借地借家法をわかりやすく解説!歴史や借地権の種類も紹介|借地権の基礎知識
借地借家法をわかりやすく解説!歴史や借地権の種類も紹介
目次
借地借家法は、建物と土地の貸し借りにおいて重要なルールを定める法律です。しかし、借地借家法が定める内容については、深く理解できていない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、借地借家法について、わかりやすく解説します。加えて、借地借家法が制定されるまでの流れや借地権の種類についてもお伝えします。特に、土地を貸している人や借地権を持っている人は、土地の貸し借りにおける疑問や不安の解消にお役立てください。
1.借地借家法とは?
借地借家法とは、土地を借りる賃借人と、土地や建物の権利を持つ貸主双方の立場の差を埋めるために作られた、土地の貸し借りに関する法律です。民法上は誰もが対等に契約を結べますが、通常の契約だと土地を所有している貸主よりも賃借人は弱い立場になってしまうことが多いため、賃借人を守る目的で作られました。
法律の分野では、私人同士の権利関係などについてまとめた民法は一般法にあたり、借地借家法は特別法として区別されています。特別法とは、ある特定の事項について、一般法よりも優先して適用される法律のことです。
特別法である借地借家法は、建物の所有を目的とする借地契約、または借家契約を行うときに適用されます。
1-1.借地借家法の歴史
現在の借地借家法ができるまでには、何度も法律改正などを繰り返してきました。借地借家法が誕生するまでの過程は以下の通りです。
建物保護ニ関スル法律制定(1909年)
借地権保護の起源となった法律です。民法上、地上権と不動産借地権の両登記が必要でしたが、建物の登記があれば第三者に借地権を主張できる旨を定めました。
借地法と借家法の制定(1921年)
1921年には、「建物保護ニ関スル法律」を補足する特別法として、借地法と借家法が制定されます。借地法は、現在の借地制度の基礎であり、建物所有を目的とする土地利用を保護する内容が規定されました。
借地法改正(1941年)
借地人の借地上の建物における生活や事業を安定させることを目的に、借地法が改正されます。地主に正当事由がなければ、更新の拒否ができない旨が定められました。
借地法改正(1966年)
貸主の承諾が得られない場合は、裁判所の承諾を得て、借地人が借地権の譲渡や転貸を行える旨が定められました。
借地借家法(1992年)
以前の法律を一本化し、新しく制定されたのが借地借家法であり、建物保護法や借地法、借家法は新法制定に伴い廃止されました。ただし、旧法に基づき交わされた借地契約については、旧法の規定が適用されます。借地借家法では以下のような制度の見直しや創設が行われました。
- 借地権の永続性の見直し
- 定期借地権の創設
- 2回目以降の更新における借地権存続期間を10年に短縮
もともと借地権は、権利を持つ地主が有利な制度でしたが、昭和時代の借地法改正により旧法では借地人にとって有利な権利となりました。戦争が行われた軍国主義の時代には、土地を借りている一般の人々の生活を守る必要があったためです。1927年には、更新拒絶における「正当事由」の制度が導入され、借地契約の更新拒否はほとんど困難と言われました。
戦争の時代やバブル期を経て新しく制定された借地借家法では、旧法よりも合理的な借地契約を実現することが期待されます。
2.借地借家法で定められている借地権の種類
借地借家法で定められる借地権とは建物の所有目的で土地を借りる権利のことを言い、普通借地権と定期借地権の大きく2つに分けられます。大きな違いは、普通借地権には更新が可能な一方、定期借地権には更新がない点です。
契約更新以外にも、両者にはそれぞれ特徴があります。ここでは、普通借地権と定期借地権について詳しく解説します。
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2-1.普通借地権
普通借地権の存続期限は最短30年で、契約者同士の合意によって30年以上の期間を定めることも可能で、更新も行えます。更新では、1回目は20年以上、2回目以降の更新では10年以上の期間をあたらめて設定し、契約を継続します。
また、地主に正当事由がない場合の更新拒否は認められておらず、借地人が希望すれば原則借地権を更新できます。正当事由の例は、以下の通りです。
- 建物の滅失があった場合
- 地主がほかに土地を所有しておらず、自分の居住のために土地が必要な場合など
正当事由が認められ、契約終了となった場合、借地人は地主に建物を時価で買い取ってもらえる建物買取請求を行うことができます。借地人からの建物買取請求があった場合は、地主は購入を拒否できず、建物の売買契約が成立します。
2-2.定期借地権
定期借地権は、普通借地権とは異なり、更新がない借地権です。定期借地権は、存続期間や土地上の建物の用途の違いにより3つに分けられます。それぞれの特徴は以下の通りです。
一般定期借地権
存続期間は50年以上、土地上に所有する建物の使用目的の制限が設けられていない定期借地権です。契約期間満了時、賃借人は物件を取り壊し、更地に戻した土地を所有者へ返還する必要があります。契約締結時には50年以上の契約を条件に、公正証書などの書面により、以下の3つの特約を定めます。
- 契約の更新を行わないこと
- 建物再建による契約の延長をしないこと
- 期間満了後の建物買取請求を行わないこと
事業用定期借地権
賃借人が店舗などの事業用建物を所有する場合にのみ設定できる賃借権のことです。存続期間は10年以上50年未満ですが、以下の通り、契約期間により契約内容が異なります。また、事業用途で50年以上の長期の契約期間を確保したい場合は、一般定期借地権が適用されます。
- 10年以上30年未満の場合:一般定期借地権の3つの特約が自動的に適用される
- 30年以上50年未満の場合:一般定期借地権の3つの特約を契約書に盛り込める
建物譲渡特約付借地権
建物譲渡特約付借地権とは、一般定期借地権や事業用定期借地権に付加する形式の借地権です。契約満了後に地主が借地権者の建物を買い取る約束を交わすものを言います。建物譲渡特約付借地権の存続期間は30年以上であり、土地上に所有する建物は、居住用や事業用などの種類を問いません。
3.借地権は更新できる?
借地権には、更新できるものと、できないものがあります。借地権の種類の違いによる契約更新可否は以下の通りです。
借地権の種類 | 契約の更新 |
旧法の借地権 | できる |
普通借地権 | できる |
定期借地権 | できない |
借地借家法前の旧借地権と借地借家法上の普通借地権は、契約更新を前提としたものです。一方、定期借地権では契約の更新ができない代わりに、存続期間が長めに設定されています。
旧借地権と普通借地権を更新する際には、以下の3つの方法があります。
合意更新
地主と借地人の合意のもと、手続きを進める一般的な方法で、協議により更新料や更新後の地代などを決定するのが特徴です。
更新請求
借地人から地主に請求することで成立する更新手続きで、以前の契約内容を引き継ぐ形で更新されます。借地上に建物があり、地主に正当事由が認められない場合は、更新拒否はできません。
法定更新
貸主や借主が借地契約期限までに手続きを忘れた場合でも、以下の条件を満たせば、法定更新という仕組みにより契約が自動更新されます。
- 借地上に建物があり、借地人が使用している
- 地主が正当事由に基づく異議を申し立てていない
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4.借地借家法が適用されている借地権がなくなることはある?
借地権を取得すると、契約で定めた期間は権利が存続するのが基本です。
しかし、旧法借地権の場合は、建物が朽廃すれば残存期間内であっても借地権が消滅するため注意が必要です。朽廃とは、経年劣化や雨風などによって人が住めないほどボロボロになり、建物が社会的にも経済的にも効用を失った状態を指します。屋根の一部が腐食している場合や、建物が法定耐用年数を超えている場合でも、日常生活に支障がなければ「朽廃」とは認定されません。
建物が朽廃していた場合、旧法である借地法に基づき取得した旧借地権で、期間の定めがないのであれば借地権が消滅します。一方、借地借家法に基づく普通借地権であれば、特約で建物の朽廃により借地契約が終了するよう規定されていても借地権は消滅しません。
なお、建物を滅失した場合も、借地権は存続します。滅失とは、地震や火災、改築などで建物が借地上から物理的になくなることを言います。
また、更新時に土地のオーナーに更新拒否の正当事由が認められた場合や、賃料の不払いなどの契約違反をした場合は借地権が消失する可能性があるため注意しましょう。
ただし、賃借人に契約違反があった場合でも、諸事情を踏まえて賃借権の消滅が認められないケースもあります。当事者間の信頼関係が破壊されたと言えない「特段の事情」がある場合には、契約解除を認められないというのが判例の見解です。
まとめ
借地借家法における借地権は普通借地権や定期借地権などに分類でき、存続期間や建物の用途制限など、それぞれ異なる特徴を持ちます。借地権が消滅するケースもあるため、権利を守るために注意すべきポイントを理解しておくことが大切です。
なお、CENTURY21中央プロパティでは、専門家による借地権売却・買収についての無料相談を行っています。適切な権利評価や査定ができる経験豊富な専門家が対応させていただくため、借地権や底地の相続などでお困りの場合は、ぜひご相談ください。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。地代滞納、建物明け渡しなど借地権・底地権の案件へ積極的に取り組む。主な著書に「一番安心できる遺言書の書き方・遺し方・相続の仕方」「遺言書作成遺言執行実務マニュアル」など。