借地の一部を駐車場として貸し出すのは違反?|弁護士Q&A
借地の一部を駐車場として貸し出すのは違反?
ご相談内容
私はAから建物所有目的で甲土地を借りました(甲土地の借地権設定契約)。
その後、乙建物を建て住んでいましたが、土地が広く(甲土地の面積100㎡)余っている部分を駐車場として作り、第三者Bに貸しました。
※駐車場部分の面積は約20㎡程度で、土地全体の面積20%程度
※駐車場の契約内容は、自動車1台の駐車場として賃料を月額2万5000円定めるほか、敷金、第三者への賃借権の譲渡転貸の禁止等について詳細な条項を定め、賃貸期間については1年間で合意による更新可能としました。
ところが、地主であるAから、「私(地主A)の許可を得なければだめじゃないか!」と言われています。
借地の一部で、しかも2割程度であれば、問題ないと考えていますがいかがでしょうか。
詳細解説
借りた土地を転貸(又貸し)するには
土地を借りた人が別の第三者に転貸(又貸し)する場合には、地主(賃貸人)の承諾がいるのが原則です。
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
民法612条1項:「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」
賃借人は賃貸目的物を利用する権利はありますが、第三者への又貸しをするような権利までは付与されません。所有者である賃貸人の承諾が必要になります。
民法612条の趣旨は、賃貸借契約は賃貸人と賃借人の信頼関係に基づく契約であることから、賃借人が勝手に変わるということは賃貸人にとっては不利益になる可能性があるため、(財産がない人や危険な人に賃貸など)転貸するには地主の許可を必要としています。
本件では、賃貸目的不動産の一部のみの又貸しですが、これはどうでしょうか。判例の判断を見ていきましょう。
判例の結論
本事例は東京地方裁判所平成5年3月29日判決を参考にしています。実際の地裁の判断は下記になります。
♦判旨①:「民法612条の趣旨に照らせば、第三者に使用収益をさせた対象が賃貸借の目的物である借地の一部であるからといって民法612条にいう「転貸」に該当しないということはできない。」
→まず、例え借地の一部を転貸したとしても民法612条の「転貸」に該当する。
♦判旨②:「本件においては、契約内容及び利用形態であることに照らせば、本件駐車場部分を駐車場として使用させたことは転貸に該当する。たしかに、借地上に商店、飲食店、劇場等の、不特定多数の顧客の来訪を伴う建物を所有ないし管理する場合において、自動車を利用する顧客の来訪を容易ならしめるために、右建物に付属して不特定多数の顧客を対象とするいわゆる時間貸しの駐車場を設置するような場合には、第三者を対象とする駐車場として借地の一部を使用することが、社会通念上右建物所有ないし管理の目的の範囲内の利用行為と認められ、転貸に該当しないものと認められることもあり得るものといえる。」
→本件の場合には、「地主の承諾は必要」と判断をしました。
すなわち、特定の賃借人を対象として賃貸期間を1年間しかも更新を前提とする駐車場契約を締結しており、甲土地の一部を第三者に駐車場として使用させたことについては、社会通念上甲土地の目的の範囲内の使用と認めることは到底できないということになります。
無断で甲土地の一部を駐車場として第三者に貸した行為により、契約が解除される可能性や、契約不履行(債務不履行)に基づく損害賠償を支払わなければならない可能性があります。ただ、例外が認められる可能性があると判例では述べています。
- 借地上に商店、飲食店、劇場等の、不特定多数の顧客の来訪を伴う建物を所有ないし管理する場合
- 自動車を利用する顧客の来訪を容易ならしめるために、不特定多数の顧客を対象とするいわゆる時間貸しの場合
上記2つの要件を満たす場合には、いわゆる転貸とはならず、地主の許可がいらない可能性があります。事前に地主に相談していれば、このようなトラブルは避けられたかもしれません。
地主は自分に黙って勝手に駐車場にして第三者に貸したことを気に食わないと思っている可能性が高く、地代が安定的に入ればそこまで憤慨しないはずです。借地人(賃借人)は自らの判断のみで勝手な行動はせず、地主や専門家に相談した上で判断する方がよいでしょう。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で借地非訟手続きや建物買取請求権の行使など今社会問題化しつつある借地権トラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。