借地権と賃借権の違いとは?地上権との違いや特徴を解説|借地権の基礎知識
借地権と賃借権の違いとは?地上権との違いや特徴を解説
目次
借地権の中には賃借権と地上権があり、さらに賃借権には普通借地権や定期借地権など、さまざまな種類があります。賃借権と地上権は権利の強さが異なり、地主とどのような関係を築いていかなければならないかも異なります。
当記事では、借地権の中でも賃借権と地上権の違いについて詳しく解説するとともに、借地権のメリットとデメリットも紹介します。賃借権が設定された借地権はトラブルにつながりやすいため、あらかじめ借地権の特徴について知っておきましょう。
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1. 借地権を構成する2つの権利とは?
借地権とは、建物の所有を目的として地主(土地所有者)から土地を借りる権利のことです。物置や駐車場など建物を所有しない場合は、土地を借りたとしても借地権は発生しません。つまり、土地の上に建物が存在することが借地権の絶対条件になります。他人の土地を利用して、借りた土地の上に建てた建物の用途は、住居用であったり事業用の物件であったりとさまざまです。
借地権は、賃借権と地上権の2つに分類されます。賃借権と地上権は、両方とも土地を利用するための権利であり、賃借権は借地権のうちの1つとなります。下記で賃借権と地上権についてそれぞれ詳しく解説します。
1‐1. 賃借権とは
賃借権とは、賃貸借契約に基づいて、他社の所有している土地を賃料を支払って使用する権利のことです。土地の賃借では、借地人が地主に毎月地代を支払います。国内において、借地権というと一般的にはこの土地賃借権を指します。
借地権の種類は、契約が交わされた時期や契約期限、更新の有無によって「旧借地権」「普通借地権」「定期借地権」の3つに分けられます。借地契約を結ぶ際は、どのような契約となるのかしっかり確認することが大切です。
1‐2. 地上権とは
地上権とは、民法265条に規定された工作物や建物、竹木の所有を目的として、他人の土地を使用する権利のことを言います。
地上権は物権であるため、当事者以外にも誰にでも権利を主張することが可能です。土地の権利を直接的に持っているとされ、借地人は地主の承諾をもらわなくても第三者に譲渡や賃貸ができます。しかし、借地人にとって有利すぎる契約となるため、通常の借地契約が地上権での契約であることは稀です。
2. 借地権の賃借権と地上権の違い
借地権に分類される賃借権と地上権は、両方とも建物を所有することを目的としているものの、大きな違いは権利としての「強さ」です。賃借権は借地人が地主の承諾をもらって土地を間接的に支配する一方で、地上権は地主の承諾をもらわずに土地を支配できます。つまり、賃借権よりも地上権のほうが、権利としての強さが強力です。賃借権と地上権の具体的な違いは、下記の通りです。
地上権 | 賃借権 | |
権利の種類 | 物件 | 債権 |
登記の義務 | 必須 ※地上権を設定した土地所有者に登記義務あり | 必須ではない ※建物を登記する場合は地主の許可不要 |
地代の支払い | あり | あり |
地主の許可(譲渡・転貸時) | 不要 | 必要 |
存続期間 | 30年以上 | 借地権の種類によって異なる ※最長50年 |
地上権にのみ登記を行う義務があり、抵当権を設定することも可能です。地上権を登記した際は「地上権設定」と記載されます。一方賃借権の場合、土地に借地権を登記するには地主の協力が必要です。しかし、地主に登記への協力義務はないため、引き受けてくれない場合がほとんどです。そのため、借地上に建っている建物のみに所有権の登記をします。
また、賃借権は建物の利用が終わると土地を所有者に返すことを前提としており、改築やリフォームなどを行うときは都度地主の許可が必要です。許可を得るために、承諾料を求められるケースもあります。
存続期間に関しても、地上権は永久的に存続する一方、賃借権は期間が定められます。更新が可能な賃借権(普通借地権)であれば更新を繰り返して半永久的に土地を借りることもできますが、更新時には更新料が必要です。また、定期借地権は契約更新が認められていないため、契約満了時には必ず土地を返却しなければなりません。
関連記事:借地権における地上権(物権)と賃借権(債権)の違いとは?
3. 賃借権を設定する目的やメリット・デメリット
借地権の多くは、地上権ではなく賃借権が締結されていることが一般的であり、相続や売買で取得した借地権は高確率で賃借権です。賃借権にはメリットだけでなくデメリットも存在するため、特徴を正しく押さえておきましょう。
3‐1. 【メリット1】価格が安い
借地権は、土地の所有権を購入する時よりも価格が安いことがメリットの1つです。借地権の価格は更地価格に借地権割合をかけたものが目安となり、土地の所有権付き物件を買うよりも70~80%程度の価格で購入できます。
また、借地権付き建物は良い立地に建っている物件も多く、住みやすいエリアの物件を低価格で購入できるのは大きなメリットです。
3‐2. 【メリット2】半永久的に借りられる
借地権には期限が決められてはいるものの、普通借地権・旧借地権であれば更新すれば半永久的に土地を借りられます。
借地権は、種類によって契約期間が異なり、普通借地権では契約期間は30年以上にするよう定められています。旧借地権と普通借地権は両方とも契約の更新が可能で、地主は正当事由がなければ契約更新を拒否できません。ただし、定期借地権の場合は更新が認められていないことには注意が必要です。
また、借地権には第三者に対する対抗要件があります。賃借権の場合、土地に登記がなかったとしても、借りた土地の上に借地人の名義で登記した建物が建っていれば借地権を主張できます。
3‐3. 【デメリット1】毎月地代を支払う必要がある
借地権付き建物の場合は、土地を借りているため、毎月地主に地代を支払わなければなりません。借地権を取得したときに権利金を支払っている場合、地代は「通常の地代」を支払うことが一般的です。権利金とは、借地権を設定・契約する際に、一時金として地主に支払うお金です。借地人は、権利金を支払い、借地権を得ます。
借地権を得ると、土地は「借地人に権利がある部分(借地権)」と「地主に権利がある部分(底地)」に権利が分かれます。通常の地代とは、借地人が底地の部分にあたる対価を地主に支払うことです。
ただし、親族間や同族会社の場合は、権利金のやり取りをしないことがあります。権利金を支払わない場合は、権利金に相当する部分を含めて、土地全体に対する地代を支払わなければなりません。土地全体に対する地代のことを、「相当の地代」と呼びます。
3‐4. 【デメリット2】地主の承諾が必要なシーンが多い
賃借権の場合は、建物の建替えや売却の時、地主の承諾をもらうことが必須のため、地主とのトラブルにつながりやすくなるのが注意点です。借地権を売却する際に地主からの承諾を得ないで売却をした場合は、「無断譲渡」を理由に契約解除になりますので、借地人は忘れずに地主からの承諾を得るようにしましょう。
借地権を売買する際は、地主の承諾を得て、名義書換料(譲渡承諾料)を支払います。更新料、名義書換料などの支払い・金額は法律で定められていないため、借地人と地主が話し合いで決めます。話し合いが難航しそうな際は、借地権について専門的な知識がある弁護士や借地権に詳しい不動産会社に相談することがおすすめです。
まとめ
建物を建てる目的で他人が所有する土地を借りる権利のことを借地権と呼び、賃借権は借地権の種類の1つです。通常借地権と言えば「賃借権」を指し、その借地人の権利は地上権と比べると弱いのが特徴です。賃借権の場合、売却や転貸、建て替えのときには地主の承諾を得る必要があります。
借地権は売却の際に地主とのトラブルが発生することもあります。もし所有している借地権の売却でトラブルが起こった場合は、ぜひ中央プロパティーにご相談ください。借地に詳しい専門家が、スムーズな売却と地主との交渉をお手伝いいたします。
この記事の監修者
代表取締役 /
宅地建物取引士
CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。借地権を始めとした不動産トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。