラ、特に電気、水道は修理をしないと、それも出来ない状況です。地主は解体を望んでおりますが、私は今すぐ解体したいとは思っていません。
借地人である私が土地を自分で買いとるか、借地権を買い上げてもらったら、解体も考えられます。
何か良いアドバイスはありますか。
詳細解説
空き家を放置するリスク
本件の空き家では、「電気、水道の修理をしないと」とあることから、長期にわたって放置され、だいぶ荒廃していることが考えられます。家は人が住まなくなると荒廃のスピードは速くなります。
家が荒廃していくと、倒壊の恐れや、火事の恐れなど、リスクが出てきます。倒壊や火事により近隣の家に傷をつける、また延焼してしまう等のことがあると、不法行為責任(不法行為に基づく損害賠償責任)を負わなければならなくなるケースもあります。
(不法行為による損害賠償)
民法709条:「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
不法行為責任の発生は「故意」だけではなく、「過失」がある場合にも発生してしまいます。過失というのは、平たく言うと「不注意」のことで、家屋が荒廃しているにもかかわらず、放置し、倒壊して誰かを死傷させてしまった、火事が起き、延焼してしまったような場合でも、過失があると判断され、責任を負わなければならないケースがあります。
失火の場合は、「重過失」
民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
(訳:民法第709条の規定は、失火の場合には、適用しない。ただし、失火者に重大な過失があったときは、この限りでない。)
失火に関しては、過失ではなく、「重過失」があった場合に限って、不法行為責任を負う可能性があります。「重過失」とは、信義則上、悪意と同視しうる過失のことを言い、ちょっとした不注意がこれにあたります。
例えば、下記の場合が「重過失」にあたります。
- 仏壇のろうそくが傾いていて、このままいくと倒れそうにも関わらず、放置して家を留守にしてしまい、火事が起きた場合
- 石油ストーブに給油する際に石油ストーブの火を消さずに給油したことで、石油ストーブの火がこぼれた石油に着火し火災が発生したような場合
いずれにせよ、空き家を長期間にわたり放置する=リスクでしかありません。本事例での解決策は主には3つです。
ただ、地主に買い取ってもらうことを優先的に考えるとよいと思います。
地主に買い取ってもらう (だめなら第三者に買い取ってもらう)
本件の地主は解体を要求していますが、本来地主は、借地権設定契約が満了した段階で、借地人側から、建物買取請求権を行使されると、建物を時価で強制的に買い取らなくてはなりません。その点を踏まえると、解体費用を地主側で負担してもらうことも交渉次第ではできるかもしれません。
一方、売却を考え、第三者に売却するとなると、借地権の譲渡には賃貸人である地主の許可が要ります。
- 地主が反対したら、そもそも第三者へ借地権を譲渡することができません(民法612条参照)。
そのため、借地権の譲渡先(売却先)は地主を最優先に検討すべきです。
地主の状況によっては、底地権と借地権を一括で売却することの提案もできます。
空き家の整理はできるだけ、早いほうが良いです。最適な解決方法は状況によって変わってきますので、まずは一度お気軽にご相談ください。底地借地のプロ集団が最善策をご提案致します。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。地代滞納、建物明け渡しなど借地権・底地権の案件へ積極的に取り組む。主な著書に「一番安心できる遺言書の書き方・遺し方・相続の仕方」「遺言書作成遺言執行実務マニュアル」など。