借地権は贈与できる?贈与税の計算方法も解説|借地権の売却・買取
借地権は贈与できる?贈与税の計算方法も解説
目次
借地権が設定された土地を贈与できるのか、贈与したときに贈与税はかかるのか、気になっている方もいるでしょう。借地権は権利の複雑さや承諾の必要性があるなどの理由で、手続きが煩雑になりやすい傾向にあります。あらかじめ借地権を贈与できるのかどうか、確認しておくと安心です。
当記事では、借地権の贈与について、贈与税も含めて詳しく解説します。
1.借地権を贈与すると贈与税がかかる?
借地権とは、借地借家法もしくは旧借地法で定められた、建物を建てることを目的として土地を借りる権利です。借地権を取得するには、地主と賃貸借契約を交わして地代を支払う必要があります。
借地権は他者への贈与が可能で、贈与の際には贈与税がかかります。
ただし、贈与が成立発生するのは、当事者同士が明確に贈与を行ったと自覚している場合だけとは限りません。贈与税がかかるケースとしては、主に次のようなパターンがあります。
借地に建つ建物の名義変更を行った
「借地権上の建物の登記」をしておくことで借地権を主張できるメリットがあります。しかし、相続以外の原因で建物の登記上の名義を借主から他者(自分の子供や親など)に変更してしまうと、借地権を贈与したと見なされてしまうため、贈与税がかかります。
親の借地に子が家を建てた
借地に借主の子が家を建てた場合、親の権利を子が行使したことで親から子に借地権が贈与されたと見なされます。建物を贈与した場合と比べて、贈与を行った意識が薄くなりやすいため、注意が必要です。
借地権を親族間で売買した場合
贈与税を回避する目的で、借地権を親族間売買で安価で締結した場合、実質贈与とみなされ贈与税を負担することになる場合がありますので、親族間売買の時は“適正な売買金額”を心がけましょう。
なお、借主の子が地主から底地部分を買い取る場合、子が新しい地主になり、子と親の間で賃貸借契約が発生します。しかし親子間の場合、多くは無償(使用貸借)で地代が発生しないケースがほとんどです。この場合、子が土地を買い取ったときに借地権者である親から子供に贈与があったものとして取り扱われますので贈与税が発生します。
贈与税の支払い時期は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までです。原則として、支払い時期の間に申告・納付を行う必要があります。借地権の贈与には建物の名義や借地権の契約者変更が発生するので、時効が成立するケースはほとんどありません。贈与税の無申告が発覚すると追加で延滞税や重加算税が課せられるので、贈与を行った場合は遅滞なく納付しましょう。
2.借地権贈与税の計算方法
借地権は評価額が高い上に、税額控除額があまり大きくありません。さらに相続税よりも税率が高いため、借地権の贈与税は高額になるケースが多く見られます。
ここでは、借地権の贈与税について実際の計算方法を解説します。事前に贈与税の額を把握し、納税に備えましょう。
なお、贈与税の計算には、国税庁が提供する路線価図に記載された「借地権割合」を用います。借地権割合とは、土地の権利のうち何割を借地権が占めているかを定めるものです。
2-1.贈与された金額を算出する
贈与された借地権の評価額によって、課税額や実際の贈与税が変わります。ここでは贈与額の評価方法として路線価方式を紹介します。路線価方式は、路線価に基づいて贈与額を算出する方法です。
借地権の相続税評価額を求める計算式は次の通りです。
- 借地権の相続税評価額=自用地の評価額×借地権割合
自用地の評価額は、土地面積×路線価で求めます。たとえば、土地面積120平方メートル・路線価30万円・借地権割合70%の借地の場合、式と評価額は次の通りです。
- 120平方メートル×30万円×70%=2,520万円
また、建物の名義が子に変更されている場合、建物の評価額も加算して評価額を算出します。建物の評価額は、固定資産税評価額を参照します。
固定資産税評価額は次の書面のいずれかで確認可能です。
- 固定資産税納税通知書の課税明細書
- 固定資産税評価証明書
固定資産税納税通知書は毎年郵送される書類です。固定資産税評価証明書は、市区町村の役所もしくは都税事務所にて有料で取得できます。
2-2.課税対象額を計算する
評価額がそのまま贈与税の課税対象とはなりません。評価額から基礎控除を差し引いた額が課税対象額となります。
贈与税の基礎控除は110万円です。贈与税の評価額が3,000万円の場合、課税対象額は次の式で求めます。
- 3,000万円-110万円=2,890万円
出典:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
2-3.税率をかけ合わせる
課税対象額に税率をかけ合わせることで、実際の贈与税額が算出可能です。税率には「一般贈与財産用」と「特例贈与財産用」の2種類があります。
特例贈与財産用の税率は、次の条件を満たす場合に適用される税率です。
- 受贈者(贈与を受けた人)が贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上
- 贈与者(贈与を行った人)が受贈者の父母・祖父母などの直系尊属
一般贈与財産用は、特例贈与財産用の条件に当てはまらないケースで適用されます。また、特例贈与財産用の税率は、一般贈与財産用より低くなる傾向があります。
出典:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
3.借地権を贈与するときのポイント
借地権の贈与は複雑です。必要な手続きが多い上に税金が絡みますが、申告の漏れ等なくスムーズに手続きを完了させるのが理想です。
借地権の贈与には、一般的な贈与と異なるポイントに注意を払う必要があります。借地権を贈与するときは、以下のポイントを押さえておくことで手続きをスムーズに進めやすくなります。
3-1.贈与には地主の承諾が必要
借地人が亡くなり、相続によって借地人が変わる場合、地主の承諾は必要ありません。一方で、贈与を行う場合は地主の承諾が必要です。地主の承諾なく勝手に親族名義に移転すると、借地権の消滅を地主から主張されてしまいます。
贈与の方法には、生前贈与以外にも、借主の死後に贈与を行う「遺贈」と借主の生前に贈与を行う「死因贈与」があります。遺贈は、遺言書などによって相続人以外の第三者に譲る方法です。一方で、生前に書面を交わして第三者に贈与する契約を交わしておくことを死因贈与と言います。遺贈・死因贈与のどちらのケースでも地主の承諾が必要です。
登記や引渡しの前に地主の承諾を取り付けなければ、借地契約そのものが解除される可能性があります。地主の承諾は贈与前の借主の存命中に取り付けることもできるため、贈与を予定している場合は早めに地主に承諾してもらうのが大切です。
3-2.贈与税以外にも費用がかかる
贈与をする際には、贈与税だけでなく登録免許税や名義書換料が必要です。登録免許税は登記申請の際に納める税で、評価額の2%を納めることとなっています。
名義書換料は地主に贈与の承諾を取り付ける際に借地人が地主に対して支払う費用です。相続によって親族に名義移転する場合、地主に承諾料は発生しませんが、贈与によって親族に名義移転する場合は承諾料(名義書換料)が発生します。
上記以外にも、合わせて2,000〜3,000円程度ではあるものの、登記事項証明書・印鑑証明などの各種証明書の発行手数料や印紙代を用意する必要があります。
登記を専門家に依頼する場合は、司法書士への報酬も必要です。費用はかかるものの、抜け漏れなく手続きを進めるには司法書士に相談するのがおすすめです。司法書士の報酬は定額ではなく、司法書士によって異なります。依頼する前に見積りなどを取り、報酬額を正確に把握しておきましょう。
3-3.相続時精算課税の利用も検討する
相続時精算課税は、次の条件下で贈与を行う際に利用できる制度です。
- 受贈者が贈与を受ける年の1月1日時点で18歳以上
- 贈与者が受贈者の父母・祖父母などの直系尊属かつ60歳以上
条件は特例贈与財産用の税率と似ているものの、贈与する側に年齢制限がかかる点が異なります。
制度を利用するかは、贈与を行う父母・祖父母ごとに選択可能です。ただし、1度利用を決めると該当の人物からの贈与については制度の利用を取り消せません。
制度を利用する選択をした年以降、同一人物からの贈与については、複数年にわたって2,500万円までの特別控除を受けられます。2,500万円を超えた贈与に対しては一律20%の贈与税が課税され、贈与税の課税分は、相続時に相続税と合算して納めます。
相続時精算課税を利用すると従来の110万円の基礎控除は受けられません。ただし、贈与で高額の控除を受けられるため、相続財産に借地権や不動産など高額な場合は、相続時精算課税が有効に働く可能性があります。
弁護士Q&A
まとめ
借地権は贈与をすることが可能ですが、贈与したときには高額の贈与税を支払う必要があり、地主からの承諾も得なければなりません。贈与したつもりがなくても、建物の登記の名義変更や親の借地(賃借人が親名義)に子どもが家を建てるなどのケースで贈与として見なされる恐れがあります。
借地権の贈与や相続に困り、売却を考えている方は、ぜひ中央プロパティーにご相談ください。中央プロパティーでは、行政書士や弁護士など法律の専門家と借地権の売却実績のある不動産のプロがチームを組んで、借地権の売却をお手伝いしています。無料相談も年中無休で受け付けておりますので、少しでも気になる方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者
税理士
税理士。東京都出身。中央大学法学部を卒業し、ワールド法律会計事務所代表。借地権の相続案件で多く相談される相続税が得意分野だが、生前贈与や、親族間の不動産売買等相続対策にも豊富な経験・実績のあるスペシャリスト。