2019.04.22

借地と地代の未払い賃金の請求


コンテンツ番号:335

20年前に父が亡くなり、私Aと弟Bとで、甲土地を相続しました。

甲土地上には乙建物があり、第三者のCが住んでいます(借地権設定契約あり)。

甲土地については、ABが2分の1ずつで共有しておりますが、

私Aは仕事の関係で管理などは一切せず、弟Bに任せています。

父が亡くなった後、Cからの地代はBが回収(10万/月)し、半分を毎月私Aの口座に振り込む形です。

しかし、先日父が締結した契約書を見ると、本来の地代は20万円ということが判明いたしました。

というのも、借地人側のCも相続が起きており(DEが2分の1ずつ相続)、Eが支払いをしていないため、10万円しか支払われていなかったのです。

期間としては15年前からになりますが、未払い賃金の回収はできますでしょうか。

また、他にアドバイスはありますでしょうか。

【詳細解説】

未払い賃金について

15年前から地代の半分の10万円が未払いとなっていますが、未払い分全額を回収するのは難しいと考えられます。

理由は、消滅時効の存在です。

消滅時効とは…

 (債権等の消滅時効) 

民法167条1項:「債権は、十年間行使しないときは、消滅する。」

同条2項:「債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。」

とあります。

債権を持っていても10年間行使をしないと、債権そのものが消滅してしまいます。

 (消滅時効の進行等)

民法166条:「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。」

とあるように、債権を行使できるとき(毎月の支払なら、その月ごと)から消滅時効の進行は始まってしまいます。

そのため、本件では、10年より前の5年分の地代については、消滅時効により支払ってもらえない可能性があります。

ただ、消滅時効も当然のように、自動で債権が消えるわけではありません。

(時効の援用)

民法145条:「時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。」

とあります。

「援用」とは、時効の利益を受けるということを相手に伝えること、端的に言えば「債権は消滅時効により消滅しています」という意思表示です。


債務者(本件では借地人側)は消滅時効を援用する権利はありますが、絶対に援用しなければならないわけではありません。

そのため、交渉次第では地代の支払いをしてもらうことができます。

ただ、現実的には消滅時効にかかっている地代については、回収は難しいと考えたほうがよいでしょう。

遅延損害金の請求

10年以上前の5年分の地代が請求できないとしても、10年内の遅れている地代については、別途遅延損害金の請求をすることができる可能性はあります。

(法定利率)

民法404条:「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年5分とする。」

(債務不履行による損害賠償)

民法415条:「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。」

(金銭債務の特則)

民法419条1項:「金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。」

とあります。

賃貸借(借地権設定契約)における賃料(地代)の支払債務は金銭債務であるので、その債務不履行の場合には、損害賠償として、借地人側は地主に対しその不払額に年5%の法定利率による利息を付して支払わなければならないことになります。

消滅時効にかかっていない部分で、支払いが滞っている地代については別途、遅延損害金を請求できる可能性があります。

このようなことにならないようにするためには、相続があった際は必ず元々の契約書を確認する、また、借地人側にも確認をとることが非常に重要になってきます。

気が付いたら手遅れ…というケースも少なくありません。

自己の共有持分を売却する

今回は地主側、借地人側ともに共有状態になっています。当事者の人数が増えてくると権利関係は複雑になります。

また、2次相続や3次相続などが起こると、関係者がどんどん増えてきて、いざ処分をしようと思うと、なかなかうまくいかないケースがあります。

共有持分は自己の持分のみであれば、自己の判断で売却することができます。

他の共有者に買い取ってもらうのもよいですが、第三者に売却して、現金化するのもよいでしょう。

いつか必ず、整理しなければならなくなりますので、売却を含めて整理は早期に検討するべきです。