作成日:2016.11.05
更新日:2019.10.15
【詳細解説】
借地権の存続期間が終了して契約更新のない場合、借地権者は借地権設定者に対して、建物その他借地権者が権原により土地に付属させた物を時価で買い取るべきことを請求することが出来ます(借地借家法13条1項)。
借地借家法13条1項:「借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる」
借地契約が終了した場合、本来ならば借地人は建物を取壊し、更地にして返却しなければなりません。
しかし、使用に耐えられる建物を壊すことは社会経済的利益の保護及び借地人が建物のために投下した資本の回収が出来なくなってしまいます。
そこで借地人に「建物買取請求権」(借地借家法13条1項)を設けて借地に投下した資本の回収を可能にしました。
また間接的に地主に経済的負担をかけることによって更新拒絶をしにくいものにする効果ももっています。
それでは、どんな場合に「建物買取請求権」を行使出来るのか。
権利行使の要件は
①借地期間が満了したこと
②契約の更新がないこと
③借地上に建物があることである。
即ち、建物が存在し、借地契約の更新が出来なかった場合に建物買取請求権を行使することができます。
借地人が建物買取請求権を行使した場合、地主が買取を承諾しなくても、借地人の一方的な買取請求の意思が地主に通知されれば、それだけで強制的・自動的に建物の売買契約が成立します。
※このような単独の一方的な意思表示のみによって法律効果を生じさせることのできる権利を形成権と呼びます(※賃料の増減請求権も同様の形成権)。
通知は口頭、手紙、FAX等でも有効ですが、後日通知の有無で争いになることも考えられるので、内容証明郵便で通知する方が得策です。
地主(借地権設定者)は建物買取を拒否できず、建物を時価で買取ることになります。
どんなに古い建物であっても、建物に借家人が居住していても、建物に抵当権が付いていても地主は建物を買取ることになり、地主の所有物となります。
これによって、借地人は建物を解体し、更地にして返還する必要がなくなり、建物の解体費用も勿論、借地人が負担する必要がなくなる。
※買取価格について
買取価格の基準時は「建物請求権を行使した時点」での建物の買取価格である。
建物の時価は…
① 「建物が現存するままの状態における価格であって敷地の借地権の価格は加算すべきではないが、この建物の存在する場所的環境は参酌すべきものである」(最判昭35年12月20日)。
② 「建物自体の価格のほか、建物およびその敷地、その所在位置、周辺土地の関する諸般の事情を総合考察することにより、建物が現存する状態における買取価格を定めなければならない」(最判裁昭47年5月23日判決)。
つまり最高裁判決では、借地権価格自体を建物の時価に算入すること自体は否定していますが、場所的環境(場所的利益)として土地価格や借地権価格を考慮に入れて建物の買取価格を算定しているといえます。
※地主と借地人が合意の上で解約した場合
判例は「土地の賃貸借を合意解除した借地権者は買取請求権を有しない」(最判昭29年6月11日)としている。合意解除により借地人(借地権者)が買取請求権を放棄したものと解されています。
※地代不払い等の債務不履行や契約違反で契約解除された場合
判例は一貫して建物買取請求権を否定している(最判昭35年2月9日)。
これは債務不履行があった借地権者に建物買取請求権を認める必要性に欠けると判断したと考えられています。その他の記事
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