作成日:2016.12.13
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①地主Aは期間満了に伴い明渡を求めたところ、借地人Bから、借地上の建物を買い取るよう請求されました。建物を買い取る義務はあるのですか。 ②借地人が地代を滞納したため借地契約を解除した場合はどうでしょうか。 |
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①の場合は建物を買い取る義務があります。 ②の場合は建物を買い取る義務はありません。 |
【詳細解説】
借地借家法13条:「借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。」 |
とあり、これを建物買取請求権と言います。
まだ利用できる建物を取り壊すのは社会的経済的に妥当ではないため、できるだけ建物を残すようにという根本的な考えがあります。
この建物買取請求権は形成権であるため、請求した時点で売買の効力が発生します。
※形成権:このように単独の一方的な意思表示のみによって法律効果を生じさせることのできる権利のことを総称して形成権と言います。
通常の建物売買であれば、売主には売るか売らないかを決める自由があり、買主にも買うか買わないかを決める自由があります。しかしながら、借地人が建物買取請求権を行使した場合には、当然に地主と借地人との間で建物の売買契約が成立したのと同じ効果が発生することとされているため、地主は、建物の買取りを拒否することはできません。
建物買取請求権が行使されると、借地人は、地主が建物の時価相当の代金を支払うまで建物を引き渡さず土地を占有することができます。地主としては、借地人に対して地代相当額は請求できますが、土地の明渡しを受けるためには建物の代金を支払う必要があります。
では、①と②の場合でどのような違いがあるでしょうか。
②の場合は借地人の賃料不払いという帰責事由があります。
そのような場合にまで、地主に建物買取義務があるとすると妥当ではないという価値判断が背景にはあると考えられます。
以下、判例を参考に考察してみましょう。
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としています。
これは旧法下の判例です。
地主と借地人とで合意解除により借地人が買取請求権を放棄したものと解されています。
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したがって、地代の支払いがなされなかったとしても、信頼関係が破壊される程度に至っていない場合には、そもそも借地契約を解除することができないという点に注意が必要です。
※参考:買取の価格は?
この場合の建物の買取代金は、建物の時価とされています。
建物の時価を算定する際には、建物の所在地の利便性など場所的利益は考慮されますが、原則として借地権価格は含まれません。
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