作成日:2017.11.15
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借地権を甥っ子に遺贈しようと考えていますが、このような場合地主の承諾はいるのでしょうか。 |
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本件の場合、地主の承諾は必要と考えられます。 |
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
民法620条:「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」
原則として、賃借権を譲渡するには賃貸人(地主)の承諾がいります。賃貸借契約は継続的な「信頼関係」を元になされる契約なため、賃借人の変更は、賃貸人にとって大きなリスクを負う可能性があるからです。
賃借人が別の人になる原因が相続による場合、賃貸人の承諾は不要です。
これは、賃借人の居住権の方が優先されるべきという価値判断が背景にはあります。
(賃借人の死亡により賃貸借契約が終了してしまうとすると、賃借人は出て行かなければならないというのは理不尽ですよね。)
借地権も賃借権の一種ですので、相続によって賃借人の変更があっても地主の許可が無くても当然に住み続けることは可能です。
すなわち、借地人(夫)が亡くなり、妻らが相続人の場合、借地権も当然に相続され、地主の許可は不要とされています。
※仮に一緒に住んでいない人でも相続人であれば、賃借権を相続できます。
一方、本件のように甥っ子等、相続人以外の第三者へ遺贈する場合は地主の承諾がいることになります。
※承諾のポイントを整理しましょう。
①承諾請求
賃借権の遺贈がある旨を地主に通知し、承諾請求を行います。
※内容証明郵便が良いでしょう。
②-1承諾
地主が承諾してくれれば問題無く遺贈できます。
②-2承諾がない場合
地主が承諾してくれない場合は裁判所に代わりに許可をして下さいと申請し、認められれば、地主が承諾したのと同じ効果が得られます。
(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
借地借家法19条:「借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。」
※申し立てが却下された場合は承諾が受けられなかったものとして、借地権については遺贈ができなかったということになり終了です。
③移転手続き
賃借人(地主)の承諾、裁判所からの許諾が得られたら、借地権付き建物の場合には建物の所有権移転登記、借家権の場合は引渡しを得る等して移転手続きを行います。
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