作成日:2019.06.10
借地権とは「建物を所有する目的で土地を借りる権利」のことをいいます。地上権と土地賃借権の2つに分かれますが、実際に利用されているのは殆どが土地賃借権です。
借地権の定義については借地借家法という特別法に記載があります。
借地借家法第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。
二 借地権者 借地権を有する者をいう。
三 借地権設定者 借地権者に対して借地権を設定している者をいう。
借地権は借地契約のタイミングによって適用される法律が異なります。「一度土地を貸したら、返ってこない…」等の問題を解決するため、1992年8月1日に法律改正がなされ、新法が成立施行されたためです。
借地契約の締結日がこの法改正より前の場合は借地法(旧法)が、後の場合は借地借家法(新法)が適用されます。
旧法と新法の主な違いは下記になります。
新法下では5つの借地権が新設されました。
①普通借地権
②定期借地権
③事業用定期借地権
④建物譲渡特約付借地権
⑤一時使用目的の借地権
①普通借地権:存続期間は非堅固建物・堅固建物に関係なく当初は30年、合意の上の更新なら1回目は20年、以降は10年となっています。
②定期借地権(一般定期借地権):契約期間は50年以上で,更新はなく契約終了後は更地にして返還する形式となります。
③事業用定期借地権:契約期間は10年以上50年未満で、こちらも②同様契約終了後は更地にして返還する形式となります。
④建物譲渡特約付借地権:契約時から土地所有者が建物を相当の対価で買取ることが決められている借地権です。
⑤一時使用目的の借地権:一時的に土地を借りる場合に設定されます(例:工事の際のプレハブ等)。
⑥自己借地権:自分の土地を自分で借りる借地権のことです。第三者が関与する場合に認められるようになりました。
なかでも、②③の定期借地権は大きなインパクトがありました。定期借地権は、更新を前提としない借地権であり、期間満了に伴い土地を更地にして返却する必要があります。これにより、一度土地を貸したら返ってこない、ということが無くなり、地主は土地を貸しやすくなりました。
借地権の活性化につながるであろうと期待しての新制度でしたが、新法が施行されてから時間がたった現在においても、存在する借地権の多くは旧法のままです。旧法時代の契約を新法適用の契約に移行するには、当事者間で新たに契約を締結する必要があります。
こちらは地主、借地人に分けて解説していきます。
安定的に地代の収入が得られる
土地の管理をせずに済む(借地人が管理してくれる)
<デメリット>
土地がなかなか返ってこない
いざ利用しようと思っても使えない
借地権付きの土地は売却しにくい、また、できたとしても安価
固定資産税を支払う必要がない(地主が負担)
<デメリット>
所有物ではない
更新時には更新料が必要な場合がある
建物を売却する際や増改築の際には地主の承諾がいる
借地権はなかなか売却できない
家を建てる際、ローンを組めない可能性がある
賃貸借一般については一般法である民法に規定されていますが、不動産の賃貸借に関しては、借地借家法という特別法で規定されています。借地権の定義に基づき、建物を借りる場合および建物を所有する目的で土地を借りる場合に、借地借家法が適用されます。
しかし明らかに⼀時使⽤として借地権を設定した場合は、⼀部の借地借家法の規定しか適⽤されません。
また使⽤貸借の場合も借地借家法は適⽤されませんのでご注意ください。
※使用貸借とはただで貸すことを言います。例えば、父親が息子夫婦のために土地をただで貸すような場合です。ただで借りている人をそこまで強く保護する必要はないという考えが背景にあります。
土地賃借権を第三者に主張するためには、貸主と共同で登記をすることが必要です。しかし登記をすると借主に強力な権利が与えられるため、協力的な貸主は少なく、結果として登記は実現できないことが殆どです。
そこで、借地借家法では、第三者対抗要件を緩和し、借主を保護するようにしています。
具体的には…
①建物所有目的で土地を借りる場合
建物登記で第三者対抗要件を備えられます。土地の賃借権の登記は不要です(借地借家法10条)。
②建物を借りる場合
引き渡しを受けることで、第三者対抗要件を備えることができます(借地借家法31条)。
※参考条文
(借地権の対抗力)
借地借家法第10条「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。」
(建物賃貸借の対抗力)
借地借家法第31条「建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。」
ここからは、借地契約を締結する際の注意点について解説していきます。
借地契約する際の注意点は大きくは2つです。
①書面で契約内容を残しておく
②安易な考えで土地を貸さない
実は借地契約自体に書面は必要なく、口頭のみで成立します。しかしだからと言って、契約内容を残しておかないのは後々のトラブルの元です。
契約内容や特約等をしっかりと書面で残し、貸主、借主双方が保管しておくとよいでしょう。
また実際にトラブルが起きてしまった際にも、双方の主張等を書面に記録しておくことは重要です。
借地権は1年や2年で返ってくるものではありません。
借地借家法3条:「借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。」
とあるように少なくとも30年は返ってこないのです。それどころか更新されてしまえばもっと長い間返ってこないこともあります。安易な気持ちで土地を貸してしまうと、後々痛い目を見る可能性があるので注意が必要です。
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借地人に契約違反があった場合、契約を解除することは可能でしょうか。 |
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賃貸借契約というのは債務不履行があった場合でも直ちに契約解除はできません。借主の住む家が無くなってしまうからです。家は生活には欠かせない重要なもので、法律で手厚く守られています。 一方で借主の行動があまりにひどい場合は、保護する必要もありません。 |
そこで判例は「信頼関係破綻の理論」という要件を作り、賃貸人、賃借人間の信頼関係が崩れたと認められる場合にのみ、貸主からの契約解除を認めることができるとしました。
① 地代の未払いが続いている場合
1回や2回の賃料未払いがあったのみでは、契約を直ちに解除することはできません。半年以上等長期にわたる不払いがない限り、信頼関係が破綻したとは判断されません。
② 本来、居住用の目的で土地を貸したにもかかわらず、工場を建築した等、用法違反があった場合
宅地として貸したにもかかわらず、工場を建てられたような場合には、重大な契約違反として、信頼関係はもはや破綻し、解除することができると言わざるを得ません。
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