作成日:2018.05.21
更新日:2019.09.06
相続した借地権を売却したい
コンテンツ番号:237
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甲土地は父がAから借地権を設定してもらい乙建物を建てて住んでいました。 先日父が亡くなり、娘の私(B)が相続をしました。 私は結婚し遠くに住んでいるので、乙建物を売却して現金を得ようと不動産屋さんに売りに出しました。 ところが、地主Aが乙建物を売ろうとしていることに激怒し認めないと言っています。 乙家は父が建てたもので、相続した私の所有物であるので、処分するのは自由だと思うのですがどうでしょうか。 また、何か良い方法はありますか。 |
Bがいう「乙家は父が建てたもので、相続した私の所有物であるので、処分するのは自由」という点については、気持ちはわかりますがそう簡単にはいかないのです。
建物は土地無くして存続できません。
建物だけ土地から分離して譲渡するということは現実的にはあり得ません。
そうすると必然的に土地の利用権も建物の譲渡によって譲渡されることになります。
よって、建物を譲渡するということは必然的に土地の利用権である、借地権の譲渡も伴ってしまうということになります。
すなわち、借地権の譲渡に当たります。
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
民法612条1項:「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」
同条2項:「賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。」
とあるように、賃借権の譲渡には賃貸人の承諾がいります。
借地権も賃借権の一種なので、その譲渡には賃貸人たる地主の許可がいります。
そのため、Bの言うようにいくら建物は自身の所有物であっても、売却する(譲渡する)には地主の承諾を得る必要があります。
勝手に譲渡してしまうと、土地の賃貸借契約を解除されてしまいます。
契約を解除されてしまうと原状回復義務が発生します。
原状回復義務とは契約時の状態の戻し、賃借物を返さなければいけない義務ともいうべきでしょうか。
本件でいうと、土地上にある建物を取り壊し、更地にして土地を返す必要があります。
もちろん工事費は借地人の負担です。
※賃貸アパートから出ていく時に家を空っぽにして出るのと同じイメージです。
場合によっては、損害賠償請求される可能性もあり、無断譲渡は注意が必要です。
(1)話し合い
当たり前なことかもしれませんが、まずは真摯に状況を説明すべきです。
その上で、「うまく売却できた場合には承諾料を支払います」などと地主にも利益があるように交渉することも重要になります。
(2)法的措置で和解を目指す
借地非訟という制度があり、法的制度を利用して和解を目指す方法もあります。
(3)裁判所に譲渡の許諾を代わりにしてもらう。
(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
借地借家法19条:「借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。」
地主が許可しない場合には裁判所が変わって許可を与えてくれます。
裁判上の手続きを使えば地主の許可が得られなくても適法に借地上の建物だけを譲渡することができます。
専門的な手続きになるため弁護士などの専門家への相談、依頼はした方が良いでしょう。
相続法については改正法が成立し、今後新制度が施行されていきます。
特に遺留分の制度等は現行法から大きく改正されます。
遺留分に関する新制度についての詳細はこちらをご参照ください。
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