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借地上の建物の解体費用は誰が払うべき?|弁護士Q&A

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作成日:
コンテンツ番号:1031

借地上の建物の解体費用は誰が払うべき?

質問

愛媛県市内に、百年以上前からの契約で借地をしてきました。
その家に住んでいた母は高齢で施設に入ったため(私は、息子です)、借地権を土地の所有者に返したいのですが、百年以上前に結ばれた契約で、書類がありません。
※なお、これまで地代は毎年払ってきました。
建物は老朽化し、解体費用は数社に見積もりを査定してもらったところ350〜400万円になりそうです。
土地の所有者も高齢化していて、やや認知症になり始めているので、代理で所有者の息子さんと現在話し合い中です。

  1. 契約書が無いのに、こちらで、原状回復費用を全額負担しなければならないのでしょうか?  お金は要らないので、借地権を返し、家の解体費用は土地の所有者に払ってほしいのですが、それは法的に可能なのでしょうか?
  2. 借地権を有し、地代の滞納もない場合は、土地を売却した際に半額分のお金をもらえるとも聞きましたが、その場合も、全額、解体費用を借地人が負担しなければならないのでしょうか?
    老朽化が激しいため、役所から土地の所有者に解体するよう連絡が行ったとのことで、できるだけ急いで解決したいのですが、解体費用が高額なので、こちらとしては、もうお金は要らないので、借地権を返して、土地の所有者に解体費用を出してほしいのが本音です。
    どうしたらいいでしょうか?よろしくお願い致します。

1. 契約書について

通常売買や賃貸等の契約に際しては、契約「書」を作成するのが通常かと思います。しかし、契約書がなくても契約自体は成立します。すなわち、契約は口頭のみでも成立します。

  • 民法上、契約書の作成行為は、保証契約など一部の例外を除いて、契約成立の必須の要件ではありません。そのため、契約書の有無が契約の効力に影響を与えることはありません。
  • ただ、原状回復についての特約があった可能性もあり、その点を主張するためには、主張したい側がその約束があったことを証明する必要があります。

原状回復について 

(使用貸借の規定の準用)

民法616条:「第五百九十四条第一項、第五百九十七条第一項及び第五百九十八条の規定は、賃貸借について準用する。」

(借主による収去)

※民法598条:「借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去することができる。」

このように賃貸借契約(借地権設定契約も「賃貸借」の一種)においては、契約終了後には原状回復し、借用物を貸主に返却する必要があるのが原則です。しかし、借地権借家法においては下記規定が存在します。

(建物買取請求権)

借地借家法13条:「借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。」

借地権の契約期間が満了した場合において、建物を時価で貸主に買い取るよう請求できるという規定です。ここでのポイントは、「借地権の存続期間が満了した場合」とあるように、契約期間が満了した場合でなければ、建物買取請求権を行使することができないという点です。

すなわち、契約期間「中」に借り主の都合で賃借契約を解除する場合には建物買取請求権を行使することができないので、要注意です。本件では、契約期間などの詳細は明らかではありませんが、契約期間によっては建物買取請求権を行使するというのも手段の一つと言えるでしょう。ただ、契約期間内の場合には、原則通り借主が現状に復する(更地にして返却)ことになります。

2. 解体費用について

まず、滞納がないからと言って、土地を売却した際に半額分のお金をもらえるというのは間違いです。借地権が設定されている土地を売却する(借地権付きの土地(底地)を売却)場合には借地人は一切金銭はもらえません。土地は地主の物だからです。しかし、借地権及び底地権両者を一括で売却する場合には、借地権の価値の分だけ、借地人は金銭を得られる可能性があります。

ただ、正確に「半分」という訳ではありません。借地権の価値に応じて変動するため、この点についてはより詳細な調査が必要と考えられます。借地権のみでの売却も可能で、解体費用をここから捻出する方法も考えられます。しかしながら、借地権のみ売却したい場合、貸主である地主の承諾が要りますので、この点には注意が必要です。

費用の捻出には建物買取請求権の行使や借地権のみの売却、ひいては、借地権及び底地権を合わせて(完全な所有権として)売却する等、方法はいくつか考えられます。何が最適化は、契約の残存期間や地主と借地人との関係など、個別具体的な状況によって変わってきます。

当社では、様々な事例の解決実績から最適な方法をご提案できる自信がございます。まずは、一度ご相談ください。

この記事の監修者

菅原 悠互スガワラ ユウゴ

弁護士

弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で借地非訟手続きや建物買取請求権の行使など今社会問題化しつつある借地権トラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。

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