作成日:2019.12.02
コンテンツ番号:366
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先日の台風でゴルフ場のネットが倒壊し、近隣の家屋が破損してしまうという事件がありました。 |
2019年10月の台風で話題になったゴルフ練習場のネット倒壊による近隣住宅への被害・・・いざ我が身になって考えてみると・・・もちろん巻き込まれたくないですよね。
実際に被害を受けた場合、誰にどのような責任追及ができるのでしょうか。
(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
民法717条1項:「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」
同条2項:「前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。」
同条3項:「前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。」
いわゆる工作物の占有者・所有者の責任追及です。
被害者に対しての責任の所在は、
①工作物の占有者
②工作物の所有者(※占有者が防止するのに必要な注意をしたとき)
上記順序で責任を負う形になります。
まずは工作物の「占有者」が責任を負うことになり、二次的に工作物の「所有者」が責任を負うことになります。
今回のゴルフ場の件で言えば、例えば、ゴルフ練習場の所有者がAであり、BがAから賃貸して練習場を営んでいた場合には、まず①Bが責任を負わされますが、Bが損害の発生を防止するのに必要な注意をしていた場合にはその責任を免れることができます(民法717条1項但し書き参照)。
その場合には、所有者であるAが責任を負う形になります。
いずれにしても実際に、ゴルフ練習場側が必要な注意義務を果たせたかという点が大きなポイントになりそうです。
例えば、ゴルフ場のネットを下ろしていれば今回のような被害はなかったかもしれません(風による抵抗が減るため)。
ただ、一方で史上最大級という規模の台風になり、災害的な台風の場合まで、責任を求めると言うのは酷かもしれません。
ゴルフ練習場側の立場に立てば、「今回は勢力が通常の台風とは異なり、過去に類を見ないケースだから仕方ない。」と主張したいでしょう。
被害者としては、現実的に被害を受けたのですから、当然賠償して欲しいと思う事でしょう。
いずれにしても被害者がゴルフ練習場の占有者や所有者に損害賠償を求めるには、ゴルフ練習場の鉄柱の設置や保存に瑕疵がある場合でなければなりません。
今回の台風ではゴルフ練習場の倒壊が話題になりましたが、その他にも下記のような被害があるかと思います。
・屋根瓦が飛んできて窓ガラスが割れてしまった
・店舗の看板が飛んできて怪我を負った
上記ケース以外にも、沢山あると思います。
このような被害にあってしまったら当然「賠償してもらいたい!」と思うものですが、このような自然災害による賠償義務は残念ながら原則としてありません。
大切な家が傷付けられてしまっても賠償義務が生じないケースがあるのです。
ただ、逆に腐食していた屋根や壁などを放置し、隣家に損傷を与えてしまうような場合には、賠償責任を負う可能性があります。
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