借地借家法に関して起きやすいトラブル|事前にできる防止策は?
借地借家法に関して起きやすいトラブル|事前にできる防止策は?
目次
借地借家法は、賃貸人と賃借人両方の権利を明確にするための法律です。賃貸人と賃借人の双方が安心して契約を結べるようにするほか、どちらか一方による不当な要求が認められないようにする役割もあります。しかしながら、こうした借地借家法を巡ってトラブルに発展することも少なくありません。
そこで今回は、借地借家法に関して起きやすいトラブルと、その防止策について説明します。
【建物の場合】借地借家法に関して起きやすいトラブル
借地借家法は建物と土地の両方について定めた法律です。まずは借地借家法のうち、建物に関係するトラブルを説明します。
賃料の増減のトラブル
賃貸物件は賃料の増減に関するトラブルが多く、貸主(家主)から増額を要求されたときが特にトラブルになりやすいです。借主が賃料の増額を不服として認めず交渉が決裂して、調停や訴訟にまで発展するケースもあります。
なお借地借家法では賃料の増減請求が認められるのは「正当な事由」がある場合に限られています。しかし、双方の認識の違いが原因となってトラブル発展することも少なくありません。
■賃料の増額請求ができる「正当な事由」の例
- 税金などの土地や建物にかかる経費の増加があった場合
- 地価や物件の価値に変化があったとき
- 近隣の類似した借家と比較して大きな差がある場合
契約更新のトラブル
建物賃貸借契約の更新の際、更新料の要求が貸主からあった際にトラブルになるケースがあります。
ちなみに更新料の支払いに関しては、法的な義務は定められていません。つまり、更新料の支払いは貸主と借主の合意がない限り、支払わなくてよいとされています。
しかしこうした決まりが広まっていないからなのか、更新料の要求を巡るトラブルが頻発しているのが実状です。
【建物の場合】トラブルが起きたときの対処法
建物の賃貸借契約を巡って様々なトラブルが発生する可能性があることを解説しました。ここからはそうしたトラブルが起きた際の対処法や考え方を説明します。
賃料の増減トラブルの対処法
賃料の増減に関するトラブルが生じた場合、まずは貸主と借主との間で協議を行って解決を試みます。協議しても根本的な解決に至らない場合は、裁判所が適切な賃料を決定します。
また、契約の内容によっては賃料の増減が認められないことがあります。具体的には、賃料を一定期間は増額しないとする特約条項が契約に明記されている場合などです。
契約更新トラブルの対処法
契約更新におけるトラブルを回避するためには、賃貸物件の契約時には更新料についての説明を受けておきましょう。契約が終了する際に、更新料の不利な条件を突きつけられないようにするためです。
加えて更新料の定めについてどのように記載されているか、契約書の内容をしっかりと確かめておきます。具体的には、更新料の金額や支払い方法、更新の手続きについての詳細が明記されているかどうかをチェックすることが望ましいです。
【土地の場合】借地借家法に関して起きやすいトラブル
ここからは、借地借家法のうち土地に関するトラブルを解説します。基本的には土地(底地権)を所有している地主からの不当な要求を巡るトラブルが多いです。
地代の値上げに関するトラブル
地主から地代の値上げを要求されたときに、トラブルに発展することがあります。
具体的には借地権を相続するタイミングなどで地代の値上げを要求されるケースです。
新しい借地人が相続によって権利を得た場合、地主はその機会を利用して地代の値上げを要求することがあります。相続に伴う借地人の資産状況などを考慮して、地主が地代を再計算し、借地人に値上げを求めるケースが一般的です。
地代の増減は双方の合意が必要となります。このため、意見が対立することが多く、調停や賃料増額請求訴訟などのトラブルに発展しやすいのです。
建物の建て替えに関するトラブル
借地権付き建物の増改築や建て替えをする際は、地主からの許可が必要です。
しかし、何らかの理由で許可が降りず、増改築や建て替えができない事態に陥ることがあります。
また、地主から建物の建て替え許可を得たとしても、承諾料や建物の構造制限といった承諾の条件を巡ってトラブルになることもあります。このような状況では、承諾料が高額であったり、建物の仕様に制限が加えられたりする場合があります。
借地権更新のトラブル
借地権の更新時に起こりがちなトラブルが、地主の“更新拒絶”です。普通借地権の場合、借地の契約が満了する際に借地権を得ている側が更新料を支払って契約更新するのが通例です。しかし、この更新時に地主が契約の更新を拒否したり、条件を変更したりすることでトラブルが発生します。
普通借地権は借地上に建物が存続している限り、借地権者が希望すれば契約を更新できると借地借家法で定められています。それにもかかわらず、借地権の更新を拒否されることがあります。例えば、地主が借地を他の用途に使いたいと考えたケースや、借地の条件が著しく変わった場合などです。
また、更新時には地代の値上げや、更新料が高額であることが原因となるトラブルもあります。
立ち退きに関するトラブル
地主が借地権を他の用途で使いたいという理由で、立ち退きを求めることがあります。こうした立ち退きの要求が行われた場合、借地人との間で大きなトラブルに発展することも少なくありません。
借地権の売却時のトラブル
借地権の所有者である借地人が借地権を売却したいとき、地主とのトラブルが起きやすいと言われています。
借地権を譲渡する際は、地主の事前承諾と譲渡承諾料の支払いが必要となりますが、このやり取りを巡ってトラブルになるのです。
地主から特に理由なく売却を拒否されたり、高額な譲渡承諾料を要求されたりすることが多くあります。
【土地の場合】トラブルが起きたときの対処法
ここまで土地を巡るトラブルと、どのような状況で起きるかを解説しました。それではこうしたトラブルの対処法を1つずつ説明します。
地代の値上げに関するトラブルの対処法
結論から述べると、地代の値上げは正当な事由がない限り要求に応じる必要はありません。なぜなら、値上げの効力は双方の合意がある、もしくは裁判の判決があった場合にのみ生じるためです。
地主が一方的に地代を大幅に引き上げた場合、借主は賃貸借契約に規定されている値上げ条件を確認し、異議を申し立てることができます
建物の建て替えに関するトラブルの対処法
地主からの承諾を得ることが難しい場合は、地主に代わる承諾を裁判所に求めることが可能です。
裁判所の許可を得られた場合、地主の承諾がなくても建て替えを行うことができます。このケースでは裁判所が客観的な判断に基づいて建替承諾料を決め、借地人は建替承諾料を地主に支払って建て替えを行います
更新のトラブルの対処法
借地権を更新する際、常識外れの高額な更新料を請求された場合は、その支払いを拒否することが可能です。更新料の支払い自体は義務ではありません。たとえ支払いを拒否したとしても、地主側に正当な事由がない限り、契約は更新されることになります。
もし高額な更新料の支払いに関して折り合いがつかない場合は、弁護士などの専門家に相談することを推奨します。
立ち退きに関するトラブルの対処法
地主側の都合により立ち退きを要求された場合には、基本的に拒否することが可能です。借地借家法では、契約期間が満了した場合でも、地主に正当な事由がなければ立ち退きを求めることができないと定めています。
同様に、賃貸物件である貸家でも、正当な事由がなければ立ち退きは認められません。
借地権の売却に関するトラブルの対処法
地主が借地権の売却を認めない場合は、借地人は裁判所に「借地非訟」を申し立てることができます。借地非訟とは、裁判所から地主に代わる許可を得るための手続きのことです。裁判所に借地非訟を申し立てれば、地主が不合理な理由で承諾を拒み続ける場合でも、裁判所が代わりに売却を承諾してくれます。
ちなみに、この借地非訟手続きは売却以外の申し立ても可能です。借地権の譲渡承諾、増改築の承諾、用途変更に関する承諾なども裁判所に求めることができます。
借地借家法にまつわるトラブルを防ぐためにできること
借地借家法に関連するトラブルは予想外の問題を引き起こすことがあります。しかし、事前に適切な対策を講じれば、トラブルを未然に防ぐことも可能です。
ここからは、借地借家法にまつわるトラブルを防ぐために実践できる具体的な方法について解説します。
事前に契約内容を明確にしておく
賃貸借契約におけるトラブルを避けるためには、まず契約内容を事前に明確にしておくことが重要です。曖昧な契約内容は後々のトラブルの原因になります。
特に口頭で契約を行うケースは特に注意が必要です。契約書が存在しないと内容を証明できないため、契約が無効とされるおそれがあります。したがって、全ての契約は口約束ではなく、書面化しておきましょう。
弁護士に相談する
トラブルが発生しそうな場合、法律の専門家である弁護士に相談することを強くおすすめします。借地借家法や関連する法律は細かく定められていて、その複雑さから内容を正しく理解するには専門的な知識が必要となります。法律に詳しくない地主と借地人が話し合う際には、解釈の違いや理解不足が原因でトラブルが発生しがちです。
地主から何らかの要求があったタイミングなど、トラブルに発展する前の段階で弁護士に相談することが望ましいです。既にトラブルが発生してしまった時点で相談しても、地主も同じように弁護士を立てることが多く、その結果として裁判に発展するケースも少なくありません。裁判になると時間も費用もかかるため、早めの段階で弁護士に相談することが理想的です。
また、先述した契約内容の書面化の際も、不明点や不安な点があったときは弁護士に相談しましょう。
不動産会社に仲介に入ってもらう
借地権を売却する際には、借地権売却に精通している不動産会社へ相談するのも1つの手です。不動産会社が仲介に入り、借地権の引き渡しがスムーズに行えるようサポートしてもらえます。加えて、不動産会社は借地人が不利益を被らないようにアドバイスしてくれます。
借地借家法に関するトラブルを防ぐためのポイントを把握しておこう
今回の記事では借地借家法を巡るトラブルについて解説しました。トラブルの内容にもよりますが、多くの場合は契約内容を明確にしておくことで防止できます。
また、トラブルに発展しそうな心配事や疑問がある場合、弁護士や不動産会社に相談することがおすすめです。専門家のアドバイスを受ければ、法的な知識がなくても適切な対応策を取ることができます。特に、契約更新や賃料の増減などデリケートな問題については、早めに専門家に相談することが重要です。
状況によっては不動産会社に仲介に入ってもらうことも有効です。不動産会社は豊富な経験と知識を持っており、トラブル解決に向けて対応してくれます。
CENTURY21中央プロパティーでは、借地権に関するトラブル解決を承っています。もし困ったことがありましたら、ぜひご相談ください。
この記事の監修者
代表取締役 /
宅地建物取引士
CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。借地権を始めとした不動産トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。