作成日:2017.11.13

無権代理人の地位を相続


無権代理人の地位を相続

①地主Aの息子Bが勝手に土地をCに売却してしまいました。

しかし、その後Aは病気で亡くなり唯一の相続人BがAの財産の一切を相続しました。BはAの地位を相続したことを理由に追認を拒絶できるのでしょうか。
②、①とは逆に息子Bが亡くなってしまい、AがBを相続した場合はどうでしょうか。

無権代理人の地位を相続

1、無権代理人(B)が本人(A)を相続した場合(相続の一般的効力)

民法896条:「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」

 「被相続人の財産に属した一切の権利義務」とは、プラスの財産に限らず、マイナスの財産、または履行義務等の一切を含みます。


したがって、BはAの本人としての地位(無権代理をされた被害者としての地位)も相続によって承継することになり、Bは…

(1)Aの地位(無権代理をされた被害者としての地位)と
(2)無権代理をした本人の地位が併存することになります。

以下、本人としてできる行為、及び無権代理人の責任を整理します。

 

(1)<本人(A)ができる行為>

 (無権代理)

民法103条:「代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。」

①追認

②追認拒絶


 

(2)<無権代理人(B)の責任>

(無権代理人の責任)

民法117条:「他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。」

 ③履行責任

 ④履行できない場合相手方への損害賠償責任

 

Bは主に①追認、②追認拒絶、③履行責任、④履行できない場合相手方への損害賠償責任を有していることになります。

この中で、②の追認拒絶ができるかというのが最大の問題点です。

Bは無権代理人をした張本人であるにもかかわらず、本人の地位を援用し追認拒絶できるとすることを許してよいかという問題です。


判例は同様のケースで下記のように判示しています。

♦参考判例: 最判昭昭和37年4月20日判決

判旨:「無権代理人が本人を相続した場合においては、自らした無権代理行為につき①本人の資格において追認を拒絶する余地を認めるのは信義則に反するから、右無権代理行為は②相続と共に当然有効となると解するのが相当である」

 としています。

 ①信義則を根拠に追認は認めず、②相続と共に当然に有効となるとしている点がポイントです。

 

 

2、本人(A)が無権代理人(B)を相続した場合

①とは逆に、AがBを相続した場合はどうでしょうか。

Aは、無権代理人の地位も受け継ぐことになるので、この場合、Aは…

本人として①追認、②追認拒絶のできる地位があり、Bを相続した結果、無権代理人の責任として③履行責任、④履行できない場合相手方への損害賠償責任

上記4点があることになります。


このような場合について判例は…

♦参考判例: 最判昭37年4月20日判決

判旨:「本人が無権代理人の家督を相続した場合、被相続人の無権代理行為は、右相続により当然には有効となるものではない。


としています。


当然に有効とはならないとしていることからも、無権代理行為をされた本人は本人として、追認拒絶をすることができます。


しかし、追認拒絶をした場合、無権代理人としての地位も相続してしまっているため、相手方に対する損害賠償は本人が支払う必要はあります。

※本人が追認した場合、無権代理行為は有効となります。

当然に有効とはならないといっても、残念ながら無権代理をされた本人は大きな損失を負ってしまうことには変わりありません。
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