作成日:2018.04.02
意義:ある物又は権利の法的な属性が当該物や権利に関連する他の物や権利に及ぶ場合
難しいと思うので、抵当権を例にその物上代位について見ていきましょう。
まず、物上代位の規定は先取特権の場所にあります。
(物上代位)
民法304条:「先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。」
(留置権等の規定の準用)
民法372条:「第二百九十六条、第三百四条及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。」
民法372条(抵当権の規定)で民法304条を準用しているので、抵当権に置き換えると…以下のようになります。
民法372条・民法304条:「①抵当権者は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって②債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、②抵当権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。」
具体例を挙げて見ていきましょう。
例:Aさんは甲家を購入しましたが、B銀行から借り入れを行いました。
その際、Aは甲家に対してBのために抵当権設定をしました。
その後、Aは生活苦になり債務が返せなくなり、また、運悪く延焼で甲家が全焼してしまいました。
なお、甲家は火災保険(受取人はA)に加入しています。「①その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって」
本来B銀行は債務不履行により抵当権を実行(競売)にかけ、その売却代金を債権に充当します。
しかしながら、甲家は全焼してしまいそれが不可能になってしまいました。
よって、目的物である家屋が滅失に該当します。
「②債務者が受けるべき金銭その他の物」
甲家は全焼してしまいましたが、火災保険に入っていることなので、Aに対して火災保険は支払われることになります。
この、火災保険は抵当物件である家が火災により転化したものということができ、抵当権者に対して、このような金銭にも抵当権の効力を及ばせる(「物」の「上」に「代位」させる)ことにしました。
債務者からすればひどい話だと思うかもしれませんが、弁済せず火災も無ければ抵当権者は甲家を抵当権に基づき競売にかけ、金銭の回収ができたわけです。
火災保険に抵当権の効力が及ばないとすることは妥当ではないですよね。
「③抵当権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。」
①②の条件を満たしたとしても、抵当権者は債務者が「その払渡し又は引渡しの前」に「差押え」をする必要があります。
前述しましたが、確かに火災保険に対しても抵当権の効力を及ばせることは妥当とも言えますが、無制限に認めることは当然できません。
本件の例で言えば債務者Aが保険会社から火災保険を受け取る「前」までに、抵当権者が差し押さえをすることを必要としました。
仮に、差し押さえの前に家屋直すために大工さんにお金を支払っていたような場合、差し押さえの方が後なので、物上代位は認められません。その他の記事
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