借地権とは わかりやすく解説
借地権とは?種類やメリット・デメリットわかりやすく解説
本記事では、借地権についてポイントを押さえて図解でわかりやすく解説します。借地権の基礎知識について知りたい方はぜひご覧ください。
借地権とは?
借地権とは、建物を建てる目的で土地を借りる権利のことです。土地を貸す人を地主、借りる人を借地人と呼びます。借地人は、土地を借りる代わりに、地主に地代を支払います。
所有権の場合、土地も建物も所有者が同じですが、借地権の場合は、図のように土地は地主のもの、建物は借地人のものになります。
- 借地権とは、土地に建物を立てる権利のこと
- 借地人は、地主に対して地代を支払う
- 所有権との違いは、土地と建物の所有者が別々なこと
借地権には旧借地権・普通借地権・定期借地権などさまざまな種類があり、それぞれ異なった特徴があります。
関連記事:借地権とは?種類や対抗要件についてわかりやすく解説
借地権の種類を理解しよう
借地権は、まず旧法か新法かで種類が分かれます。
新法の中では、普通借地権、定期借地権、一時使用目的の借地権に分かれます。さらに、定期借地権の中では、一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権に分かれます。
文章にするとわかりにくいですが、図にすると以下のようになります。
旧法と新法の違いとは?
借地権は、1992年の8月を機に、旧法と新法に区分されました。
借地権における、旧法と新法の違いは、以下の2つです。
- 新法では、更新後の契約期間が短くなった
- 新法では、定期借地権という概念が生まれた
旧法と新法の最大の違いは、契約期間の長さになります。
旧法では、契約期間が長く、一度土地を貸すと半永久的に戻ってこない問題がありました。そのため、新法では旧法に比べて、契約期間が短くなり、地主の権利に配慮した契約条件になっています。
但し、新法への切り替えは義務ではなく、地主と借地人、双方の合意が必要となるため、現在ある借地契約のうち、ほとんどが旧法になります。
新法で新設された定期借地権では、更新という概念がなく、期間満了後は地主に土地を返還することが定められました。
関連記事:定期借地権とは?メリットデメリットと取得にかかる費用を解説
- 新法と旧法の分かれ目は、1992年の8月
- 新法は更新後の契約期間が短い
- 旧法から新法への切り替えは義務ではない
普通借地権と定期借地権の違い
定期借地権の特徴は、以下の通りです。
- 更新後の契約期間延長がない
- 公正証書により借地契約を締結する
- 建物の買取請求はできない
- 原則として借地人は建物を取り壊して土地を返還する
事業用定期借地権以外は、利用目的の用途制限がないため、居住用の住宅やマンションも定期借地権に該当するケースがあります。
定期借地権は、契約期間満了とともに建物を解体して地主に返還しなければならないため、住宅用として不動産を探す際には、将来設計に注意が必要です。
関連記事:普通借地権と定期借地権の違いは?借地権の種類別に詳しく解説
借地権のメリット・デメリット
借地権には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット |
・土地の購入費用がかからない ・土地の固定資産税がかからない ・所有権よりも安く買える | ・地主の承諾が必要な事項がある ・住宅ローンなどの融資審査が厳しい ・立ち退きを迫られることがある ・地主とトラブルになりやすい ・継続的に地代の支払いが必要 ・売却時に買い手が見つかりにくい ・売却金額が低くなる |
借地権は、一般的にデメリットのほうが多いと言えるでしょう。土地と建物の所有者が異なるため、条件の変更がある場合は、基本的には地主の承諾が必要になります。
地主の承諾が必要な事項は、主に以下のような行為です。
- 借地権を売却する場合
- 借地上の建物を立て直す場合
- 大規模なリフォーム
また、法的には承諾の必要がない場合でも、地主と良好な関係構築のためには、日頃のコミュニケーションが大切になってきます。
借地権のデメリットである、地主とのトラブルについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:【弁護士監修】借地権にまつわる地主とのトラブルと解決策を解説
借地権の登記と第三者への対抗要件
第三者に、借地権を主張する場合、地上権や賃借権の登記が必要になります。借地権の登記と対抗要件については、賃借権か地上権か、で異なります。
ここでは、賃借権と地上権で登記の違いについて解説します。
地上権と賃借権の登記の違い
借地権には、地上権と賃借権があります。現行の借地契約のほとんどは、賃借権です。
賃借権の場合は、借地契約で「賃借権の登記を請求できる特約」がない限り、登記請求は認められておらず、地主の承諾がなければ、登記ができません。但し、賃借権の登記がなくても、建物が借地上に借地権者の名義で登記されていれば第三者に対抗できます。
一方で、借地権の種類が、地上権の場合、地主への登記請求権があり、協力が得られない場合は裁判を経て登記が可能です。
借地権の登記を確認する方法
借地権の登記については、登記簿謄本で確認することができます。登記簿謄本は、最寄りの法務局で取得できます。
借地権において、相続が発生した場合に注意すべきことがあります。もし、借地上の建物の相続登記が完了していない場合、第三者に借地権を主張できません。必ず、相続登記の手続きを行いましょう。
借地権のよくある質問
ここでは借地権に関するよくある質問と回答をご紹介します。
Q.借地権を担保に抵当権を設定することは可能?
A.借地権自体に、抵当権を設定することはできませんが、借地上の建物に抵当権を設定することは可能です。
その際、法的には、地主の許可を得ることなく設定できますが、金融機関は必ず地主の承諾を求めてきます。そこで地主の許可が得られない場合は、抵当権の設定はできません。
Q.地代の値上げに応じないとどうなりますか?
A.地代の値上げに応じない場合、調停や裁判に発展することがあります。
値上げを提案された際には、理由や地代金額の根拠を提示してもらうように地主にお願いしましょう。
また、安易に値上げに応じず、周辺の相場について自身が把握しておくことも大切です。地代の相場がわからない場合は、借地権に詳しい不動産会社に相談しましょう。
Q.絶対に更地にして返還しなければならないのでしょうか?
A.借地権は、原則として更地での返還が法律で定められています。
借地権を手放したいけれど、解体費用がない、という場合は、更地返還以外に借地権付き建物の売却も検討してみると良いでしょう。
当社センチュリー21中央プロパティーでは、現状のまま、借地権の売却が可能で解体費用も不要です。
Q.地主の譲渡承諾なしで売却する方法はありますか?
A.借地権の売却には、原則地主の承諾が必要です。
地主への交渉が難航する場合は、早めに借地権専門の不動産会社に相談し、交渉の進め方やほかの選択肢を提案してもらうと良いでしょう。
この記事の監修者
代表取締役 /
宅地建物取引士
CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。借地権を始めとした不動産トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。