作成日:2016.12.20

法定地上権について


法定地上権

意義:法定地上権とは、土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属している場合に、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときに当該建物に成立する地上権のことを言います(民法388条前段)。

約定地上権とは異なり当事者間の合意による設定ではなく法律の規定によって当然に生じます。


民法388条「地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときはその建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。」

(1)  詳細解説

土地と建物は別個の不動産であるため、抵当権も別に設定することが可能です。建物は土地無くして存在は出来ないため、例えば、土地が競売され建物と土地所有者が別々に帰属することになる場合、原則として建物は存続できないことになります。

 しかしそれでは、社会経済上不利益極まりないので、法はこのような場合にも建物を出来るだけ存続・利用できるように法定地上権という制度を設けました。

法定地上権

 ただ、無制限に認めると抵当権者に大きな不利益を被らせてしまうので、一定の要件を元にこれを認めています。

              

  【法定地上権の成立要件】

  抵当権設定時に建物が存在していたこと

  ①抵当権設定当時、土地と建物が

   同一所有者に帰属していたこと

  ②土地と建物の一方または双方に

   抵当権が設定されていること

  ③競売が行われて別の者に

   帰属すること

が要件とされています。

各要件について判例が多くありますが、一例を紹介して大きな判例の考えについて考察します。


♦【最判昭36年2月10日】

事案①:更地に抵当権が設定された後に建物が建築され、抵当権が実行され別位の所有者が落札した場合

判旨:「民法三八八条により法定地上権が成立するためには、抵当権設定当時において地

上に建物が存在することを要するものであって、抵当権設定後土地の上に建物を築造した場合は原則として同条の適用がないものと解するのが相当である。」

理由としては、抵当権者は土地を更地として評価しており、更地とそうでない場合には担保価値は大きく異なる(更地の方がはるかに高い)ので、法定地上権を認めることは抵当権者に大きな不利益を生じさせてしまうことが、大きな理由です

♦【最判昭52年10月11日】

事案②:非堅固建物を堅固建物に建て替えた場合

土地に抵当権設定当時木造建築物(非堅固建物)が土地上に存在し、その後鉄筋コンクリート(堅固建物)に建て替え、抵当権が実行され、第三者が落札した場合

判旨:「…このように、旧建物を基準として法定地上権の内容を決するのは、抵当権設定の際、旧建物の存在を前提とし、旧建物のための法定地上権が成立することを予定して土地の担保価値を算定した抵当権者に不測の損害を被らせないためであるから、右の抵当権者の利益を害しないと認められる特段の事情がある場合には、再築後の新建物を基準として法定地上権の内容を定めて妨げないものと解するのが、相当である。…」

 こちらの判例も抵当権者が当初予測していた担保価値を損なうような不利益が生じるか否かということが大きな判断基準となっています。

♦【最判平2年1月22日】

事案③:2番抵当権設定時にのみ要件を満たす場合

1番抵当権設定時には土地所有者建物所有者が別々に所有していたが、2番抵当権設定時に別々になり抵当権が実行された場合(2番抵当権を基準に考えると法定地上権が発生する)

判旨:「土地について一番抵当権が設定された当時土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件が充足されていなかった場合には、土地と地上建物を同一人が所有するに至った後に後順位抵当権が設定されたとしても、その後に抵当権が実行され、土地が競落されたことにより一番抵当権が消滅するときには、地上建物のための法定地上権は成立しないものと解するのが相当である。けだし、…後順位抵当権が設定されたことによって法定地上権が成立するものとすると、一番抵当権者が把握した担保価値を損なわせることになるからである。」

こちらも、一番抵当権者は法定地上権が成立しないものとして担保価値を把握していたのであるから、2番抵当権者を基準に法定地上権の基準時にすることは不測の損害を与えることになってしまうという理由が背景にあります。

 


判例の傾向としては、抵当権者が設定当時の担保価値を出来るだけ維持できるように調整を図っていると考えられます。

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