借地権の固定資産税の計算方法は?軽減できる条件も解説|借地権の基礎知識
借地権の固定資産税の計算方法は?軽減できる条件も解説
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土地や建物には、毎年固定資産税や都市計画税がかかります。しかし、借りてはいるものの実際に所有しているわけではない借地について、固定資産税を払う必要があるのか、詳しく知らないという方もいるでしょう。
当記事では、借地と固定資産税について解説します。固定資産税は定期的に支払う地代の金額にも関係するため、正しい知識を身につけておくことが必要です。借地に住んでいるという方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
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1.固定資産税とは?
固定資産税とは、次のような固定資産の所有者にかかる地方税です。
- 土地(田畑、住宅地、山林、池沼、牧場、鉱泉地、原野など)
- 家屋(住宅、店舗、工場、発電所・変電所、倉庫など)
- 償却資産(法人などが所有する構築物、機械、飛行機、船舶、車両、鉄道、備品類など)
固定資産税は所得税などと同じ普通税であり、税収の使い道は定まっていません。納付先の市町村または都によって、公共施設の整備や行政サービスなどさまざまな場面で活用されます。
市街化区域内あるいは今後約10年以内に市街化が見込まれる区域内の土地や家屋を所有している場合、固定資産税とともに都市計画税が課税されます。都市計画税の納付先は都市計画事業や土地区画整理事業を行う市町村または都であり、2021年4月時点で都市計画税を課税している自治体は全体の約1/3です。
都市計画税はあらかじめ使途が決まっている目的税であり、税収は公共施設整備など特定の事業に活用されます。
次に、固定資産税額の算出方法や支払い方法などについて解説します。
1-1.借地権の固定資産税は誰が払う?
固定資産税および都市計画税の納税者は、その年の1月1日時点で固定資産を所有している人です。
借地の場合、通常は土地の借主である借地権者ではなく貸主である地主に納税義務があります。借地上の家屋の所有権が借地権者にある場合、家屋にかかる税金の納税者は借地権者、土地にかかる税金の納税者は地主です。例外として、地上権の存続期間が100年以上の場合は借地権者が土地の固定資産税を負担します。
1-2.固定資産税はいくら払う?
原則として、固定資産税額の計算式は「課税標準額×標準税率(おおむね1.4%)」です。課税標準額を決定する際は、まず次の評価方法によって固定資産税評価額を算出します。
- 土地:宅地は地価公示価格の7割程度、その他の土地は過去の地目別売買価格などを基礎として算出
- 家屋:評価対象家屋と同じ家屋を同じ条件で新築する場合にかかる建築費用に、建築後の経過年数に応じた減価率を乗じて算出
- 償却資産:資産の取得価格を基礎とし、取得後の経過年数に応じた減価率を乗じて算出
これらの固定資産税評価額に基づいて決定された1月1日時点の資産価格が課税標準額であり、土地や家屋については3年ごとの評価替えで評価額が見直されます。自治体がそれぞれの固定資産を評価し一定の基準に沿って固定資産税額を決定すると、納税者のもとに課税標準額、税率、税額などを記した納税通知書が届きます。
都市計画税の納税額は、土地または家屋の評価額に最大0.3%の税率を乗じた額です。固定資産税とともに都市計画税の納税が必要な場合は、固定資産税の納税通知書にその旨が記載されます。
1-3.固定資産税の支払時期
固定資産税の支払時期は自治体によって異なりますが、多くの自治体で定められている支払期限は6月、9月、12月、翌年2月の年4回です。
毎年4月から6月ごろに送付される納税通知書を確認し、それぞれの支払期限に間に合うよう支払うか、1年分を一括で支払います。支払期限までに支払えなかった場合は延滞金も発生するため、早めの支払手続きをおすすめします。
2.借地権者が支払わないといけない税金は?
借地権者は土地そのものの固定資産税を支払う必要はないものの、借地上の家屋を所有している場合は家屋にかかる固定資産税を支払う義務があります。
また、土地周辺の環境変化や物価の変動などによって土地の固定資産税額が上がるリスクもゼロではありません。地主の税負担が増した場合、地主が借地権者に対して地代の増額を求めるケースもあります。
地代の決め方はさまざまですが、もっとも一般的な方法では固定資産税などを用いて地代を算出します。地代の計算式は、次の通りです。
- 地代=(固定資産税額+都市計画税額)×相場の倍率
- ※相場の倍率は、宅地3~5倍・商業地4~8倍程度
地代の計算方法は、固定資産税に基づく方法の他に、路線価や期待利回りを用いたものも一般的です。
路線価とは道路などに面した土地の評価額であり、「更地価格(路線価×0.8)×土地面積×1.5~3%」で地代を計算できます。路線価は相続税路線価と固定資産税路線価の2種類に大きく分かれており、地代の計算に用いる固定資産税路線価は自治体窓口などで閲覧可能です。
積算法とも呼ばれる期待利回り法では、不動産投資用の土地を購入して得られる予想収益に基づいて計算します。土地買取価格に期待利回りを乗じ、さらに固定資産税、土地の維持管理費、保険料などの経費を計上した額が地代となります。
いずれの方法も一定の予測に基づく値や対象となる土地と似た土地の状況を参考にするため、素人が正確に計算することは簡単ではありません。より確実に地代を知りたい場合は、不動産の専門家に相談することをおすすめします。
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3.借地権にかかる固定資産税は軽減できる?
地主が更地を所有し続けても、固定資産税の軽減を受けることはできません。しかし借地権者が借地で住宅を新築または取得し、かつ一定の要件を満たすと節税につながります。
国土交通省が定めた「新築住宅に係る税額の減額措置」が適用されると、新築住宅にかかる固定資産税が減額されます。ただし最大軽減額は1戸につき居住部分120平米相当分となり、次の要件を満たさない場合は減額措置対象外となるため注意が必要です。
- 「新築住宅に係る税額の減額措置」の対象
- 戸建住宅や併用住宅の場合、住宅部分の床面積が50平米以上280平米以下
- アパートやマンションなどの場合、各専有部分の床面積と共用部分を按分した面積の合計が50平米以上(賃貸住宅は40平米以上)280平米以下
- 全体に占める居住部分の床面積、または専有部分に占める居住部分の割合が1/2以上
- 自治体から適正な立地を促すための勧告を受けていない
減額措置の適用期間は戸建住宅などで3年間、マンションなどで5年間となり、適用期限は2024年3月末日です。なお、長期優良住宅と認められた場合は適用期間がそれぞれ2年延長されます。
また、住宅の敷地として使われている土地には住宅用地の特例措置が取られ、課税標準額が下がり税額を抑えることができます。住宅用地の特例措置を受けた土地の固定資産税は、200平方メートルまでの土地であれば通常の6分の1、それ以上の土地であっても通常の3分の1です。住宅を解体したり用途を変更したりしない限り継続して受けられる減税措置であり、大きな負担軽減につながります。
出典:金沢市「固定資産税の住宅用地の特例とはどのようなものですか。」
まとめ
土地を借りている人が、借地に対する固定資産税や都市計画税を支払う必要はないものの、借地の上に建つ建物の税金は支払う必要があります。また、直接税金を支払ってはいないものの、毎月地主に支払う地代は税金額に基づいて決められる場合が一般的であり、間接的には費用を負担しているとも言えます。少しでも税の負担を軽くしたい場合は、新築住宅や住宅用地に適用される減額制度を利用しましょう。
固定資産税や地代については、地主と借主の間でトラブルが起きるきっかけにもなります。借地について悩みを抱えている方は、借地に関する専門家が多数在籍する中央プロパティーにぜひご相談ください。
この記事の監修者
司法書士
司法書士。地主とのトラブルが多い借地権の相続手続きで、多くの悩みやストレスを抱える借地人の心情へ寄り添ったアドバイスや収集物の多い名義変更手続きでも漏れ抜けのない安定した対応で顧客から厚い支持を集める。