2018.12.25

空き家ごと売却したい


コンテンツ番号:298

借地権を売れるのならば売却してしまいたいという相談です。甲土地に借地権を設定し乙建物がありますが乙建物は所有権および登記は私(A)名義ですが、空き家です。

できれば乙建物ごと売却してしまいたいのですが、可能でしょうか。

【詳細解説】

売却自体は可能

乙建物の所有権及び登記はAですので、当然、乙建物を処分できそうです。

民法上でも、所有権があれば使用収益処分ができると明記もされていますが…

(所有権の内容)

民法206条:「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。」

借地上の建物を譲渡するとはどういうことか整理してみましょう。 

建物を売却するということは、建物だけが所有権が移転するので何も問題ないように思えますが、建物は土地がないと存続できません。


本件では乙建物は甲土地上に存在します。そして、ここには土地利用権(土地賃借権)が設定されています。

すなわち、乙家を売却する=土地利用権(土地賃借権)もついてくることになります。

目には見えない、土地利用権(土地賃借権)が乙家にはあるのです。

売却の際の注意点

さて、借地上の建物を譲渡する=土地利用権(土地賃借権)もついてくるということになると話は変わってきます。

以前にも述べたことがありますが、注意点があります。

それは、借地上の建物の譲渡の際には、「地主の許可をもらうこと

理由は下記条文にあります。

(賃借権の譲渡及び転貸の制限)

民法612条1項:「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。

同条2項:「賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。」

借地権も賃借権の一種です。

賃貸人(地主)に許可なく、借地上の建物を売却すると、契約を解除されてしまう可能性があるため注意が必要です。

契約を解除された場合には、土地を適法に占有し続ける権利は無くなりますので、不法占拠となってしまいます。


また、借地契約終了時に行使できる建物買い取り請求権は、債務不履行により契約の解除の場合には、行使できません。

裁判所の許可を得るという方法

地主に相談したが、売却を許可してくれない…

そんな時は、裁判所に許可を求め、許可をもらえれば、「適法」に譲渡や転貸をすることが可能になります。

(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)

借地借家法19条1項:「借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。」

とあります。

「…当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができ。」

とあるように、無条件で許可が出ることは、まずないと思ってください。


許可を与えられる代わりに、地主に対して○○円支払えということが通常です。


地主に許可をもらえた場合でも、承諾料を支払うことが通常ですので、いずれにせよ譲渡する際は金銭を地主に支払う必要が高いと言えるでしょう。