作成日:2016.11.07
【詳細解説】
1、一般に、契約は債務の不履行があれば、相当期間を定めて催告し相当期間内に履行がなければ解除することができます(民法612条2項)。
しかし、借地契約は、1回限りの履行がなされる契約と異なり、継続的に借地人が土地を使用収益する点に特徴があります。
判例(最判昭28年9月25日民集7巻9号979頁)も、612条2項は「賃貸借が当事者の個人的信頼を基礎とする継続的法律関係であることにかんがみ、…賃貸借関係を継続するに堪えない背信的所為があったか…(債務不履行があっても)背信的行為と認めるに足らない特段の事情がある場合においては同条の解除権は発生しないと解するべきである」(信頼関係破壊の理論)。
そのため、仮に、「1か月分でも地代の支払いが遅れたら催告なしに契約を解除することができる」という特約を入れていたとしても、1か月分の支払いの遅れだけでは、まだ信頼関係が破壊されているとまではいえず、契約の解除は認められないと考えられます。
また、信頼関係が破壊されたといえるかは、地代滞納の期間、借地人の態度、支払遅延にやむを得ない事情があるかなど、様々な事情を斟酌して判断されることになります。
2、賃貸借契約の解除について
上述したように賃貸借契約は信頼関係に基づく継続的契約です。
解除は解除権が行使されると原状に復する義務(原状回復義務)が発生すると解されていますが、賃貸借契約のような継続的契約にその原則を適用すると妥当ではありません。
というもの、すでに正当に履行された利用関係を原状に復して、契約を無効とするのは無意味で、妥当ではありません。
そのため、賃貸借契約が解除された場合には、将来にむかってのみ、その効力を生じることとしました(民法620条)。
3、催告の要否
一般的な解除は履行遅滞→催告→解除という手順を踏むのが原則です。
「解除をします」という催告を必要としないと、債務者に不測の損害を与える場合があるためです。
ただ、判例(大判昭7年7月7日民集11巻1510頁)によると、賃借人の違反行為が著しく信義に反するときは無催告解除も認めています。つまり、「解除をしますよ」という催告をすることなく、直ちに解除できるということです。
逆に些細な債務不履行では、権利濫用ないし信義則に反しないとして解除を認めないとしています(賃貸借契約の場合は信頼関係理論が適用されます)。
賃貸人は、賃借人の違反行為が著しく信義に反するか否かは不明な場合も多いので、一般の解除と同様に催告をすることで、契約を解消するよう進める方が後々も問題発生を回避することが出来ます。その他の記事
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