借地権は期間満了後どうなる?更新する場合・しない場合の対応を解説
借地権は期間満了後どうなる?更新する場合・しない場合の対応を解説
目次
借地権の契約は、期間が定められているため、期間満了後は、契約を更新するか否かについて判断しなければなりません。
この記事では、現在借地にお住まいの方に向けて、借地権の契約期間が満了を迎えた場合の対応方法について解説します。
借地権は、期間満了後どうなる?
借地権が期間満了を迎えた場合、主に以下3つの対応になるのが一般的です。
- 借地契約を更新する
- 地主に土地を返還する
- 借地権付き建物を売却する
但し、定期借地権の場合は、事前に決めた存続期間が満了すると更新はできません。期間が終了すると、必ず地主に土地を返還をすることとなります。
期間満了後に借地権を更新する場合
定期借地権以外の借地権は、原則、契約期間満了後の更新が可能です。借地借家法では地主による更新拒絶や契約終了は正当事由がある場合のみ認められると定められています。
借地権の更新の種類には、以下の3つがあります。
- 更新請求による更新
- 合意による更新
- 法定更新
更新請求による更新
借地権の更新請求による更新は、借地人が地主に対して契約の更新を求める手続きのことです。地主が借地権の更新を拒否するには、正当な事由が必要となります。
地主は自分の都合や、個人的な理由で借地権の更新を拒否することはできません。なお借地権の契約は同じ条件で更新されます。一連の制度は、借地権者の権利を保護し、安心して借地を利用するための役割を果たしています。
合意による更新
合意による更新とは、地主と借地人の双方合意により借地契約を更新することです。合意による更新の際は、地主から更新料を請求されるケースがあります。
借地権の更新料支払いに法的な根拠はないものの、下記のようなケースでは更新料を支払わなければなりません。
- 契約書に更新料の支払いが明記されている
- 契約書に明記されていなくても、双方に支払いの合意がある
混合しやすいケースですが、過去に更新料を支払っていたとしても、契約書に今後の更新料の支払いが記載されていなければ、更新料を支払う必要はありません。
しかし、更新料の支払いが必要であるにもかかわらず借地人が応じなかった場合には、更新料の不払いを理由に契約解除された判例もあるので注意が必要です。
法定更新
法定更新とは、更新請求による更新や合意による更新が行われなかった場合に、借地借家法の定めに基づいて自動的に借地契約が更新されることを指します。
法定更新では、土地上に建物が存在するか否かで扱いが変わります。
建物が存在する | 建物が存在しない | |
更新請求 | 借地人が更新請求をした、または土地使用を継続した場合、法定更新となる | 借地人から更新請求はできない |
意義 | 地主は異議を述べることができる | 借地人が土地の使用を継続している場合 【旧借地法】異議には正当な事由は不要 【借地借家法】法定更新がない |
法定更新成立の可否 | 正当事由がない限り、地主の異議は有効ではなく、法定更新が成立する | 地主が異議を述べれば、法定更新の効果は生じない |
建物が存在する場合、借地人が更新を請求した、もしくは期間終了後も借地人が借地の使用を継続している時は法定更新となります。(借地借家法5条2項)
建物が存在しない場合、借地人から更新請求はできません。借地人が借地の使用継続をしている場合、旧借地法と借地借家法では規定が異なります。
旧借地法では、法定更新の規定が適用されますが、地主は正当な事由がなくても異議を述べることができ、契約は終了となります。借地借家法(新法)の場合、建物が残っていなければ法定更新の規定が適用されず自動的に契約は終了します。
普通借地権における更新料の目安
普通借地権の更新料の一般的な相場は、借地権価格の5%程度、または更地価格の3%程度とされています。ただし、これらはあくまで目安であり、法令や裁判で厳密に定められた金額ではありません。具体的な金額は契約条件によって異なります。
更新料は以下のような計算方法で求められます。
更新料 = 更地価格×借地権割合×5% |
借地権割合とは、貸借された土地に対して借地人が持つ権利の割合を示すもので、土地全体における借地権の価値を数値化したものです。借地権割合は、国税庁のサイトで公開されている路線価が表示されているページにて確認することができます。
更地価格とは、その土地に何も建物が建っていない状態での土地の市場価値を指します。土地そのものの価値を評価するために使われる基準で、建物やその他の構造物などの付属物は含まれません。
更新料の計算方法と借地権割合のことは、以下の記事でも詳しく解説しています。
借地権の更新料は支払うべき?更新料の計算方法やトラブルの対処法も
借地権割合はどんな時に必要になる?調べ方や相続評価額の計算方法
期間満了後に借地権を更新しない場合
借地権の契約を更新しない場合、地主に借地権を返還するか第三者に借地権売却する2つの方法があります。しかし、返還や売却の手続きによってトラブルになるケースも少なくありません。ここからは、返還と売却の方法についてケース別に解説します。
地主に借地権を返還する
借地権の契約期間が満了し、地主に土地を返還する場合、原則として建物を解体し更地にして返還する必要があります。なお、建物を解体する際の解体費用は、借地人が負担するのが一般的です。
解体費用は建物の大きさや構造の種類によっても異なりますが、一軒家の場合およそ100~300万円ほどの費用がかかる場合があります。
更地にして返還する以外に、借地人は「建物買取請求権」を行使して、地主に借地権付き建物を買い取って貰うこともできます。
ただし、建物買取請求権を行使するには、建物が残っていること、借地契約満了のタイミングであることなどいくつかの要件を満たさなければなりません。(借地借家法13条)
なお、借地人が建物買取請求権を行使する場合、第三者への売却時と比べても安価になるケースが多いので、地主への借地返還は慎重に検討しましょう。
参考記事:建物買取請求権とは?行使できる要件や流れ、認められないケース
第三者に借地権を売却する
地主への買取交渉が難航する場合、第三者に借地権付き建物を売却する方法があります。
地主に売却するよりも、高値で売却できるのがメリットですが、第三者に借地権を譲渡する場合、地主の承諾と譲渡承諾料の支払いが必要になります。
借地権付き建物を第三者に売りたい場合は、地主への交渉を代行してくれる借地権専門の不動産会社に依頼しましょう。センチュリー21中央プロパティーでは、地主の承諾なしで借地権を売却することが可能です。
借地権の更新に関する疑問
ここまで借地権の期間が満了になったときのことを解説してきました。最後に、借地権の更新について疑問になりがちなことをまとめました。
借地権の更新をせずに期間満了したが、更新はできる?
借地権の更新をせずに期間満了した場合でも、更新が可能かどうかは借地権の種類によります。
普通借地権の場合は契約期間が満了したとしても自動的に法定更新される仕組みです。したがって継続して土地の使用が可能です。
一方で、定期借地権は存続期間を定めて契約しているので、契約満了後に更新することはできません。
地主に高額の更新料を請求されたら拒否できる?
借地権の更新料について、法律でその支払い義務が明確に定められているわけではありません。もし、高額な更新料を請求されたとしても、必ずしも支払わなければならない訳ではありません。
ただし、地主との契約書に更新料についての条項が記載されている場合は例外です。この場合、支払いを拒否すると契約が解除される可能性があります。
また、請求された更新料が一般的な相場と比較して著しく高額である場合は、地主と交渉する余地があります。交渉が必要な状況に直面した際は専門家への相談を検討してみましょう。弁護士や不動産の専門家に相談することで、適切なアドバイスを受けながら、円滑な解決を図ることができるはずです。
借地権の期間満了後の対応に迷ったときは相談しよう
借地権の契約期間満了後に、借地権の更新を行わない場合は、地主に返還するか、第三者に売却することになります。
借地権の売却にはさまざまな交渉や手続きが必要なので、自分で地主に交渉する前に必ず借地権に詳しい不動産会社に相談しましょう。
センチュリー21中央プロパティーでは、借地権のトラブル解決や売買仲介を数多く対応してきた実績があります。借地権の契約更新でお悩みの方は、当社へご相談ください。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。借地非訟、建物明渡、賃料増額請求など借地権や底地権をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。