作成日:2020.04.01

借地権と配偶者居住権


借地権と配偶者居住権について

コンテンツ番号:401

・地主:A

・建物所有権者:B(Cの息子)

・配偶者居住権者:C(Bの母)

配偶者居住権のある借地権について、地代は住んでいる母(C)が支払っています。
ところが、建物所有者である息子Bが地主Aと結託して地代増額に応じてしまいました。

増額された地代を支払う資力はCにはなく、このままだと借地権が解除されてしまう可能性がありますが、何か有効な手立てはないのでしょうか。

借地権と配偶者居住権について

【詳細解説】

配偶者居住権

まず、配偶者居住権とは、「被相続人の配偶者が被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合に、その居住していた建物の全部について無償で使用及び収益をすることのできる権利」のことです。

<参考条文>

(配偶者居住権)
民法(改正)第1028条:被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。

2 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。
3 第九百三条第四項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。

※配偶者居住権詳細はこちら(https://century21-sell.jp/faq/276.html)
※配偶者居住権に関する規定は令和2年4月1日に施行されます。

本件の場合

まず、結論として、地主Aと建物所有者Bとの間で高い地代に改定されても、Cはそのこと自体については異議を申し立てる方法は無いと言わざるを得ません。

本件の場合

Cが不当に高額な地代については、支払わない旨を主張することも考えられますが、何をもって「不当に高額」というのかが不明確でお互いの主張に相違が出てくるでしょう。

ただ、そもそも、民法には私的自治の原則、契約自由の原則という契約の当事者同士が同意すれば、原則的にはその合意は有効です(公序良俗違反などは除く)。

そのため、地代の額の合意は自由なので、周辺の地代と比較し、異常と言えるだけの増額でなければ、「不当」とは言えないでしょう。

 

そのような場合、Cは結果的に配偶者居住権を放棄するしかなくなるケースが出てくるかもしれません。
こちらに関しては、今後の課題として挙げられています。

 

その他の問題点

(1)居住建物の修繕

例えば、本件事例でCが配偶者居住権を取得した自宅について、雨漏りを直すなど修繕を行った場合、費用負担はどのようになるのでしょうか。建物所有者のBと配偶者Cのどちらが負担することになるのでしょうか。

改正法を見てみましょう。

(居住建物の修繕等)
改正民法1033条:配偶者は、居住建物の使用及び収益に必要な修繕をすることができる。
2 居住建物の修繕が必要である場合において、配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、居住建物の所有者は、その修繕をすることができる。
3 居住建物が修繕を要するとき(第一項の規定により配偶者が自らその修繕をするときを除く。)、又は居住建物について権利を主張する者があるときは、配偶者は、居住建物の所有者に対し、遅滞なくその旨を通知しなければならない。ただし、居住建物の所有者が既にこれを知っているときは、この限りでない。
(居住建物の費用の負担)
第千三十四条 配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担する。
2 第五百八十三条第二項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。


とあるように、「通常の範囲内の修繕については、配偶者が費用を負担」します。

通常の範囲内の修繕については、明文上明らかですが、通常の範囲を超えた修繕についてはどうでしょうか。

 

改正民法1034条2項:「第五百八十三条第二項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。」

※準用元583条2項:「買主又は転得者が不動産について費用を支出したときは、売主は、第百九十六条の規定に従い、その償還をしなければならない。

 

条文の準用があり、少々わかりにくいですが、通常の修繕を超えた大規模な修繕の場合において、配偶者が工事費用を負担した場合は、「特別の必要費」として、通常の必要費を超える部分については建物所有者に請求できるという事になります。


本件で言えば、Cが大規模修繕をした場合には、Bに対して費用を支払うよう請求することができます。

それでは、借地契約締結の際に、「大修繕には地主の承諾を得る必要がある」との特約が付されている場合はどうでしょうか。

こちらは、条文上明確にはされておらず、実務の動向や判例の動向を見守るしかありません。

ただ、最悪の場合、特約違反としてCは配偶者居住権を失ってしまうかもしれません。

借地権を無断譲渡があった場合

次に、Bが地主Aの承諾なくして、借地権の譲渡を行ってしまった場合、これは借地権の無断譲渡になり、地主Aから借地契約を解除される可能性が出てしまいます。

そのような場合には、Cは配偶者居住権者を失うことになってしまう可能性があります。

借地権を無断譲渡があった場合

まとめ

いかがでしたでしょうか。
配偶者の関与しないところで、配偶者居住権が失われる可能性がある点が非常に大きな問題です。
しかも、配偶者居住権制度の導入はすぐそこに迫っているにもかかわらず、実は条文上想定されていない問題が多くあります。
こちらに関しては施行後の動向を注意深く見守る必要がありそうです。

※参考サイト
■法務省ホームページ:http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00237.html

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