借地権のマンションの注意点
借地権マンションの注意点とは?所有権との違いも解説
目次
物価や新築マンション価格の高騰が叫ばれる近年、一般的な分譲マンションと比較して低コストで購入できるマンションとして「借地権付きマンション」が注目されています。
また、借地権付きマンションには「普通借地権付きマンション」と「定期借地権付きマンション」の2種類があります。借地権付きマンションは通常のマンションと異なる点がいくつかあるほか、購入の際はいくつか注意すべきポイントもあります。
当記事では、借地権付きマンションの基本情報から、借地権付きマンションと通常のマンションの違い、さらに借地権付きマンションを購入するときの注意点まで徹底解説します。
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1. 借地権付きマンションとは?
借地権付きマンションを具体的に理解するためには、まず「借地権」が何なのかを把握しておく必要があります。借地権とは、建物を建てる目的で地主に地代(土地の賃借料)を支払って、土地を借りる権利のことです。借りた土地は「借地」といい、借地権を得た者は「借地人」や「借地権者」と呼ばれます。
そして、借地権付きマンションはこの借地権が設定されたマンションのことで、要するに建物の所有者は借地人、土地の所有者は地主となります。
また、借地権付きマンションは、大きく「普通借地権付きマンション」と「定期借地権付きマンション」の2種類に分けられます。同じ借地権付きマンションでも、種類によって特徴や契約内容が大きく異なることを覚えておきましょう。
ここからは、普通借地権付きマンションと定期借地権付きマンションのそれぞれの概要・特徴を詳しく説明します。
1‐1. 普通借地権付きマンション
普通借地権付きマンションとは、借地契約の更新が可能なマンションのことです。普通借地権の存続期間は、借地借家法(旧借地法)によって契約当初の更新・初回更新・2回目以降の更新とで異なる契約期間が定められています。
- 契約当初:30年以上
- 初回更新:20年以上
- 2回目以降の更新:10年以上
地主・借地人の合意によってはそれぞれに定められた存続期間以上の期限を定めて借地権を設定することも可能ですが、借地借家法で定められた規定の存続期間よりも短く定めることは不可能です。
また、普通借地権付きマンションの場合、地主が借地契約を解除する正当な理由がない限り、一方的に契約解除することはできません。したがって、普通借地権付きマンションは建物が存在しており、借地契約を更新できる限りは基本的に住み続けられるといえます。
1‐2. 定期借地権付きマンション
定期借地権付きマンションとは、定められた借地期間の満了時に、更地にした土地を地主へ返還しなければならないマンションのことです。
第三者から土地を借りて建物や部屋を所有する点や、借地借家法によって契約期間が定められている点は普通借地権付きマンションと同様ですが、定期借地権付きマンションは契約の更新ができません。その分、定期借地権付きマンションの存続期間は原則50年以上など、普通借地権付きマンションよりも長く設定されていることが特徴です。
2. 借地権付きマンションと所有権のマンションの違い
借地権付きマンションには、土地の所有権とセットで購入する通常のマンションとはまた違った特徴があり、特徴によってはメリットにもなり得ます。
借地権と所有権とは?違いや それぞれのメリット・デメリットを解説
そこで次に、借地権付きマンションと通常のマンションの違いについて、3つの項目別に詳しく説明します。借地権付きマンションと通常のマンションのどちらを購入しようか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
2‐1. かかる費用の違い
借地権付きマンションと通常のマンションとでは、かかる費用に大きな違いが生じます。
定期借地権付きマンションは、所有権付きの通常のマンションと比較して購入費用を大きく抑えられます。購入費用の相場は、通常のマンションの70~80%程度です。加えて、敷地の所有権はなくただ地主から土地を借りる状態となるため、土地の固定資産税・都市計画税の支払い義務が発生しません。
ただし、定期借地権は契約満了時に土地を更地にして地主へ返還しなければならないことから、解体費用の積立金として毎月数千~数万円を支払わなければならなかったり、解体費用の一時金として数十万円が徴収されたりすることもあります。加えて、土地を借りる賃貸料として、毎月地代の支払いが必要です。
普通借地権付きマンションにおいても定期借地権付きマンションと同様に、費用面で同様のメリット・デメリットがあります。普通借地権付きマンションの場合、定期借地権付きマンションよりも購入費用は高まりますが、通常のマンションに比べると割安であることに変わりはありません。
ただし、普通借地権付きマンションは契約更新の際に「契約更新料」、建て替えの際は「建て替え承諾料」、そして売却の際は「譲渡承諾料」など、何らかのアクションを起こす度に各種一時金が発生することも覚えておきましょう。
2‐2. 立地の違い
借地権付きマンションと通常のマンションとでは、立地条件にも違いが生じる傾向にあります。
特に、定期借地権付きマンションは立地のよい物件が多いことが特徴です。定期借地権付きマンションが建てられる土地には、もともと学校や公的機関、さらに博物館などが建てられていたケースも多くあります。
このような土地は、古くからの地主が大切に守ってきた土地であり、さまざまな背景から定期借地権付きマンションとして貸し出されています。そのため、通常のマンションよりも利便性の高い人気エリアにあることが多く、むしろ通常のマンションよりも資産価値が高くなっているケースも珍しくありません。
同様の理由で、普通借地権付きマンションも立地がよい可能性が高いといえるでしょう。
2‐3. 住むことができる期間の違い
借地権付きマンションと通常のマンションは、住むことのできる期間にも大きな違いがあります。
前述の通り、定期借地権付きマンションは、期間満了時に地主へ土地を返還する必要があります。したがって、契約満了後は住み続けることができません。また、普通借地権付きマンションは契約の更新ができるため半永久的に住み続けられるものの、地主が正当な理由で契約を解除した場合、同様に土地を更地で返還する必要があります。
通常のマンションのように長く住み続けることができないため、借地権付きマンションは「将来的に住み替えをする」「初期費用を抑えて住まいを取得したい」という目的や希望をもつ方におすすめといえるでしょう。
3. 借地権付きマンションを購入するときの注意点
借地権付きマンションには、「通常のマンションを購入するよりも費用を抑えられる」「立地がよい」といったメリットがある一方で、デメリットもいくつか存在します。そのため、購入の際はデメリットを踏まえたうえでしっかり検討することが重要です。
最後に、借地権付きマンションを購入するときの注意点を3つ紹介します。
3‐1. ローンの審査が通りづらい
借地権付きマンションの購入においても、住宅ローンを借りるケースが一般的です。しかし、借地権付きマンションは通常のマンションと比較して、住宅ローン審査が通りづらいことが難点となっています。
住宅ローンを提供する金融機関は、対象となる不動産の担保価値をチェックし、抵当権を設定したうえで融資をします。住宅ローン契約者が土地所有者とはならない借地権付きマンションは、金融機関にとって担保価値が低いため、自ずと審査条件が厳しくなります。
また、地代や更新料の滞納など借地人に債務不履行があった場合、債務不履行として地主から借地契約を解除することが可能です。このように、借地人に借地契約の解除リスクがあることも、住宅ローン審査が通りづらくなる要因の1つといえるでしょう。
3-2. 地主とのトラブルが起きやすい
借地権制度は非常に複雑であることから、地主と借地人とでトラブルが起こりやすくなっています。
よくあるトラブルとしては、下記が挙げられます。
- 地主から突然「地代を上げる」といわれた
- 地代を滞納してしまい、地主から立ち退きを強く要求された
- 借地権の譲渡を地主に承諾してもらえない
- 正当な理由なく、普通借地権の更新を地主から拒否された
- 建物の増改築を申し出たが、許可を得られない・高額な承諾料を求められた など
上記のような問題を解決するためには、弁護士など第三者の専門家に交渉を依頼することがおすすめです。
また、借地人が借地権を第三者に主張・対抗するためには、建物について登記を備えていることが条件です。建物登記をしなければ第三者に借地権の対抗を行うことができません。例えば、土地の売却をきっかけに地主が第三者に変わった際、立ち退きを余儀なくされるなどの問題が起こります。建物を登記することは地主の許可がいらないため、借地権設定時に行っておくことをおすすめします。
3‐3. 将来売却しにくい
借地権付きマンションは、借地契約の期間が定められているという特性上、将来的に売却しにくいことがデメリットです。特に定期借地権付きマンションは契約更新ができず、期間満了とともに必ず地主に土地を返還しなければならないため、普通借地権付きマンションよりも売却しにくくなっています。
借地権付きマンションの売却に成功するためには、周辺の競合マンションよりもお得な売却価格を設定したり、なるべく早い段階で売却活動を進めたりすることが大切です。
また、借地権付きマンションを売却する際は、借地権売却の取引実績が豊富な不動産会社に依頼しましょう。借地権が設定された建物の売買に関して幅広い知識を有しているため、より安心して相談できます。
まとめ
借地権付きマンションとは、地主から土地を借りて借地権が設定されたマンションのことで、「定期借地権付きマンション」と「普通借地権付きマンション」の2種類があります。いずれも、建物の所有者は借地人、土地の所有者は地主となっており、借地借家法によって契約期間(存続期間)が定められることが特徴です。
また、定期借地権付きマンションと普通借地権付きマンションとでは、契約期間・更新の有無・物件価格・売却のしやすさなどにおいて違いがあります。購入してから後悔しないよう、今後の人生プランを事前に立てたうえで適切な借地権付きマンションを選択するとよいでしょう。自身が何年住み続けるつもりなのか、決めておくことが大切です!
「CENTURY21 中央プロパティー」では、専門家による借地権の売却・トラブルに関するサポートを提供しています。借地権付きマンションの購入や売却を検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事の監修者
代表取締役 /
宅地建物取引士
CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。借地権を始めとした不動産トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。