占有権とは|用語集
占有権とは
意義:物を支配する権利のこと
占有権の取得
民法180条:「占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。」
- 所有権との違いを例に解説していきます。
所有権とは所有物を直接的・全面的に支配して、「使用・収益・処分」をする権利をいいます。
一方、占有権とは人が物に対して「事実上支配する状態」を認める権利のことをいい、自己のためにする意思をもって物を所持するという要件を満たすことで取得します。
例:賃貸物件に住んでいる場合
占有権よりも所有権の方が強い権利ですが、占有それ自体も法律によって保護を受けています。
例えば上記例でいくら所有権者と言ってもAの大家さんが占有者であるBに対して強制的に退去させることは違法です。
占有物について行使する権利の適法の推定
民法188条:「占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。」
とあるように、真実は違法に占有している人であっても、占有しているだけで、適法な占有と推定されてしまいます。もちろん家を現実に支配している人が無権利者であることが確定すれば、占有権は最終的には失われることになりますが、裁判が確定するまでの間は占有権によって事実状態が保護されることになります。
また、占有権者に対しても1. 占有保持の訴え、2. 占有保全の訴え、3. 占有改修の訴えの3つを占有権者に固有の訴えを認めています。
1. 占有保持の訴え
民法199条:「占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。」
2. 占有保全の訴え
民法199条:「占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。」
3. 占有回収の訴え
民法200条1項:「占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。」
民法200条2項:「占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。」
- なお、真実の権利者が長期間にわたって権利を主張せず、無権利者の占有状態が長期間継続した場合には、無権利者が土地の所有権を取得することが認められている(所有権の取得時効)
この記事の監修者
弁護士
弁護士。早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。地代滞納、建物明け渡しなど借地権・底地権の案件へ積極的に取り組む。主な著書に「一番安心できる遺言書の書き方・遺し方・相続の仕方」「遺言書作成遺言執行実務マニュアル」など。