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借地借家法で認められる立ち退きの正当事由と交渉のコツは?

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借地借家法で認められる立ち退きの正当事由と交渉のコツは?

借地借家法で認められる立ち退きの正当事由と交渉のコツは?

目次

借地借家法のもとでは、地主が借地人に立ち退きを求めるには「正当事由」が必要とされており、単に契約期間の満了や地主の都合だけでは立ち退きを強制できません。

では、どのようなケースで正当事由が認められるのでしょうか?また、借地人とトラブルを避けながら円滑に交渉を進めるにはどうすればよいのでしょうか?

この記事では、立ち退きが認められる条件や、交渉を有利に進めるためのポイントをわかりやすく解説します。

立ち退き交渉の2つのパターン

借地権における立ち退き交渉とは、地主が借地人に対し、借地上に建っている建物からの退去を求める交渉を指します。立ち退きを求める場面は、主に以下の2つに大別されます。

①地主の都合による立ち退き交渉(契約違反なし)

借地人に契約違反がない場合、立ち退き料の支払いが必要になることが一般的です。主なケースとして、以下が挙げられます。

  • 建物の老朽化による建替え
  • 地主自身が土地を利用する必要がある
  • その他に正当事由がある場合

この場合、借地人の生活や事業に影響を与えるため、立ち退き料の提示や引っ越しの支援を含めた交渉が求められます。

建物の老朽化による建替え

建物が朽廃・老朽化し、安全性の確保が難しくなった場合、立ち退きを求めることができます。

ただし、築年数が古いだけでは正当事由と認められにくく、耐震診断結果や劣化状況を証明する資料が必要になります。

また、借地人が安心して退去できるよう、代替物件の提案や立ち退き料の支払いが交渉を円滑に進める鍵となります。行政からの指導や建築基準法の改正など、客観的な事情があると立ち退きの正当性が高まります。

地主自身が土地を利用する必要がある

地主が自己または親族の居住や事業用途など、やむを得ない事情でその土地を使用する必要がある場合も、立ち退きが認められる正当事由となり得ます。

ただし、単なる「使いたい」という理由では不十分であり、具体的な利用計画や必要性の立証が求められます。例えば、転勤先から戻り自宅として使用する場合や、親の介護のために住む必要がある場合などは、正当事由として認められやすいです。

交渉を円滑に進めるため、誠意をもって事情を説明し、適切な立ち退き料を提示することが重要です。

その他に正当事由がある場合

再開発計画への協力、周辺環境の変化、建築基準法や条例の改正など、特定の事情が立ち退きの正当事由として認められるケースもあります。

例えば、自治体による都市計画の一環としての立ち退き要請や、近隣住民とのトラブルを回避するための対応などが該当します。

ただし、これらの理由も地主の一方的な都合とならないよう、客観的な証拠や公的な要因を交渉材料にすることが不可欠です。適切な立ち退き料の提示や代替案の提案が、円滑な交渉のカギとなります。

②借地人の契約違反による立ち退き交渉

借地人が地代滞納や無断転貸などの契約違反を行っている場合、地主は契約解除により退去を求めることができます。この場合、立ち退き料の支払い義務は発生しません。

  • 地代の長期滞納
  • 契約に違反した用途での使用
  • 近隣トラブルを引き起こしている

契約違反が認められれば、法的手続きを経て強制退去を進めることも可能です。

家賃の長期滞納

借地人が地代を長期間滞納している場合、契約解除を理由に立ち退きを求めることが可能です。一般的に、3カ月以上の滞納が継続すると、信頼関係が破綻したと判断されやすくなります。

地主はまず内容証明郵便などで支払いを督促し、それでも改善が見られない場合は契約解除を通知します。交渉が難航した場合、裁判による明渡し請求や強制執行も視野に入れるべきです。

なお、このケースでは立ち退き料の支払いは不要ですが、速やかに専門家へ相談することが重要です。

契約に違反した用途での使用

土地賃貸借契約書で定められた使用目的に反して、事務所として使用する、無断で転貸する、民泊営業を行うなどの行為が発覚した場合、契約違反として立ち退きを求めることができます。

特に、無断転貸は地主の許可なく第三者が使用するため、契約の根幹に関わる重大な違反とみなされます。まずは違反行為を証拠として記録し、是正を求める通知を送付します。改善が見られない場合は契約解除を通告し、交渉または法的手続きを進める必要があります。

近隣トラブルを引き起こしている

騒音・異臭・不法投棄・暴力行為など、近隣住民に迷惑をかける行為が続く場合、借地人に対して立ち退きを求めることができます。

特に、警察への通報や自治体からの指導が繰り返されている場合、信頼関係の破綻を理由とした契約解除が認められやすくなります。まずは苦情の記録や証拠を集めた上で、改善を求める通知を送ることが重要です。改善が見られない場合は、裁判を通じた退去請求を検討し、速やかな解決を図るべきです。

本記事では、主に「地主の都合による立ち退き交渉」(契約違反がないケース)について詳しく解説します。

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借地人への立ち退き交渉を成功に導く4つのステップ

立ち退き交渉は、借地人の権利を尊重しつつ、地主の正当な要求を伝え、合意形成を目指すプロセスです。交渉の進め方はケースバイケースですが、一般的に以下の4つのステップを踏むことで、円滑かつ戦略的に進めることが可能です。

ステップ1:立ち退きの必要性を明確に伝える

最初に、借地人に対して立ち退きを求める理由を丁寧に説明することが重要です。理由には以下のようなものが考えられます。

  • 建物の老朽化・安全性の問題(耐震診断結果を提示すると説得力が増す)
  • 貸主自身の使用目的(自ら居住・事業利用のためなど)
  • 再開発・建替え計画の実施

この段階で、理由の説明に不明瞭な点があったり、虚偽の内容が含まれていたりすると、後々トラブルの原因となるため、正確な情報をもとに交渉を進める必要があります。

ステップ2:借地人の事情を把握し、適切な提案を行う

立ち退き交渉を円滑に進めるためには、借地人が抱える懸念や障害を把握し、それを解決する具体的な提案を行うことが重要です。地主側の一方的な要求ではなく、借地人にとってのメリットを示しながら交渉を進めることで、合意に至る可能性が高まります。

借地人が立ち退きを拒む理由はさまざまですが、主に以下のような点が問題となります。

  • 新たな物件探しの負担
    現在の建物を長年使用されている場合、借地人にとって移転先を探すこと自体が負担となります。特に、住宅の場合は通勤・通学の利便性、オフィスや店舗の場合は立地条件や顧客の流れが重要となるため、適切な代替物件が見つからないと移転に難色を示すことがあります。
  • 移転費用の問題
    立ち退きに伴う引っ越し費用、原状回復費用、新しい物件の敷金・礼金などが借地人にとって大きな負担となる場合があります。特に、店舗や事務所の場合は内装工事費や営業の一時中断による損失も考慮する必要があります。

さらに、借地人の立場に立ち、単に「立ち退き料を支払う」といった条件提示だけでなく、実際に移転しやすい環境を整えることが有効です。

具体的には、

  • 物件紹介
    現在の住居や事業環境に近い物件を複数提案し、選択肢を増やす
  • 費用負担
    敷金・礼金、家賃差額、仲介手数料などを負担することで、経済的な負担を軽減
  • スケジュール調整
    引っ越し時期や立ち退きの期限を柔軟に調整

といった配慮が求められます。

これらの要素を考慮することで、借地人の移転に対する不安や抵抗感を減らし、スムーズな移転を実現できるでしょう。

ステップ3:立ち退き料・移転時期・契約条件を交渉する

立ち退き交渉の核心となるのが、立ち退き料の提示と移転スケジュールの調整です。

  • 立ち退き料の相場と計算方法
    • 住宅の場合:借地の評価額×借地権割合が目安となる
    • 事業用物件:営業損失や移転コストを考慮し、ケースバイケースで算定
  • 立ち退き料の支払い方法
    • 一括支払い or 分割払い
    • 初期費用(敷金・礼金など)の前払いオプションを検討
  • 移転時期の調整
    • できるだけ早い移転を求めつつ、借地人の事情も考慮

なお、借地権の立ち退き料には、明確な相場はありません。借地人が納得しやすい条件を提示することが、合意形成の鍵となります。

ステップ4:合意の文書化と、交渉決裂時の対応策を準備する

最終的な合意内容は必ず書面化し、口頭合意ではなく契約書や覚書として残すことが重要です。

合意書には、最低限以下の内容を記載しておきましょう。

  • 立ち退き料の金額
  • 立ち退きの期限

また、交渉が決裂した場合の代替策も事前に検討しておく必要があります。代替策については、次で詳しく解説します。

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借地人が立ち退きを拒否する場合の対処法

借地人が立ち退きを拒否する場合の対処法としては、主に以下の3つがあります。

  • 裁判による立ち退き請求(ただし、更新時期に限る)
  • 底地の売却による対処(借地権借地人付きでの売却も選択肢)
  • 借地人が退去するまで待つという長期戦略

①裁判による立ち退き請求(更新時期に限る)

借地借家法では、賃貸借契約の更新時期でなければ、地主の都合での立ち退きを求めることは困難です。そのため、契約更新のタイミングで、正当事由(建物の老朽化や自己使用の必要性など)を示し、立ち退き料の提示を含めた交渉を行います。

交渉が決裂した場合は、裁判を通じて立ち退きを求めることが可能ですが、裁判所が正当事由の有無や立ち退き料の適正額を慎重に判断するため、相応の時間とコストがかかります。

②底地を売却する(建物はそのままの状況で)

立ち退き交渉が難航する場合、底地を第三者に売却する選択肢もあります。

底地の第三者への売却は、立ち退き料の負担を避けつつ資産の処分が可能になります。買主が立ち退き交渉を引き継ぐケースもあり、売却先としては不動産投資家や買取業者が考えられます。

ただし、底地は市場での需要が少ないため、相場を考慮した売却戦略の立案が重要です。

③借地人が退去するまで待つ、タイミングを見て再交渉をする

相続などのタイミングで借地人が自発的に退去するまで待つのも一つの選択肢です。特に、高齢の借地人が住み続けているケースでは、時間をかけて自然退去を待つことで、法的手続きや立ち退き料の負担を回避できます。

また、借地人の事情を把握し、適切なタイミングで再交渉を試みることも有効です。長期的な視点での対応が求められるため、将来的な売却や相続を見据えた資産運用の計画が不可欠となります。

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まとめ

借地人に立ち退きを求めるには、「建物の老朽化」や「地主側の利用目的」などの正当な理由が必要です。

しかし、たとえ正当事由があっても、借地人が必ず退去するとは限りません。また、立ち退きに際しては多額の立ち退き料を支払わなければならないケースもあります。

もし、底地を有効活用したいのに立ち退きの正当事由がない場合は、底地の売却を検討するのもひとつの方法です。

底地を売却すれば、その資金をもとに新たな土地を取得し、自由に活用することが可能です。ところが、底地は活用の自由度が低いため、通常の仲介ではなかなか買い手が見つかりません。

そこで、底地を専門とする不動産会社に相談することで、スムーズな売却が実現できます。

センチュリー21中央プロパティーでは、底地の売却を積極的にサポートしています。

  • ✔ 借地人との交渉が難しくて困っている
  • ✔ すぐに底地を現金化したい
  • ✔ 立ち退きを求めるのが難しい

こうしたお悩みをお持ちの方は、ぜひセンチュリー21中央プロパティーまでご相談ください。

専門スタッフがお客様の状況に最適な解決策をご提案いたします。

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借地の立ち退きに関するよくある質問

Q.借地人に立ち退きを求めるには、どのような正当事由が必要ですか?

A. 借地借家法では、地主が借地人に立ち退きを求める場合、以下のような「正当事由」が必要です。

  • 建物の老朽化(倒壊の危険がある、建て替えが必要など)
  • 地主自身が土地を利用する必要がある(自宅を建てる、事業用に活用するなど)
  • 土地の適正な利用が妨げられている(長期間使用されていない、違法な用途で使用されているなど)

これらの理由があっても、借地人の事情も考慮されるため、交渉には慎重な対応が必要です。

Q.立ち退きをスムーズに進めるための交渉のコツはありますか?

A. 借地人との交渉を円滑に進めるためには、以下のポイントが重要です。

  • 誠意をもって話し合う(強制的に進めるとトラブルの原因になります)
  • 適正な立ち退き料を提示する(相場を調べ、借地人が納得しやすい条件を用意)
  • 専門家を活用する(弁護士や不動産会社に相談し、スムーズな交渉を進める)

借地人の納得を得るために、できるだけ円満な解決を目指すことが大切です。

Q.立ち退き交渉が難しい場合、他にどのような選択肢がありますか?

A. 立ち退きを求めるのが難しい場合は、底地を売却するのも有効な選択肢です。

  • 底地を売却すれば、借地人とのトラブルから解放される
  • まとまった資金を得て、新たな土地を購入・活用できる
  • 底地専門の不動産業者なら、借地権の問題を解決しながらスムーズに売却可能

Q.地代の滞納を理由に契約を解除した場合、解除後に借地人の建物を取り壊すことはできますか?なかなか明け渡してくれず困っています。

地代の滞納を理由に契約を解除した場合でも、借地人の建物を勝手に取り壊すことはできません。

賃貸借契約(借地権設定契約)が地主によって解除された場合、解除された時点から借地権者は権限を失い不法占拠状態となります。しかし、だからと言って、敷地内の物を搬出したり、建物を壊したりすることは許されません。

正当な権利者であっても正式な(裁判等の)手続きによらずに、実力で自分の権利を実現することを自力救済と言います。例えば窃盗された物を窃盗し返すということを自力救済と言います。自力救済を認めてしまうと実力で権利を実現しようとし、社会が混乱し秩序が乱れてしまいます。そのため、いくら正当な権原があっても、正当な手続きを踏んだうえでなければならないということになります。

上記のように自力救済は禁止されていますので、地主が契約を解除した後に実力で借主を追い出すことは、当然許されません。そればかりか、違法行為として損害賠償責任や刑事罰(住居侵入罪、建造物侵入罪や器物損壊罪等)となることもありますので、ご注意ください。

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この記事の監修者

都丸 翔五トマル ショウゴ

社内弁護士

当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。

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