作成日:2019.07.22
コンテンツ番号:346
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戦前から(祖父の代より)甲土地(借地)に乙家を建て今も住んでいます(現在、家は相続により私A名義で登記)。 近い将来、他県に移住予定のため家を地主Bに買い取ってもらいたいと考えています。 契約書はありませんが、借地代の請求は平成の初め頃から父から私Aに変更され、その額(固定資産税の10倍位)を毎年欠かさずに払っています。 ①平成4年の新借地借家法以前から住んでいますので、旧法が適用されると考えますが問題はないでしょうか。 また、②買取額は「家の時価(地上権?)-家の解体・撤去費用」で算出されると聞いておりますが、いかがでしょうか? |
現在の借地借家法(以下、「新法」)は平成4年に施行されました。
「法律が変わったのに、なぜ旧法が適用されているんだろう?」と疑問に感じる方もいるかもしれませんが、平成4年以前に締結された借地権設定契約については旧借地借家法(以下、「旧法」)が引き続き適用されます。
法律が改定されたから20年経過しますが、借地権設定契約は数十年と長いことが多いので、現状、新法と旧法が混在しているといえます。
このように平成4年を分水嶺として旧法・新法か否か変わってきますが、平成4年より前に契約している場合でも、新たに新法で契約を締結しなおせば、新法が適用されることになります。
平成4年の新借地借家法以前から住んでいますので、旧法が適用されると考えますが問題はないでしょうか。
という点に関しては、「間違いではありません」が正確に言えば、「平成4年より前に借地権設定契約を締結しているので、旧法が適用される」という方が正確と言えます。
なお、旧法の借地権で契約を更新しても、新法ではなく旧法のままの取扱いになり、新たに契約を結びなおさなければ、新法の適用はありません(※一度現状の契約を解除し、新たに契約を結び直さなければなりません)。
そのため、借地権の多くが旧借地法の適用になっており、未だに旧借地法によるトラブルは発生し続けているというのが現状です。
例えば、旧借地法では借主側に更新の意思がある限り、地主側の都合で契約を解除するのは非常に難しいことでした。
更新の期間になったとしても借主に契約解除の意思がなければ自動的に更新されていってしまうのです。
新法では、定期借地権ができたことなどもあり、旧法よりも土地を返却してもらえる可能性は高くなっています。
旧法のままの契約は借地人には有利、新法の契約にすると地主に有利ということです。
ただ、旧法だろうと新法だろうとトラブルを防止するには地主と借地人との間の関係性や事前の取り決めが重要になることには変わりありません。
(1)建物買取請求権の買取価格について
建物買取請求権の価格について、借地借家法では以下のように規定されています。
(建物買取請求権)
借地借家法13条:「借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。」
この「時価」とはどのように算出されるのでしょうか。地主にとっては「建物をいくらで買い取らなければならないか」また、借地人にとっては、「いくらで売れるのか」という点で両者にとって非常に大きな問題です。
借地借家法13条にあるように「時価」で買い取るべきとされています。
では、時価とはどのくらいでしょうか?
♦最判昭35年12月20日判決
判旨:「建物を取り壊した場合の動産としての価格ではなく、建物が現存するままの状態における価格である。…その建物の存在する場所的環境については参考にすべきである。」
と判例では判断しています。
「建物の建設費から経年劣化分を差し引いた上で、場所的利益を含んだ価格」であると一般的には言われています。
(2)合意解除か期間満了かで異なる
本件ではAが他県に移り住みたいという理由で、借地権設定契約の終了及び、建物買取請求権を行使したいと考えられますが、借地権設定契約の終了の仕方で建物買取請求権が行使できるか否かの結論が変わってきます。
①期間満了による場合
こちらの場合には建物買取請求権を行使することができ、借地上に存在する建物を地主に時価で買い取ることを請求することができます。
②合意解除の場合
契約期間満了前に地主・借地人間で合意により契約が終了する場合には建物買取請求権の行使はできないとされています(大判昭和14年2月6日、最判昭和29年6月11日判決)。
建物買取請求権の行使に関する規定は、新法・旧法とも、「契約の更新がない場合」に行使することができると定められていることと、借地人の都合で合意解除した場合にまで、建物買取請求権まで認めるというのは地主にとっては酷な話となってしまいます。
※契約締結して1年足らずで合意解除した場合にまで、建物を買い取らなければならないとするのは非常に負担になってしまいます。
そのため、合意解除による場合には建物買取請求権は行使できないのです。
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