【弁護士Q&A】地代を滞納したら契約解除になるのでしょうか|弁護士Q&A
【弁護士Q&A】地代を滞納したら契約解除になるのでしょうか
借地権に住んでいるものです。地代を滞納して契約を解除された場合、借地権の価値はゼロになってしまうのでしょうか?
それではあまりにも損失が大きいと思うのですが、もし地代が払えなくなったらどうすればいいのでしょうか?
地代の滞納を理由に借地契約が解除された場合、その時点で借地権は消滅します。契約解除の時点で借地上に建物が存在する場合は、借地人側の責任と費用で建物を解体収去した上で、借地を地主に更地返還しなければなりません(民法622条、599条1項)。
本来、契約解除に当たっては、契約上定められた債務の不履行の事実があればよく、その内容や程度は問われないのが原則です。この原則通りに考えるならば、借地人が地代の支払いを1回遅れた時点で、地主は借地契約を解除できることになります。
しかし、不動産の賃貸借に関しては、地主と借地人との間の信頼関係を基礎とした継続的な契約関係を前提にしていること、不動産が借地人の生活や事業の基盤になっていること等を考慮し、判例上、賃借人に債務不履行があっても、信頼関係が破壊されていない場合は、賃貸借契約の解除は認められないとする『信頼関係不破壊の法理』と呼ばれるルールが確立しています(最高裁昭和30年9月22日判決)。
このルールのため、地代の支払いが1回遅れた程度では、地主側からの契約解除は認められません。とはいえ、地代の未払いが重なれば、信頼関係が破壊されたとして、契約解除が認められてしまう可能性が高くなります。
もし、契約通りの条件での地代支払いが難しくなった場合は、地主に事情を伝え、滞納分を分割で支払わせてもらう、月額地代を減額してもらう等の交渉を行なうべきかと考えます。信頼関係破壊の有無は、不履行に至った経緯も含めて判断されますので、同じ金額・回数の不履行でも、事前に誠実に地主と協議したか、地主と一切話さずに不履行を続けたかによっても、結論が変わるところです。
あるいは、継続的な地代支払いが早晩難しくなると分かった段階で、地代の滞納が起きる前に、地主に借地権の買取りを打診することも検討されるべきかと思料致します。
まとめ
- 地代未払いを理由に借地契約が解除されると、借地権は消滅します。
- 判例上、債務不履行を理由とする借地契約の解除には、信頼関係の破壊が必要であるとされています。
- 継続的な地代支払いが難しいと分かった時点で、滞納が起きる前から地主に交渉していく姿勢が大事です。
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この記事の監修者
社内弁護士
当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。