2019.05.27

借地人が沢山いすぎてどうしてよいかわからない・借地人側が全員相続放棄してしまったら?


コンテンツ番号:338

①先日、借地人側に相続が起き、相続人が多数になってしまいました。

しかも、借家甲は長男が継いで住むのかと思いきや、兄弟8人が相続分に応じ、共同所有の形態をとるとのことです。

また、名義は兄弟8人の共同所有とのことですが、実際に住むのは長男夫婦になるとのことです。

地代に関しては、共同所有全員に請求するとなると、8人に請求しなければならず、非常に面倒になってしまいました。何か解決方法はありますか。

②仮に借地人側が全員相続放棄をした場合は、どのようになるのでしょうか。

【詳細解説】

①について

まず、事実関係を調査しましょう。

なぜ、借地人側が共同所有の形態をとるのか、また、実際に利用する人は誰なのか、地主側はしっかり調査する必要があります。

地代を誰に請求するべきか、明確にするためです。

知らぬ間に相続が発生し、しかも2次相続まで起きている場合等は、どこに相続人がいるのか探し回らなければならなくなります。

 

定期的に借地人側の状況を把握しておく必要があります。

さて、本件では甲家を長男が住むそうですが、その所有権は長男を含めた8人で共同所有する(持分割合は同一)とのことですが…

(共有物の使用)

民法249条:「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。」

とあるように、各共有者は持ち分前部について、「持分に応じて」使用することができます。

つまり、兄弟の相続分は各々、8分の1ずつであることから、この8分の1ずつを全員が、借家甲の利用をすることができます。

しかし、実際は、長男が住むということになっています。

この場合は、長男以外の7人は賃料相当額の金銭を長男に請求する権利があります。

  

実際に地主としてはこの住み続ける長男に対して、甲家の地代について請求できるようにし、その後の請求関係(兄弟間での地代の請求)は兄弟間で解決してくれというようなことができれば、地代請求の煩雑さは回避できます。

(もちろん相手方の同意はいりますが…)

②について

次に、借地人の全員が相続放棄をしてしまった場合はどうでしょうか・。

借地人側の全員が相続放棄をしてしまうと地主としては、地代を請求する者がいなくなってしまい、また、生前から地代の支払を滞納していていた場合、地代不払による解除明渡しを求めるにも解除明渡しを求めるべき者がいないことになってしまいます。

さらに、建物も無人のまま放置されてしまうという事態が考えられ、地主としてはそのまま放置しておくわけにはいかないと思います。

その際は、どのようにしたらよいのか、解説していきます。


亡くなった人に相続人がいないという場合(相続人全員が相続放棄をしたという場合も含まれます)、「相続人のあることが明らかでないとき」に該当し、亡くなった人の相続財産は法人とされ、その相続財産を管理する者、すなわち、「相続財産管理人」を家庭裁判所に選任してもらうことができます。

 

(相続財産法人の成立)

民法951条:「相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。」

(相続財産の管理人の選任)

民法952条1項:「前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。」

同条2項:「前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければならない。」

 

とあります。

地主が952条1項の「利害関係人」に当たるのか?という問題がありますが、地主は借地人の債権者でもあり、当然、「利害関係人」にあたりますので、自ら相続財産管理人の選任の申立てを行うことができます。

相続財産管理人は多くの場合、弁護士が選任されます。

選任された相続財産管理人は、家庭裁判所の監督の下に、相続人の探すとともに、相続財産を管理・換価し、清算を行います。

本件のように相続財産の中に借地権が存する場合には、相続財産管理人は、地主に対して地代を支払いつつ、清算のために借地権を売却、あるいは、競売による換価を行うことを進めていくのが通常です。

相続財産管理人が借地権を第三者に譲渡する場合、地主の承諾が必要となります(賃借権の譲渡には賃貸人(地主)の承諾がいるため。民法612条1項本文参照)。

地主は相続財産管理人から借地権の譲渡についての承諾を求められた場合には、認めることもできますし、当然、拒否することもできます。

また、地主が借地権の解消を望んでいるような場合には、地主自ら借地権を買い取ることを相続財産管理人に申し出ることもできます。

この場合には、買取価格などを相続財産管理人と協議していく形となります。

 

このように相続財産管理人の手続きなどは、専門的な知識や手続きが要りますので、専門家に相談するとよいでしょう。