作成日:2017.08.10

表見取締役の責任


表見取締役の責任

Aは会社の代表取締役社長で甲地を建物所有目的でCに貸していました。

ところが息子Bが勝手に甲地をDに売却しDはCに出ていけと言ってしまっています。

息子Bは実際には代表権を持ちませんが、専務取締役という肩書を使用させていました。

Bが勝手に行った売却行為は有効になってしまうのでしょうか。

表見取締役の責任

有効になる可能性が高いです。

1、役職の肩書について

実務においては、取締役中に「会長」「社長」「副社長」「専務」「常務」等の名称を付した取締役(役付取締役と言います。)が規定されることが多いようです。

しかし、これらは法律で規定はありません。

会社法349条

1「取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。

2 前項本文の取締役が二人以上ある場合には、取締役は、各自、株式会社を代表する。

3 株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる。

代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。

5 前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。」

とあり、代表取締役がいる場合には取締役は会社を代表しません。

よって原則代表権を有しない取締役と契約などをしても代表権が無いので契約は有効になりません。

2、表見取締役

しかし、常にそのようにすると代表権があると信じて取引した相手方に大きな不利益を与えてしまいます。

そこで法は下記の制度を用意しました。

会社法354条:「株式会社は、代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。」


※要件

①取締役の名称におい会社の代表権を有すると認めるに足る外観が存在すること(外観の存在)

②外観の存在に対して会社が原因を与えていること(外観への与因)、

③外観を第三者が信頼したこと(外観への信頼)

の3点が必要とされています。


(1)①について

会社の代表権を有すると認めるに足る外観とは、取引通念上、会社の代表権の存在を表示するものと認められる名称のことです。

「社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称」とあり、頭取、取締役会長、取締役副会長などはこれに当たると考えられます。

(2)②について

 例えば会社が名称などを与えていないにもかかわらず、勝手に肩書を名乗って使用しているような場合には表見取締役の規定は適用されません。

ただ、そのような事実があるにもかかわらず会社が黙認や放置していた場合には責任を負う可能性があります。

(3)③について

 第三者が名称使用者が代表取締役でないことを知っていたという場合(悪意)は、会社が責任を免れます。

ただし、第三者が悪意である旨は会社側が立証しなければなりません。


※過失の程度は???

♦参考判例:最判昭52年10月14日判決

判旨:「(会社法354条)に基づく会社の責任は、善意の第三者に対するものであつて、その第三者善意である限り、たとえ過失がある場合においても、会社は同条の責任を免れえないものであるが、同条は第三者の正当な信頼を保護しようとするものであるから、代表権の欠缺を知らないことにつき第三者に重大な過失があるときは、悪意の場合と同視し、会社はその責任を免れるものと解するのが相当である。」

とし、重大な過失は悪意と同視し、会社は責任を免れられるとしています。

重大な過失とは少しの注意も行えるような場合のことを言います、この立証についても会社側でする必要があります。

3、本件の場合

①取締役の名称におい会社の代表権を有すると認めるに足る外観が存在すること(外観の存在)

→「専務取締役」という外観が存在します。

②外観の存在に対して会社が原因を与えていること(外観への与因)、

→父親である代表取締役が息子Bに対して専務取締役の肩書を付与している事情があります。

第三者Dが息子Bに代表権があると重大な過失なく信頼し取引した場合、会社はその契約の無効を主張することはできません。

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